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ラスベガスにあるZappos(ザッポス)の社内見学ツアーに行ってきました

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ザッポスの社内見学ツアー

伝説の会社Zappos(ザッポス)に行ってきました

 
「会長、社長、部長、平社員といった階層構造や上下関係はなし」
「属人性を否定せずに個性を生かすワークスタイル」
「社員を管理しない」
「会社にいるのが楽しい!いつも会社にいたい」

 
組織論の常識を覆すようなこのような考え方を持ち、世界中から注目を集める企業をご存知でしょうか?

 
その会社こそZappos(ザッポス)___。
米国のネットで靴を売る会社で急成長した会社です。
「靴をインターネットで試し履きもしないで売るなんて無理だ!」と言われる中、何度も困難を乗り越え、最終的にAmazonに「敵わない」と言わしめたZappos。

 
こんにちは、佐藤政樹です。
私は劇団四季というプロフェッショナルの組織で活動してきた経歴をもち、現在はその経験を活かして組織の人事コンサルとして様々な企業で研修や講演をして年間約7000名の方々に受講して頂いております。

 
Zapposの独特の組織論・文化(カルチャー)・価値観は仲間とともに影響をかなり受けてきました。そこでこの度海外研修のプログラムのうちの一つとして、アメリカのラスベガスにあるZappos本社に、前回のパタゴニア視察に続いて共に働く仲間とともに会社視察に行ってきました。

ザッポスの社内見学ツアー

Zappos(ザッポス)とはどんな会社?

Zappos(ザッポス)を簡単に紹介すると以下の通りです。

 
(1)ラスベガスに本社
(2)1999年より靴を中心としたアパレル関連商品のECサイトを運営
(3)アマゾンがザッポスに恐れをなして、買収を提案(独立経営の維持を条件に株式交換の形で9億4000万ドルで友好的買収)
(4)フォーチュン誌の「働きがいのある企業100」ランキングに選出
(5)顧客に「WOW(ワオ!=感動)」をもたらすサービス
(6)長期的な視点で顧客に向き合い、圧倒的な口コミを生み出す
(7)10のコアバリューが社員の行動の指針となっている
(8)独自の企業文化が、企業のブランディングにつながっている

 
Zapposに世界中から注目が集まるのは、急成長しているということではなく
組織の文化作りで、です。顧客満足度の秘訣は、働く人が幸せに働けること。そのために徹底した文化づくりがされています。

 
そして、ホラクラシーと呼ばれる階層を設けない経営スタイルで業績をあげていることも注目を集める所以です。一般的な会社のような階層型のヒエラルキーがないのです。
部長や課長もいなし、上司もいません。主体性を求めつつも規律を重んじ徹底的に管理する経営が当たり前な世界の常識を、破るような考え方なのです。

ザッポスのホラクラシー


 
そして、顧客に徹底的に向き合うコールセンターの長時間の電話対応やマニュアルのないサービス、即日到着する配送サービス、靴を履いた後でも返品OKなどのサービスなどにより、圧倒的な口コミを生み出すことにも成功しています。

 
これら口コミを起こす取り組みが生まれた源泉となっているのが企業文化(カルチャー)であり、コアバリューです。

Zappos(ザッポス)の10のカルチャーとは

カルチャーとは無意識の当たり前。みんなが当然にそうする価値観であり行動の源泉です。

 
以下がZapposカルチャーを生み出す独特の10のコアバリューです。

 
1.サービスを通して「WOW!」という驚きの体験を届ける
2.変化を受け入れ、変化を推進する
3.楽しさとちょっと変なものを創造する
4.冒険好きで、創造的で、オープン・マインドであれ
5.成長と学びを追求する
6.コミュニケーションにより、オープンで誠実な人間関係を築く
7.ポジティブなチームとファミリー精神を築く
8.より少ないものからより多くの成果を
9.情熱と強い意志を持て
10.謙虚であれ

 
Zapposで働く一人一人の、このコアバリューの実施が企業文化(カルチャー)を作っているのです。

目の当たりにしたZapposのWOW!!

私たちが参加した見学ツアーもはじめからWOW!と楽しませる工夫がたくさんありました。社内見学ツアー用の社員さんが7人も用意されているのも驚きでしたが、ウクレレを弾きながら登場したり、一人一人の自己紹介の際は音楽をかけながら踊ったりしています。

Zapposの社内見学ツアーがスタート

ウクレレを弾いて社員が登場
 
会社の歴史や日常の様子をコミカルな映像でたくさん見せて、これから始まる見学に対するゲストのワクワク感を掻き立てる演出はまるでテーマパークのようでした。

 
私たちは、Zapposの商品(靴)を買いに来たわけではありません。海外からくる視察ツアーのためにそれほどの人員を当てて迎えて何の得になるのでしょう?短期的な成果を望むならそんなことはしないはずです。

 
ただ、組織の文化をつくるということと、こうしたスタンスは近いものがあります。目先に利益を生まないが、長期的視点にたてば、還ってくるものは多いはずです。事実、こうして私は記事を発信していますものね。これからもZapposについていろいろなところで話す機会もあるでしょう。

 

ザッポスの社内中庭

中庭を通って食堂に向かうと何やら騒がしい音が・・・

 
 
そして、ちょうど見学ツアーに参加していたお昼時のことでした。
私たちが中庭を通って食堂に行くと音楽が大音量でかかっていて風船やら紙吹雪やらスプレーが飛びかっているのです。

 
「お昼休みは職員のライブの時間なのか?」はじめはこう思いました。

 
大盛り上がりの正体はなんと新人研修の修了式でした。

 
Zapposでは配属される部門に関係なく「Customer Loyalty Team」(CLT)と呼ばれる3ヶ月にも及ぶ研修が義務づけられているそうです。Zapposは、コールセンターの業務を大切にしています。顧客と一番向き合う場所であり、基本だと考えているからです。

 
長期間に及ぶそのCLT研修を卒業し正式に仲間になったことを盛大に祝っていたのですね。

 
私たちは本当に偶然、このWOW!に立ち会うことができたのですが、そのエネルギーたるや半端ありませんでした。一番後ろの席には参加者としてTシャツ姿でモヒカン頭のCEOトニー・シェイの姿もあります。皆と同じ椅子に座り、隣の社員と話をしながら研修を終えた社員を祝福している姿は、全く社長らしくありませんでした。

新人研修終了を盛大に祝うザッポス

一番手前のモヒカン(黒のTシャツ)がCEOのトニー・シェイ

会社と家族の垣根の低さ

社員が自分の会社を好きになり「会社にいるのが楽しい。」と感じながら働いてもらう工夫も様々な箇所で垣間みることができます。

 
まずオフィスの机が自分用に好きにデコレーションされていて一人一人ユニークでした。一人一人の個性が発揮されていて、自分のテンションが上がる空間を作っています。

個性が発揮されるザッポスの社内

個性が発揮されている机周り
 
見学中、お母さんが自分の子供を連れてきて、子どもを横に座らせて仕事をしている姿を目撃しました。

ザッポスの社内見学ツアー

子供を隣に座らせて仕事をする母親

 
机の下に犬を連れてきている社員もいます。犬にも社員証が発行されているというお茶目さでした。

ザッポスの社内見学ツアー

机の下には・・・

 
働く人の幸せを考えるときに会社と家族の垣根はやはり低い方がよいです。多くの人は「仕事のための生活」ではなく「生活のために仕事」があります。だとしたら、子どもを職場につれてこられる環境を用意することは大切だと感じます。前日に行ったパタゴニア本社視察でも子どもを職場に連れてきている光景を目にしました。日本は「仕事のための生活」に縛られすぎているし、ここら辺は考え方の転換期に来ていることでしょう。

個性あふれるデスク

モチベーションが上がるデスク周りを自ら作り出す

他の社員に対するZappos(ザッポス)の取り組み

他にもZapposの社員のエンゲージメント(組織に対する愛着心)を高める取り組みが多々ありました。

 
・社員の食堂は無料

ザッポスの社内見学ツアー食堂

Zapposの食堂の様子

・ヨガやダンスのための鏡張りのスタジオ完備(社員の健康を維持増進する取り組み)

・自転車レンタル自由(チームで行動用)

・在籍年数に応じてバッチやネームプレートがもらえます。(この仕組みを聞いた時、子どもの頃に夢中でサッカースクールに通って、カラフルなバッチをワクワクしながら集めていたことを思い出しました)

ザッポスの社内見学ツアーバッチ

在籍年数に応じたカラフルなバッチ

 
・おそろいのTシャツを作って社員の一体感を作る
(劇団四季でもよくやっていました。劇団四季の場合は作品をモチーフにデザインしたカンパニーシャツでした)

・社内通貨があり、オリジナルの商品を購入できる仕組み

ザッポスの社内見学ツアーバッチ

社内通貨のZallor笑

 
そして驚いたことは、ザッポスが社員にコーチングをして自分の本当のやりたい事を見つける手助けをしているということでした。それで実際にやりたいことが見つかり辞めて行った社員もいるそうです。

 
理想の組織とは何かを考えると、そこに社員が自分らしいライフスタイルを見出し、仕事を通して自分の夢や願望や自分らしい生き方を実現していくことではないかと思います。

 
前日のパタゴニアもザッポスも実際にこの目で見てみて、働くみんながとても楽しそうで、とても自由で革新的でしたので目指す組織のあり方だと感じました。

 

ザッポスの社内見学ツアー

社内にコンサートホールが!

ザッポスの社内見学ツアー

ステージの裏の楽屋にはドラム・ギターセットが・・・

Zappos(ザッポス)社内見学ツアーから学んだこと

Zapposの社員数は現在1,000人を超えているそうです。私が在籍していた劇団四季とほぼ同じ規模です。Zapposに会社視察に行きこの眼でカルチャーに触れると、劇団四季のカルチャーをいろいろ思い出しました。

 
顧客に感動を創造し続ける組織である劇団四季は1,000人以上の俳優・社員がいる組織ですが、様々なカルチャーがすみずみに浸透して日常に落とし込まれていました。

 
さきほど紹介した帰属意識をとても高めるオリジナルTシャツづくりだったり、一体感を高めるための仲間をニックネームで呼び合う習慣であったり。

劇団四季時代のオリジナルTシャツ

劇団四季時代にチームで作ったオリジナルTシャツ
 
Zapposのように食堂は無料ではありませんでしたが、同じカレーライスを食べてもベテランと中堅と新人では料金が全く違うという助け合いの先輩ご馳走システムでした。

 
お祝い事には俳優や社員が手作り料理を持ち合って自分の料理に旗を立てて祝うという心温まる文化もありました。

 
“ゼロ幕”や”実感して語る”や”慣れダレ崩れ”といった、舞台を素晴らしいものにしていくために自分たちが大切にしていることを明文化・言語化して行動指針にしていました。

【関連記事】劇団四季のゼロ幕の文化について

 
そしてZapposのように”謙虚であれ”が当たり前でした。チームワークが重要で、横柄では生き残れない世界です。また主役の方の謙虚な姿勢をみて新人が影響を受け成長します。

 
 
「自分たちが属する組織や仕事を誇りに思い、大好きになり、仕事を通じて顧客に「WOW!(感動)」を届ける。共に働く仲間とその感動を分かち合う。感動が口コミを生み出し、ブランドになっていく__。」

 
Zapposと劇団四季のコアバリューは共通している部分が多く感じられ、永い繁栄のためには組織が大切にしている価値観や、未来に向けて経営者が考える価値観を土台に考えて、その価値観を体現するような取り組み、言語化、環境づくり、行動指針を用意することは重要だと感じました。

 
【関連記事】組織文化とは何か?経営者目線で動く自律型人材を育てる方法

 
全ての企業にとってZapposのような文化づくりが当てはまるとは思いませんが、これは組織の活性化、社員の育成や採用にもつながることではないでしょうか。今回の社内見学ツアーでZapposは私たちにたくさんのことを教えてくれました。

ザッポスの社内見学ツアーバッチ

私の仲間とともに

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