目次
アサーションとは?研修を導入検討する前に理解する考え方の基本
「自分の気持ちを上手く伝えたいけれど、我慢を優先させてしまう」
「意見を言いたいけれど相手に臆して伝えることができない」
「問題解決をしたいのに攻撃的に言われて心が病んでしまった」
こう思ったことはありませんか?
上司部下といった職場でのコミュニケーションだけでなく、家庭や友人関係でも、私たちは人との関わりによってこのような感覚になることは多々あります。
そんなあなたにとって、アサーションはとても有効なスキルとなるかもしれません。アサーションとは自分が考えていることややりたいこと、相手にして欲しいことや自分がしたいことをしっかりと言語化して円滑に問題解決していくためのコミュニケーションスキル&伝える能力です。
その能力をもつことをアサーティブといいます。
この記事では、アサーションの基本的な考え方や必要なマインドからその目的や実践例、そしてアサーションがなかなか日本で浸透しない理由までを詳しく解説します。
さらに、アサーティブになるための4つの柱とトレーニング方法についても紹介し、実生活でも役立つ具体的なアプローチを提供します。
これを読めば、あなたも自分の意見を正直に、かつ建設的に伝えられコミュニケーションにおける問題解決のため第一歩を踏み出せるでしょう。
ぜひ最後までご覧ください。
はじめまして、この記事を執筆した佐藤政樹と申します。劇団四季出身の研修講師として【受講生を惹きつけながら気づきと学びを促すことをモットー】に、行政・金融機関・教育・医療機関などでさまざまな研修を行っております。記事の内容をお読みいただき、もしご興味いただけましたら、ページ最下部のプロフィールや研修内容の詳細をご覧いただけますと幸いです。
アサーションとは?その目的
まず、アサーションという言葉が何を表すのかを見ていきましょう。
アサーションとは双方にとって気持ちの良い自己主張をできるようになるスキルです。
決して攻撃的にならず受け身的にもならず
かつ相手を傷つけず自分も我慢せず
自分がやりたいことや考えていること、相手にしてほしいこと、自分がしたいことをしっかりと言語化して伝える能力でもあります。
もともとアサーションはアメリカ生まれのコミュニケーション手法です。1950年頃アメリカの心理学者ジョセフウォルピによって自己主張が苦手な人を対象に開発されました。
アサーションの目的は、関わる人同士が最終的にはどうなったら良いのか、コミュニケーションをとりお互いにより良い未来を作っていくことです。
対立や葛藤が生じた際には協力して問題を解決することでもあります。
多くの人が対立を避けたり自分の主張を押し付けがちです。
そうではなく利害調整が必要な場合があるなしに関わらず、一方が得をするのではなく双方が win-win になる 解決策を探るためのコミュニケーション術です。
コミュニケーション研修をする筆者
アサーションがなかなか浸透しないうまくいかない理由
アサーションは素晴らしいコミュニケーション手法ですが、ここ日本ではいまいち浸透しない、もしくは研修などで導入したとしてもうまくいかず結局元通りとなってしまうことがあります。
なぜでしょうか?
その理由は「アサーティブにどう伝えるか?」以前に、関係性の構築でつまずいている方がほとんどだからです。
大前提として、アサーティブなコミュニケーションをするためには信頼関係の構築が必要です。
そしてこれからお伝えするアサーティブになるための基本的な考え方や人間的に必要な4つの柱の素養が必要となるのです。
また、アサーションはアメリカ発のコミュニケーション手法ということも忘れてはいけません。
アメリカ人と日本人としての気質の違いもしっかりと理解しておく必要があります(日本人は遺伝子レベルでアメリカ人よりも不安因子が強い、不安遺伝子保有者の割合日本人80.25%・アメリカ人44.53%。SATカウンセリング手法_宗像恒次より)。
これらの基本的な考え方や人間的に必要な4つの柱である素養や気質の違いを理解せずに、いきなりアメリカ初の技法だけ学んでも表面的になりうまくいかないと思うのです。
ゆえにせっかくアサーション研修を導入したのに、時間が経ったら結局元通りになってしまうのではないでしょうか。
ではアサーションを浸透させるために必要な4つの柱と考え方の基本について深掘って考えていきましょう。
アサーティブになるための4つの柱と考え方の基本
アサーティブになるための4つの柱とは、
誠実
素直
対等
自己責任
です。
この4つの柱を簡単に表現しますと、
どの人にも嘘をつかず、小さな約束でも守り、自分が思ったことや考えたことや感じたことを言語化する能力をもち、上下関係ではなく立場の違いと考えて物事を見極めコミュニケーションを取る意識を持ち、自分の言動については責任を持つということです。
アサーション研修を導入するのでしたら、大前提、この誠実・素直・対等・自己責任という基本的な柱を受講者それぞれが深掘って学んでいる必要があるのです。
それにより初めて、お互いの信頼関係の構築というアサーション研修を効果的にするための土台が出来上がります。
次にアサーティブになるための考え方の基本について4つお伝えします。
短期的に我慢して逃げる習慣をやめる
物事がうまくいかない時や双方の不満を持っている時に、短期的に我慢することを選択し問題から逃げるのか。
それとも
問題解決に向かって当事者同士が話をしたり、未来がより良くなるように自分自身が主体的になって何とかしようとするのか。
は大きな違いを生みます。
起きた問題に対して、当事者ではない人に愚痴という形で話をして気分をそらすのも短期的に我慢をし問題から逃げていることを示します。陰でこそこそ悪口を言うのも同じです。お互いにとってより良い未来の形成には繋がりません。
短期的に我慢して逃げる習慣をやめる必要があるのです。
自分にある程度の力が必要
アサーティブになるためには仕事のスキル含めて自分にある程度の力が必要です。なぜならば自分に力がないとアサーティブになろうとしても結局相手から押しつぶされてしまうからです。
アサーティブは相手と対等だということとお伝えしました。逆に、対等になれるほどの力をつけようと努力していなければ、結局アサーティブにはなれないのです。
仕事のスキル、自分の周りに支援者や協力者がどれだけいるかという人的資本、自分の強みの理解なども必要になります。
立場の違いがあるだけと考えて対等に物事を見極める力
自分の立場よりも下に見える人たちに対して決して下に見ず、対等な立場として考えて丁寧に礼儀正しく、そして気持ちよく対応し続ける姿勢が必要です。
そのトレーニングを行っていくことで、反対に自分より上の立場だと勝手に思っている人たちに対しても丁寧に、近しい対等に対応することができるようになっていくのです。
他責思考にならない
「あの人が◯◯してくれないから」
「あの人のせいで」
「なんで◯◯してくれないんだろう」
こういった他責思考でいるうちはアサーティブには絶対になれません。アサーティブな人は自己責任を持って行動します。
基本的に自分の責任に自分で判断をし、自分の考え方を持って自分で行動していくのです。
アサーション研修を導入する前に、他責思考ではなく自責思考をそれぞれが身につけていく必要があります。しかし実際は、他責思考になっていたり、自責思考の基本となる考え方も知らない組織は多いと感じます。
自責とは、自分が悪いと考えるのではなく、未来に向けて自ら対応する(Responsibility)能力のことなのです。
アサーションを現場で実践するためには、自責思考同士の関わりが必要なのです。
アサーション実践例
ではここまでのアサーティブになるための大前提を理解した上で、アサーションの実践例をこれからあげていきたいと思います。
仕事の場面だけでなくプライベートでも使え応用が効きますのでぜひ実践してみてください。
まずは相手を傷つけずに自分の要求を伝える方法をSTEPで解説します。
相手を傷つけずに要求を伝える3STEP
STEP0(大前提):信頼関係の構築から
大前提として信頼関係を構築する普段の関わりが重要です。
そのうえでアサーティブに伝える入りと締めはサンドイッチ法をお勧めします。必ず肯定的なプラスの言葉で会話を始め、プラスの言葉で締めくくることです。プラスとプラスの間に自分の伝えたい要求を入れます。
STEP1:Iメッセージ(私言葉)
主語を「私は〜」にします。(私はこう感じる)これをIメッセージと言います。「あなたは〜」を主語にすると相手を否定して傷つけたりコントロールする意図が生まれる可能性があります。
Iメッセージをさらに分解すると
・事実を伝える
・私の気持ち(私はこう感じる)とリクエスト(要求)
・その理由(リクエストをする理由)
です。
STEP2:相手の気持ちを聞く
上下ではなく対等な立ち位置で自分のメッセージを聞いた感想を共感しながら聞く。
STEP3:どうするかを一緒に考える
最終的にどうなったらお互いにとってより良い未来になるのか一緒に考えます。
そしてサンドイッチ法で締めるのです。
実践例
同僚(後輩)が最近、進捗報告が遅れることが増えた
あなた:「最近、忙しそうだけど大丈夫?いつも一生懸命やってくれてありがとうね。何か手伝えることがあれば言ってね。」(サンドイッチ法)
同僚:「ありがとうございます。確かにちょっと忙しくて、いろいろ抱えちゃってるんです。」
あなた:「実は最近、◯◯さんから報告が遅れることが増えてて(事実)、私は少し引っかかっててるんだよね(私の気持ち)。プロジェクトの進行にも影響が出てるから、正直プレッシャーを感じていて。(理由)。」
あなた:「◯◯さんはどう思う?」(相手の気持ちを聞く)
同僚:「ああ、そうですよね…すみません、最近ちょっと家の事情でバタバタしてて。精神的にも辛い状態なんです。なかなか誰にも相談できなくて。」
あなた:「そうだったんだ。何か大変なことがあるんだね。でも、これからどうすればお互いにストレスなく進められるか、一緒に考えないかな。例えば、遅れそうな時は前もって心を開いて伝えてくれたら、私もその準備ができるし、タスクを分けることもできると思うんだけど、どうかな?」(どうするかを一緒に考える)
同僚:「そうですよね。確かに一人で抱え込まず私の状況や背景をしっかりと共有し伝えるようにすれば、お互いスムーズに進められますね。伝えてくれてありがとうございました。」
あなた:「こちらこそ、ありがとう。ではよろしくね。」
こちらはアサーティブになるための4つの柱と考え方の基本が身についている二人の実践例です。もちろんこの通りにいくことはなかなかありませんが、アサーティブな会話の型があれば建設的にコミュニケーションがすすみます。
DESC法
アサーティブネスを実践するために有効な手法として「DESC(デスク)法」というものがあります。
状況を説明する(Describe)
自分の考えを表現する(Express)
具体的な提案を行う(Specify)
提案の結果を伝える(Consequences)
※「C」はChoose(選択する)と評されることもあります。
の頭文字を取ったものです。この方法を用いることで、双方が状況を客観的に把握し、自分の想いを正確に伝え、プラスの未来に向けて解決策を提案し、その結果を共有するプロセスが明確になります。
DESC法実践例
例1:友人がいつも約束の時間に遅れてくる場合
D:「最近、待ち合わせの時間に遅れることが多いよね。」
E:「そのたびに少し心配になってしまうんだ。」
S:「次からは時間を守ってくれると嬉しいな。」
C:「そうすれば、一緒に過ごす時間をもっと楽しめると思う。」
例2:子どもが脱いだ洋服を脱ぎ捨て片付けをしない場合
D:「丸めた靴下がコーヒーテーブルの下に2つ、テレビの脇に3つもあるね。」
E:「お母さんはイライラしてしまうの。みんなで使う部屋はもっと片付いた状態にしておきたいの。」
S:「脱いだ靴下は、あなたの部屋か洗濯機に入れておいてくれない?」
C:「そうすれば、家族みんなで気持ちよく過ごせる時間も増えると思うの。」
例3:上司が会議中に自分の意見を遮って進行する場合
D:「◯◯係長、最近、会議中に私が発言している時に、途中で私の話を遮ることがあるように感じています。」
E:「その時、私としては自分の意見を全部伝えられないことがあって、心が痛むんです。」
S:「もしよければ、これからは私が話し終わるまで待っていただけると、とてもありがたいです。」
C:「そうしていただけると、私ももっと安心して発言できるようになるし、結果的にチーム全体としても発言に対する恐れがなくなりディスカッションもよりスムーズに進むと思うんです。」
アサーションとは?研修を導入検討する前に理解する考え方の基本まとめ
いかがでしたでしょうか。
この記事ではアサーティブになるための基本的な考えと4つの柱、そして具体的な実践例をお伝えさせていただきました。
繰り返しますが大前提信頼関係の構築や基本的な考え方が必要ということを忘れないでください。
自分に力をつけ自信を持ち、日常レベルから全ての人に対して対等な姿勢で接することも重要です。
インサイドアウトという言葉をご存知でしょうか?自分が主となって周りに対して良い影響を発揮し、内から外に向けて影響力の輪を広げていくことです。
アサーティブなコミュニケーションを身につけるためにもこのインサイドアウトという考え方はとても重要です。
できることを周りに向けてコツコツ実践して、自分の中のアサーティブという輪を拡げていくのです。
今回お伝えしたことを実践することで、アサーティブを発揮する習慣形成を身につけましょう。それが良質な人間関係を築き、ゆくゆくは自分自身の人生の幸せにもつながっていくはずです。
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この記事の参考文献:
「アサーティブな自分になるトレーニング方法」勝間和代
「NVC〜人と人との関係にいのちを吹き込む法〜」マーシャル・B・ローゼンバーグ
「SATカウンセリング技法」宗像恒次
「アドラー心理学×幸福学でつかむ! 幸せに生きる方法」平本 あきお,前野 隆司
「アサーション入門」平木 典子
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