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メンター制度とは?
メンター制度を取り入れている上場企業様でメンター研修の講師をしてきました。
メンター制度とは
比較的年齢の近い先輩社員がメンターとなり、新入社員に寄り添いサポートすることにより仕事における不安や悩みの解消、業務の指導や育成も行う制度のことです。
メンターとはもともと、優れた指導者、助言者という意味。メンター制度は大企業を中心に取り入れられている育成制度ですが近年では中小企業でも積極的に導入されはじめてきました。
メンター(先輩社員)とメンティー(新入社員)は、上下の関係でなく斜めの関係です。上司とは別の相談相手でお互いの関わりにより知った情報や話した内容の報告などはしません。
メンター制度導入のもう一つの意義と効果
テキストコミュニケーションが当たり前となった人間関係が希薄化しやすい現代のWEB社会においては緊密な関係性を作ることが特に重要です。メンター制度を導入することにより新入社員の成長に向けたサポートや不幸な離職の防止にもつながるといったメリットもあります。
それだけではありません。教える立場に立つことによりメンター(先輩社員)自身が大きく成長することができるのがメンター制度のもう一つの意義です。
マネジメント力や指導力・コミュニケーション能力や影響力が身につく機会で未来のリーダーの育成にもなるのです。
しかし課題もあります。
指導役であるメンター(先輩社員)に対してその役割を遂行できるような具体的な支援ができているのかというと、そういう支援ができていないのです。
メンターに対する具体的な支援ができていないと業務を抱えるメンターには負荷がかかり、能力のばらつきもうまれます。
そのためメンターに選出された先輩社員に対して、マネジメントや育成のためのコミュニケーションの観点で、メンター研修を講師として私が行わせて頂きました。
メンター研修を担当した講師の経験
はじめに受講者であるメンター(先輩社員)に講師である私自身の経験をお伝えしました。
はじめてこのコラムをお読み頂いている方に簡単に自己紹介します。私は劇団四季というプロフェッショナルの世界で10年間舞台に立ち続けてきた経験を持っております。
劇団四季の世界では舞台に立つための能力を磨くだけでなく、新人や後輩の育成や所属部署(カンパニーといいます)のマネジメントまで積極的に求められる組織でした。
私自身も入団3年目から自分の同じパートである直属の後輩をすぐに預かり、舞台デビューからデビュー後のサポートまで徹底的に関わった経験があります。
技術的な指導だけでなく、プロとして生きていくための心構えも指導しました。
“教えるは学ぶの半ば”という言葉もありますが、人に何かを教えるということが半分は自分にとっての勉強にもなるということを、身を持って経験しました。
メンターである先輩社員にはぜひこの機会を通して自分自身も成長して欲しいと伝えさせて頂きました。
メンター研修の講師をする著者
新入社員の心境を体感する
今回のメンター研修ではスタートから実習を積極的に行いました。何よりも体感が記憶に定着するからです。
最初にブラインドワークという、新入社員の心境を体感するワークを行わせて頂きました。
やることはシンプルです。メンターである先輩社員にハンカチを使って目隠しをしてメンティー(新入社員)役になってもらいます。
数名のメンター役が真っ暗な状況下で何をやるかも把握出来ていないメンティー役を目隠ししたまま机や椅子など障害のある研修室の端から端まで誘導し自分の席へと着席させるというゲームです。
目隠しをしたメンティー役には何をやるのかも全く伝えません。メンター役にはメンティー役を自分の席に着席させるというゲームのミッションを伝えます。
ここでメンター役(先輩社員役)は共通して同じことをします。
「こっちこっち」と手を叩いたり「3歩前に進んでください」などと言った言葉を一方的にかけて目隠しをしたメンティー役を誘導していくのです。
この際、目隠しをしたメンティー役は心理的に不安を感じます。自分から心境を伝える状況も生まれていません。放置されているメンティー役はどんどんモチベーションが低下していきます。
ゲームが無事に終了した後に全員で振り返りをしました。
これはただのゲームです。しかし実は、この状況が新入社員の仕事での現場でも起きているのです。経験もない、何をしていいかもわからない新入社員は目隠しをしながら前に進んでいるようなものです。
新入社員の気持ちを汲み取ることや本音の言葉を引き出すという関わりやコミュニケーションをしていないことはよくみられます。
一方的な指示からはモチベーションは生まれません。放置されたら誰でもモチベーションは下がります。
そして何より重要なことは、ゴールの共有です。
もしメンター役がゲームの一番初めにメンティー役全員に「なんのためにやっているのか?」ゴールや目的の共有がされていたらどうでしょう?
目隠しをしているにもかかわらずメンティー役は自分たちの状況を把握し、できることを自ら考え始めるでしょう。仕事のプロジェクトにおいてもゴールの共有は大切です。
これらを伝えると、体感した受講者は大きな気づきがあったようです。このブラインドワークの体感からの気づきをもとにメンター研修を進めました。
目隠ししている人がメンティー役 していない人がメンター役
メンター・メンティーとの願望の共有
つぎに、メンターがメンティーの願望を共有することの重要性を理解するためにモチベーションカルテというものを配り、実際にメンティーになったつもりでカルテをメンター自身に書いてもらいました。
人は願望(自分の理想の姿)に向かって行動します。願望は人間の行動(モチベーション)の源でもあり、車で例えるとガソリンの部分です。メンターは新入社員の仕事面やプライベートの両面の願望をふかく理解してあげることが大切です。
実際にあった話
ある新入社員がいました。その新入社員は入社後仕事に対するモチベーションや意識があがらず周りに対してもマイナスの影響をもたらす状態でした。
その新入社員の担当メンターは、この時に注意や叱責や鼓舞をしたりはせずに新入社員の願望を理解しようというアプローチをしました。
すると営業部に配属された新入社員の本来やりたかった仕事はこの営業業務ではなく、入社理由もこの会社の別の業務内容にあったのです。
そこで担当メンターはその気持ちを斜めの関係性を保ってしっかりと汲み取り、上司に報告ではなく「今の営業業務は自分の望むその業務に就くためのプロセス(過程)ではないか」と問いました。
今の業務内容全てが、自分の将来の理想の姿(願望)につながっているとメンターの問いにより気づいたその新入社員の意識と行動はその日から180度変わったそうです。
このように願望の共有は大切です。
仕事以外の願望も同じです。近い関係性でも意外に知らないことも多々あります。
そこで
なりたい姿
会社を選んだ理由
好きなことやはまっていることや趣味
特技や成功体験
今困っていること
をなど時間をかけて具体的に書き出しました。
テキストの例(画像を大きく見る)
メンターのコミュニケーションスタンス
メンターの役割は、メンティーの業務の指導や育成のサポートです。この際にメンターがどのようなコミュニケーションをするのかが、メンティーの可能性を引き出す上で重要になってきます。
そこで最初に行ったブラインドワークをもとに、じっさいにどのようにコミュニケーションをとるのかについて伝えました。
メンターがこれから未来のリーダーになっていく上で自分自身を大きく成長させることのできる重要なポイントです。
今回学習したのはコーチングの基礎です。
コーチングとは「相手が自ら考え、自ら決断し、自ら行動を起こすように支援するコミュニケーション技術」です。
大前提として、
・人は誰でも可能性と創造性にあふれ自ら答えを持っている存在であるということを全員の共通認識として持つ必要があること
・メンターは答えを与えるのではなく本人から引き出す役割であること
・良い人間関係を保つ関わり方が普段からできていること
を共通認識として伝えました。
そして具体的なスキルとして
1観察
2傾聴
3質問
4承認
5フィードバック
の5つを、ワークを通して体感してもらいました。コーチングは才能ではなく実践すればするほど身につけることのできる後天的能力であることを伝えました。
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メンター研修まとめ
メンター役の先輩社員が今回の研修を通して現場で色々な気づきを得て、自ら将来のリーダーとして成長してもらえたらと感じます。そして仕事に対する意義を自ら見出し自身の器や能力の拡張にもつなげていただきたいと研修を通して感じました。
もちろんメンター役の能力向上だけでなく「新人を社員全員で育てる」という心構えの共有が大切です。
メンター役とメンティーの上司との間に温度感があってはいけません。メンターの負荷が増えてしまうだけになってしまいます。
トップからベテラン・中堅社員、先輩社員までが新人育成の当事者を持つことがメンター制度がうまく機能するか否かのポイントでしょう。
【今回大手企業で行ったメンター研修の流れ】
・研修の目的と意義
・メンターの役割とは?
・ブラインドワークでメンティーの心境の体感
・良い人間関係を保つための関わり方
・願望共有(モチベーションカルテの作成
・教える側の2つのスタンス
・引き出すコミュニケーション実習
・理想のメンター像の書き出し
・アクションプラン
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