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働き方改革とは?関連法案と成功事例で読み解く中小企業が社内で推進する秘訣

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2019年4月1日に施行された働き方改革法案
 
これにより、会社は長時間労働の是正に踏み切らざるを得なくなりました。しかし、会社側が一方的に社員に対して押し付ける施策では、本当の意味での働き方改革にならず「働かせ方改革」にしかなりません。
 
働き方改革とは何か?
働き方改革を社内で推進する秘訣
いかに社員を活動に巻き込むか?
 
取り組みがうまく回っている企業さまの事例を交えながら詳しく解説いたします。皆さまの会社が取り組まれる働き方改革が、単なる社員への押し付け施策ではなく社員が主体的に取り組み、本当の意味で成果の出る施策になるヒントになればと思います。

働き方改革とは何か?

働き方改革は、日本人の働き方を抜本から見直す取り組みのことです。働き方改革は、民間企業に任せきりで行うものではありません。政府が主体となり、企業側に働き方を変えていくように促しているのです。
 
では、具体的に何を変えていくのでしょうか?
 
厚生労働省では、働き方改革の3つの柱として、以下のものを挙げています。
 
①時間外労働の規制
②年次有給休暇の取得
③正規社員と非正規社員の待遇の是正

 
詳しくは厚生労働省の働き方改革特設サイトをご覧いただければ、詳しいことは理解できるかと思います。ただし、これら施策を読んだだけでは、あまりピンと来ません。要点だけもう少し噛み砕いてみていきましょう。

①今までよりも短い時間で成果を出せるようにしよう

働き方改革の大きな流れの1つは、長時間労働の是正です。本来ならば、1日8時間、週40時間が法定労働時間として労働基準法の中で定められていました。しかし、今までは会社と従業員の間で36協定さえ締結すれば、会社は法定労働時間を超えた残業をさせることが実質的に可能でした。
 
今までの法定労働時間は、あるようで無いに等しいルールでした。
 
しかし、2019年4月1日に施行された働き方改革関連法案の中で、労働時間に対する規制が設けられ、その時間を超えてしまった場合には、会社はペナルティを受けることになるのです(6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金)。

(中小企業については2020年4月より適用対象になります)
 
2019年4月1日に法律が施行されることは前から決まっていたわけですし、会社としては「自分たちも何とかしなければ」と大急ぎで対策に迫られていることと思います。
 
しかし、働く時間を単純に短くすれば良いわけではありません。労働時間を減らすと同時に、今までと同じくらいの成果を出さなければなりません。
 
たとえば、1日12時間かけてようやく車を100台つくっていたとします。これを今までと同じペースで働く時間だけ削ったとしたら、作れる車の台数は減ってしまいます。働く時間を短くした後も、今までと同じように車を100台(あるいはそれ以上)つくれるようにしましょうというのが、本来の働き方改革のあり方です。

②多様な働き方を認めていきましょう

「多様性」や「ダイバーシティ」という言葉を、どこかで一度は耳にしたことがありませんか?
 
多様な働き方とは、ライフステージ(結婚、出産、子育てなど)や個々人の価値観に応じて、多様な働き方を認めていきましょうということです。今では、テレワークや副業、時短勤務、男性の育児休暇を認める会社も増えてきました。
 
かくいう筆者も、2019年1月に第一子を無事に出産いたしました。普段は企業様向けの研修や講演会で全国を飛び回る機会が多いのですが、研修以外の日には妻と協働で育児を行う日々が続いております。
 
日本の企業では、いままで週に5日間、1日8時間フルタイムで働く人間がいちばん偉いんだという風潮が強かったと思います。毎朝早起きして、眠気を我慢しながら満員電車に揺られながら会社へ行くというのが当たり前でした。
 
しかし、こうした仕事のスタイルを誰でも彼でも同じようにできるわけではありません。時間をかけて会社に行くよりも、家で仕事した方がパフォーマンスが上がる場合もありますし、夫婦が協力して子育てをするならば、男性が家庭にいる時間が長い方がいいはずです。
 
では、フルタイムで働くことができないならば、正社員として働くことは難しいのでしょうか?それが従来の風習でしたが、どう考えてもおかしいですよね。
 
多様な働き方を認めていくと、正社員と契約社員の関係のようにどうしても待遇に差が生じてきてくるものです。働き方改革関連法案の中には、そうした正規雇用と非正規雇用の間で不合理な待遇格差が生じないように定めるものもあるです。

働き方改革が必要な理由

それでは、なぜ働き方改革が必要なのでしょうか?
 
働き方改革がいま日本で求められていることは、皆さまも何となく肌感覚でおわかりいただいていることでしょう。働き方改革を実現することは、国家レベルで見ても企業レベルで見ても生き残っていくための重大な施策なのです。

①少子高齢化の中で日本の労働生産性を上げたいという政府の思惑がある

日本が少子高齢化に突入していることは、誰もがご存知かと思います。われわれのような現役バリバリの働き手が減っていく中で、働けなくなった多くの高齢者を支えなければならない状況です。
 
ワークライフバランスのコンサルティングを手がける小室淑恵さんは、働き方改革が謳われるずっと前から、人口オーナス期に突入する日本が経済成長するための施策を政府に働きかけていたのですね。素晴らしいなと思います。
 
ならば、将来的に働き手が増えるように、もっと沢山子どもを産めばよいのでは?とお考えになるかも知れません。しかし、子どもをたくさん産む人が増えるどころか、むしろ減っていくばかりです。
 
昔は男性が働きに出て女性が家庭で子どもの面倒を見るのが当たり前でした。子育てを経験されている方ならばご存知と思いますが、これは非常に大変なことです。子どもが小さいときは、乳幼児はある意味24時間営業の状態です。夜中に何度も起きて泣き叫ぶ子ども。寝かしつけるまで寝ることができません。睡眠時間がほとんど取れない状態が続きふらふらになります。
 
私も眠れない日がたくさんあります。もしこれを妻一人に押し付けようものならば、妻にかかるストレスは尋常ではありません。
 
「うちの旦那は出産後の一番大変なときに何にもしてくれなかった」と昔のことを何年経っても話す女性は本当にたくさんいます。一方で、男性としては「これがサラリーマンの宿命だから」と男性が稼ぎに出かけるのが当たり前、誰のおかげで食べて行けているんだと、自分の意見を主張する人もいます。このような状況では、夫婦関係も悪くなるばかり。
 
こうした夫婦仲を見ている今の世代は、とてもではありませんが子どもを産みたいなどと思うわけがありません。夫婦関係の悪化は仕事のパフォーマンスに影響を及ぼします。出産を機に家庭崩壊を起こす実情を取材したNHKの「産後クライシス」という番組も一時期話題になりました。
 
だからこそ、従来のように会社でダラダラと長時間働いて、家庭のことは女性に任せるという悪しき慣習は是正しなければならないのです。短い労働時間の中でも、今までと同等かそれ以上のアウトプットを出していかなければ、誰も子どもを産みたいなどと思わなくなります。

②人手不足の中でも優秀な人材を雇いたいという企業の思惑もある

人手不足が続く中で、優秀な人材を採用することは企業が生き残る中で重要です。しかし、いい人材を採用したくても採用できない企業さまも多いのではないでしょうか?
 
ブラック企業という言葉が世の中に浸透するようになったのも大きな要因です。ブラック企業とは、過剰労働やセクハラ・パワハラ、いやがらせなどによって、過労死や自殺などに追い込まれるような社員を排出している企業のことです。ブラック企業大賞という形で、ブラック企業を世の中に知らしめるような動きも出てきています。
 
良い人材を採用するならば、新しい人材の採用を考える前に、今いる社員がいかに働きやすい環境をつくるかを考えるのが重要です。一度ブラック企業として認知されてしまうと、その企業に入りたいと思う人は少なくなります。
 
最近、エンゲージメントという言葉で表現されるようになりましたが、企業としては「自分が働いている会社が好きで、この会社で働くことを誇りに思っている」と社員に思ってもらうかどうが非常に大事です。
 
ブラック企業とは真逆でホワイト企業という言葉も認知されるようになりました。健康経営のコラムでもお話しさせていただいたのですが、社員の健康に配慮した企業を評価する健康経営銘柄や健康経営優良法人という制度もあります。認知度が上がれば、就職活動時にはこうした企業を優先的に応募することも増えてくるのは間違いありません。

働き方改革の推進を阻害する5つの要因

働き方改革の必要性は、どこの企業さまも理解していることと思います。法律で長時間労働が規制されているのだからやらざるを得ない。ブラックな労働環境では社員も働きたいと思わない。
 
必要性は認識しているもの、社内で推進するのはなかなか難しいものです。働き方改革に限った話ではありませんが、何か新しいことをやろうとしたら、阻害要因というものが必ずあるものです。そこで、働き方改革を推進する上で、阻害要因となる5つの要因をまとめさせていただきました。皆さまの会社も、どれか1つは必ず当てはまるのではないでしょうか?

①「うちの会社は何をやっても無駄」という固定観念

そもそも、働き方改革をやっても無駄と思い込んでいるうちは、何をやってもうまくいきません。著名な自己啓発書の中でも「思考は現実化する」と説かれています。過去の経験から染み付いた思考の枠組みを「パラダイム」といいますが、働き方改革を皆さまの会社で推進する上で、パラダイムを変えていかなければなりません。

②働き方改革の必要性を経営層や管理職が腑に落としていない

皆さまの会社では、働き方改革を本当に必要だと思って取り組まれているでしょうか?
 
法律違反になるのがイヤだからやらざるを得ない
行政からの指導で仕方なくやっている

 
経営層がこのような考え方で嫌々と働き方改革を推進しても、社員たちにそれを悟られてしまいます。
 
私は企業研修の講師として伝達力について話をする際に「自分自身が腹落ちしていなければ社員には社長のメッセージは伝わりませんよ」と伝えています。働き方改革の必要性を社員に訴えても、本気で変えていく意思がなければ社員の心を動かすことはできません。
 
働き方改革を推進する経営層や管理職の方々が、本当に働き方を改革していくという意思決定をしていなければならないのです。

③経営層や管理職が社員に一方的に押し付けるだけ

人間誰しも、人から言われたことをやるだけでなく、自分たちで主体的になって取り組んだことの方がやりがいを感じるものです。
 
長時間労働を是正する動きとして、「ノー残業デー」を設定されている企業さまも多いかと思います。最近では、「プレミアムフライデー」として金曜の夕方前に帰宅させるという制度を取り入れる企業さまもいらっしゃいます。
 
それらの取り組みは、果たして上手くいっているのでしょうか?
 
社員の方々のワークライフバランスも考慮された上での取り組みと思いますが、上手くいっていないケースの方が多くないでしょうか?
 
たとえば、いくら早く帰らせても自宅で作業していたら意味がありません。定時になったらタイムカードをこっそり切って、残った仕事をサービスで行なっているという現状の組織も実は多々見られます。次の日の朝早く出社して仕事をしているということもありえます。
 
社員の方々は、上からノー残業デーを言われたから仕方なくやっているという感じだと思います。こうした上からの一方的な押し付け、やらされ感でやっている働き方改革は、間違いなく失敗します。仮に定着したとしても、規制がなくなった途端に元に戻ります。
 
一方で、日本の場合には欧米のトップダウン型と違い、ボトムダウンによる改善活動は非常に強いです。それは、トヨタ自動車をはじめとした製造業が現場で実施していたQCサークル活動と同じです。
 
働き方改革も、上から言われて仕方なくやるよりも、問題意識を実感し、社員同士がチームを組んで改善していった方が、絶対に効果的です。
 
働き方改革は、一長一短で成果を出すものではありません。労働時間が長い原因を自分たちで分析し、一つ一つ改善を積み重ねていくという愚直な取り組みです。むしろ、こうした改善活動は、日本企業には合っているのだと思います。
 
経営者が圧倒的なリーダーシップで社員を導くことも必要だし、社員たち自身も働き方改革を自分ごととして捉えて活動の中に巻き込まれることが、改革を成功させるためにも重要になってきます。

④「働き方改革を推進したら残業代が減らされる」という不安・不満

「残業代が減らされるからイヤだ」という理由で、働き方改革に反対する勢力も社内にいらっしゃるのではないでしょうか?
 
笑い事ではなく「働き方改革で残業が減ったら住宅ローンが払えなくなる」と真顔で言う社員さんがいる会社さまもあるようです。残業が減るのが嬉しいと思う方もいれば、残業手当が欲しくてあえて残業したいと言う社員もいらっしゃるのです。
 
事例企業さまとして登場いただいているSCSK株式会社様では、削減した残業代は特別ボーナスとして社員に還元することを約束しました。労働時間を減らすことが、社員にとってもメリットになることを共有しなければ、なかなか受け入れられないでしょう。

⑤社員が上司や社長にもの申しづらい雰囲気がある

社員が上の人たちに対して意見を言いづらい雰囲気はありませんか?このような状況では、社員も本音で話せず、現場で起こっている本質的な問題をあぶり出すことはできません。
 
経営層が考えた施策を一方的に押し付けるだけではダメ。そうなりますと、やはり社員たちが現場で困っていること、悩んでいることが何かを引き出さなければなりません。しかし、普段から社員との信頼関係ができていなければ、なかなか本音も言いにくいのではないでしょうか?
 
部下は本当は不満に思っているのだが、上司には相談しにくい。働き方改革には後ろ向きだが、社長や上司から言われたから仕方なくやっている。職場の中では言いづらいから飲み会の場で同僚に愚痴をこぼしている。
 
このような状況で、職場の本質的な問題点が浮かび上がってくると思いますか?
 
働き方改革としてどのような取り組みをしていくかは、会社によってそれぞれ異なります。10,000社いれば10,000通りの施策があるのです。社員が本音で話せなければ、現場で起こっている本質的な問題は浮かび上がってきません。

働き方改革の取り組み事例8社

①SCSK株式会社様

東証一部上場のIT企業であるSCSK株式会社様。製造業、流通業、金融など多岐にわたる業界でITサービスを手掛けていらっしゃる企業さまです。
 
SCSK様の働き方改革の特徴は、残業時間の削減にチャレンジするにあたり、経営トップが圧倒的なリーダーシップを発揮し、それが結果として社員の主体性を引き出すことにつながったことです。
 
IT企業といえば、どうしてもブラックなイメージがありますよね。IT業界は仕事がキツイのは当たり前。24時間365日通して、お客様へ最高のサービスを提供することができる。SCSK様の中でも従来はそのような慣習があったそうです。
 
そのような中で、SCSK様はスマートワークチャレンジ20という取り組みを行いました。これは、月平均残業時間を従来まで35時間以上あったものを20時間以内まで縮めるという取り組みです。
 
この取り組みに対しては、社員から反発の声が上がったようです。残業時間を減らされてしまっては、お客様に対して満足の行くサービスを提供することができなくなるし、残業時間を減らされた分で給料も減ってしまう。
 
しかし、経営層はこの取り組みに対して本気でした。社長自らがお客様に対して手紙を書き、自社のスマートワークチャレンジ20に対して協力をして欲しいと訴えたのです。その手紙は、役員の方がお客様のもとを直接訪問して手渡ししたとのこと。
 
「残業を減らせ」と発破をかけるだけでは、社員の心を動かすことはできません。経営層自らが、働き方改革の重要性を訴えるとともに、自分たちが真っ先に行動に移したことが、社員たちの行動喚起につながったのでしょう。
 
実際にこの取り組みを始めたことで、残業時間が削減できただけでなく、社員の意識にも変化があったようです。以前に比べて仕事に誇りを持てるようになった社員も増えましたし、社員のエンゲージメントも伸びています。
 
詳しい情報は、ぜひSCSK様のホームページでご覧になってみてくださいね。

②サイボウズ株式会社様

グループウェアという組織内での情報共有のためのITツールを提供するサイボウズ株式会社様。サイボウズ様は、世の中で働き方改革が叫ばれるよりもずっと前から、自社の働き方改革に取り組まれていました。
 
サイボウズ様は、社員の多様なニーズに合わせて、多様な働き方を認めている企業様として非常に有名です。サイボウズを本業にする傍で、副業で別の仕事をする社員もいらっしゃいます。オフィスに出社せずに在宅で勤務する社員もいらっしゃいます。サイボウズの代表取締役である青野さんご自身も、お子様が産まれたタイミングで自らが育児休暇を取られています。
 
誰もが憧れるような多様な働き方を認めるサイボウズ様ですが、以前は20%超えの高い離職率を誇る典型的なIT企業だったのです。毎週のように社員が辞めていき、毎週のように送別会を開いていたという時期もあったとのこと。
 
高い離職率をどうにかしようと、青野さんは自社の何が問題だったのかを社員の方々に聞きに行きました。一人ひとりの働き方に対する要望を聞き、それを人事制度に落とし込んで行ったのです。
 
「100人いれば100通りの人事制度がある」と謳うサイボウズですが、社員の要望であれば何でも取り入れているわけではありません。根本にある経営ビジョンは「世界で一番使われるグループウェア会社になる」ということ。それを実現するために必要な社員のニーズは採用するというスタンスです。
 
日本橋にあるサイボウズの本社ですが、オフィスのエントランスは公園をイメージさせるような素敵な内装でした。こうしたところにもサイボウズの価値観が表れているのだと感じております。

サイボウズのオフィス

③国際自動車株式会社様

国際自動車株式会社さまは、東京都内でタクシーやバス運行、ハイヤーを手がける老舗の会社です。
 
タクシードライバーといえば、仕事がキツくて給料が安いというイメージがありますよね。しかし、その業界の常識に囚われず、新卒の学生から中途社員まで多くの人たちにとって人気の会社となっているのです。
 
その秘訣としては、国際自動車で働く人たちの多様な価値観や働き方を受け入れていることにあります。国際自動車に応募してくる人たちは、皆が皆はじめからタクシードライバーになりたいといって入社するわけではありません。初めはタクシードライバーに対して偏見のある方もいらっしゃいます。
 
しかし、国際自動車さまのドライバーの方々は、皆がとてもイキイキと仕事をされているのです。タクシードライバーは給料が安いと言われることもありますが、国際自動車さまでは新卒から年収500万円以上を稼いでいる方もいらっしゃいます。残業もなく休みもしっかりと確保できるので、仕事とプライベートのバランスを取ることができるのです。
 
タクシードライバーの仕事自体に興味はないが、趣味やスポーツなど他の活動との両立ができるのを魅力に感じて国際自動車に入られる方もいらっしゃいます。本当にそれで大丈夫なのと思われるかも知れませんが、入社してからタクシードライバーの仕事のやりがいに気づかれる方は多いです。
 
国際自動車の働き方について詳しく知りたい方は、km求人採用サイトをご覧になってみてください。

④未来工業株式会社様

未来工業株式会社様は、電気設備資材・給排水設備の資材などで業界トップクラスのシェアを誇る会社です。製品だけ聞いてもよくわからないかも知れませんが、日本人の誰もが羨むくらい働きがいのある会社として知れ渡っています。
 
法政大学教授の坂本光司先生の著書『日本でいちばん大切にしたい会社』でも取り上げられています。
 
1日あたりの労働時間は7時間15分、年間の休日日数は140日。残業やノルマも一切なし。それでも給料は公務員と同等の水準。そうした働く側にとっては甘い蜜のような制度の背景にあるのは、企業の競争力の源泉は社員自らが考え抜くことにあるというスタンスにあります。
 
企業の競争力の源泉は、他社と差別化した製品・サービスを提供すること。どうすればそれが実現できるかを、社員一人ひとりに徹底的に考えさせているのです。社員に考えさせるために、思考力を削ぐ要因を徹底的に排除しなければなりません。休みが十分に取れなければ、思考力も低下してしまいます。会社側から一方的に押し付けるだけでは、社員のやる気も上がりません。
 
考えさせるために、社内に改善提案の制度を設け、採用されるかどうかに関係なく、提案1件につき500円のインセンティブも付与しているのです。
 
未来工業様の制度だけを他社が真似たとしても、おそらくはうまくいかないでしょう。その制度の背景にある会社の経営方針と制度、社員の要望や満足度が密接に結びついているからこそ、未来工業様では制度がうまく回っているのだと思います。

⑤富士市役所様

富士市役所様(静岡県富士市)は、4年連続、筆者が研修として入らせていただいております。私の研修を行う動機となったのは、富士市役所の職員の皆さまのコミュニケーションを高めるということでした。
 
しかし背景にあるのは、富士市役所人材育成室の人材育成に対する並々ならぬ職員研修改革でした。
 
行政の窓口では富士市役所に限らず並々ならぬクレームがあります。理不尽な罵声や自分の今の生活の不満の発散のために攻撃する、という住民は実は多々います。クレームを受けて気分がよくなるという方はいらっしゃいませんよね。
 
そのような状況を放置しておくと、職員の方々のモチベーションが下がるだけでなく精神状態に影響を及ぼします。ワークライフバランスが仮に取れていたとしても、イキイキと仕事ができない時間があるのは辛いですよね。
 
そこで人材育成室長の青木様は、旧態の研修改革を起こしました。職員がイキイキと働けるための様々なプログラムを準備し、忙しい業務の中、研修参加を促しました。
 
最初は批判の的となって理解を得られなかったそうですが、徐々に理解者が増え、職員研修の意義が徐々に浸透し、今では富士市役所の取り組みは日本政府や海外の政府からも注目される存在になっています(私の研修の時に実際に海外の要人の方や政府関係者が見学にきていました)。
 
働き方改革といえば、長時間労働の是正や多様な働き方といった制度自体が注目されがちです。しかし、富士市役所の取り組みのような本当の意味での働き方改革を進めていくならば、制度を整えると同時に、働く方々に対する取り組みや意識も変えていかなければなりません。
 
こうした富士市役所の本気の取り組みは、職場の雰囲気の活性化にもつながり、職員の方々の働きがいにもつながるでしょう。

佐藤政樹研修〜お客様の声、感想とその内容〜富士市役所様

富士市役所での職員研修。右端が改革を起こした青木様

⑥合同経営会計事務所

上記の富士市役所に続き、私が研修講師として関わらせて頂いている福井にある大手の合同会計グループでは、代表の清水俊裕社長が今の時代の流れを読み、働き方改革を社内で積極的に進めてきました。
 
プライベートの携帯電話で時間外対応。
土日祝日などのメール対応。
私用パソコンでの時間外業務。
定時でタイムカード切ってのサービス残業。
 
昔だったら当たり前だったこれ以外の問題点も洗いざらい潰していきました。お客様にも伝え、徹底しました。
 
最初は社内からは反発が生まれましたが、対話を続け継続していったら徐々に社内に浸透し、今では当たり前になったそうです。面白かったのが、これらの問題点をクリアにして改善していったら、「会社の発展に必要な本当の問題点が見えて社員がわかってきた」ということでした。
 
「研修は消費ではなく投資である。」清水社長はそう考え社員に積極的に研修参加を促しています。自ら東京に勉強にいく社員には積極的に会社も支援しています。
 
今では社員の方々会社に感謝しているそうです。研修を受講したある女性社員も「こんなにいい会社はない」「私たちは大切にされている」と実際に言っているのを聞きました。

合同会計事務所様が成果が出たのは経営層の働き方改革のコミットメントです。

合同会計事務所様で研修をする筆者

⑦株式会社ウィルフォワード

株式会社ウィルフォワードは、私が劇団四季を退団し研修講師として独立したときからお世話になっている会社です。まだ創業10年にも満たないベンチャー企業ですが、面白いことに、ウィルフォワードは2011年に創業した当初からずっと働き方改革に着手していたのです。
 
人間の創造性を阻害するようなルールは極力排除する。オフィスに出社するもしないも自分たちで決める。会社からいくら給料をいただくのかも、社員たちが自分たちで考えて会社と交渉して決める。
 
自分がどのような人生を歩みたいのか、そのために自分たちの会社とどのように関わりたいのかを社員自らすべて決めているのです。我が社では、これを5つのWill(未来への意志)という形でまとめています。5つのWillとは、健康、経済、人間関係、仕事、やりがいの5つの要素のこと。社員は自分たちの5つのWillを常に考えていて、社員同士で定期的に集まって自分たちのWillについて仲間とシェアしています。
 
ウィルフォワードで働くメンバーは、正社員だけではありません。実に多様なバックグラウンド、多様な働き方をするメンバーが集まっています。子育てと仕事を両立したいママさんが、在宅で仕事をすることもあります。代表の成瀬拓也も二人の子どもを育てながら経営を担っています。
 
メンバーがここまで多様だと、チームとして成果を出していくのが難しいのではという意見もあるかも知れません。しかし、ウィルフォワードでは会社に関わってるメンバー同士が家族のようなつながりをもっています。
 
もしウィルフォワードに興味がある方がいらっしゃいましたら、ぜひお声をかけてみてください。皆さまも彼らと一緒に食事をすれば、そのカルチャーを体感できるでしょう。

鎌倉に拠点を置くウィルフォワード

⑧株式会社ワークライフバランス様

株式会社ワークライフバランスは、企業様向けにワークライフバランスの取れた組織・人事制度の変革をリードするコンサルティング会社です。
 
代表の小室淑恵さんは、メディアに多数取り上げられていますし、TEDに出演したこともあります。本コラムを執筆させていただくにあたり、小室さんの書籍も大いに参考にさせていただきました。日本では政府が主体となって働き方改革を推進している状態ですが、それも小室さんが政府に対して働きかけを行ってきた影響も大きいと思います。
 
働き方改革を推進するため、多くの会社ではコンサルタントにお金を払い、組織・人事制度を見直したり、RPAやAIという最先端のツールによる業務改革を進めています。
 
一方で、小室さんの会社のコンサルティングのスタイルとして特徴的だと感じたのは、コンサルタントの方から制度やツールを一方的に押し付けるのではなく、あくまでクライアント企業が自ら変革を推進していくようにアプローチしていくことです。
 
ワーク・ライフバランス様のコンサルティングでは、いきなり全社で取り組みを進めることはしません。クライアント企業の中でトライアルチームをいくつか決め、小さく改革を進めていきます。コンサルタントがサポートに入ることはありますが、改革を進めていくのは、あくまでもクライアント企業の社員さまたちです。
 
小室さんたちにコンサルを依頼するくらいクライアントの上層部は本気ですが、社員さまたちからすれば、上から厄介ごとを押しつけられたと後ろ向きなメンバーもいらっしゃいます。しかし、業務の分析から問題点の抽出まで自分たちで行うため、自分たちの課題がこうなのだと腹落ちもできるし、改革も徐々に主体的に進めていくことができるのです。
 
小室さんたちのコンサルティングを見ていてイメージしたのが、日本の製造業で行われているQCサークルです。私もQCサークルの研修会で講師として頻繁に登壇させて頂いております。
 
QCサークルは、主に工場の中で起こっている問題を現場がチームを組んで改善活動を行い生産性をあげるだけではありません。QCサークルは「生きがいのある明るい職場づくり」こそが生産性を向上させると理念に掲げています。

リンク(「QCサークル発表会」講演での嬉しい感想
 
ワーク・ライフバランス様では、クライアント企業さまがQCサークルのように社員主体で自分たちの働き方を改革していくように促しているのです。
 
働き方改革と一言でいっても、どのような改革を進めるのかは会社によって異なります。だからこそ、コンサルタントから一方的にこれをやってくださいと一方的に押し付けるのではなく、社員自らが問題点を認識して主体的に改善をしていくのが一番理想的だと感じております。

働き方改革が企業にもたらす2つの効果

働き方改革というと、労働時間の削減や生産性向上ばかりが注目されがちですが、効果はそればかりではありません。働き方改革の推進を通じて、そこに関わった社員たち自身の成長にもつながります。
 
ワークライフバランスが実現し、仕事を通じての成長が楽しめるようになれば、社員の会社に対するエンゲージメント向上にもつながります。

①働き方改革の取り組みを通じて社員が成長できる

働き方改革は、経営層や管理職が一方的に社員に押し付けるだけの施策では上手くいきません。社員たちが、自分たちの仕事の効率を高めるためにどうすれば良いのかを自ら考え実行に移すことで、社員自らの成長になります。
 
たとえば、ベテラン社員が勝手に抱え込んでいた属人的な業務。それを見て真似て覚えろと言われたらどうでしょうか?その仕事はベテラン社員が抱えたままであり、若手の社員はいつまでたっても上達しません。それではモチベーションも上がらないですよね。
 
属人的な業務も細かく分解してみたら、実はマニュアル化できるし若手に引き継ぐこともできるかも知れません。ITツールで自動化すれば、短時間でバラツキなくこなせるかもしれません。
 
こうしたアイデアを、外部からコンサルタントを入れて実施されている企業さまも多いでしょう。しかし、コンサルタントから押しつけられたアイデアと、社員自らが考え出して実行に移したアイデアと、どちらの方が愛着が湧くと思いますか?
 
自分たちが主体となって行動に移すことは、絶好の成長の機会になるのです。
 
「そうは言っても、うちの会社は受け身な社員ばかりでとてもじゃないけど真似できない。」
 
もしかして、このように思っていないでしょうか?筆者も多くの企業さま向けに社員教育研修を行っておりますが、どのような企業さまでも社員の主体性はいつからでも引き出すことはできるのです。
 
社員の主体性を引き出すコツを知りたい方は、ぜひ筆者までお問い合わせいただければと思います。

②会社の採用力が強化される

会社が持続的に成長するためには、優秀な人材を採用して会社に新しい風を入れていくことが大切です。会社の経営資源は、人・モノ・金・情報ですが、人材を「人財」とあえて呼ぶ会社さまがあるくらい、人は重要なのです。
 
働き方改革によって、求職者の方からこの会社で働きたいと言ってもらえるようになるでしょう。
 
しかし、会社にとってはかけがえのない人材を蔑ろにしていないでしょうか?自社の広告宣伝を積極的にうち、大量に採用した中からタフな人間だけが生き残る。耐えられなくなった人間は辞めていくか、最悪の場合には過労死や自殺をしてしまう。そのような会社さまはブラック企業としてレッテルを貼られ、その会社に入りたいと思うような人たちはいなくなるかもしれません。
 
逆に、ワークライフバランスが取れていて、仕事もプライベートも両方楽しめて、その会社で働くことによって人生全般の幸福度が上がる。今いる社員さんたちからそのような評価をもらえれば、自然とその会社に入りたいと思う人たちも増えてくるのではないでしょうか?
 
いまいる社員さんのエンゲージメントが上がれば、自然と採用力も強化されます。会社の採用活動というと、広告宣伝やリクナビのような就職・転職支援サイトばかりが先行しがちですが、どうか順番を間違えないでいただきたいのです。
 
特に中小企業では新しい人材を雇うことを考えるよりも、いまいる社員さんがいかに働きやすい環境をつくるかを考えるのが先です。

【まとめ】働き方改革は組織と個人の意識両方の変革で初めて成り立つ

本コラムを執筆させていただくにあたり、筆者も働き方改革を推進されている企業様の事例を研究させていただきました。
 
世の中では、働き方改革によって無理やり残業時間を削られたとネガティブな評価をする方もいらっしゃいます。一方で、事例であげた企業様のように社員が以前よりもイキイキと働けるようになったというケースもあります。
 
働き方改革といえば、労働時間の削減や勤務間インターバル制度など、どうしても組織や制度の変革というイメージが強い気がします。しかし、他社ですでに成功しているからうちの会社もと思って真似たとしても、上手くいかないことが多いのではないでしょうか。
 
自社が変えようとすることは、会社の文化や社員の大切にする価値観に合ったものでしょうか。もし回答がノーなのであれば、それは受け入れられることなく失敗に終わってもおかしくありません。仮に社員から受け入れられても、規制が緩んだ途端にもとに戻ります。
 
働き方改革によって会社を本気で変えていくならば、制度を一方的に押し付けるだけではダメで、社員自らが必要性を認識し、主体的に変えていきたいという姿勢に変えていかなければなりません組織・人事の制度の改革と、個人の意識変革の両方でもって初めて働き方改革が成り立つのです。
 
本コラムを参考していただき、自社の取り組みのどこに課題があったのかを振り返っていただければ幸いです。

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