目次
「気づいたら社内で、誰かの不用意な一言が“ハラスメント扱い”されていた」
「新入社員が、悪気なく社内情報をSNSに載せてしまっていた」
「取引先とのやりとりで、法的リスクを含む“危ない橋”を渡りかけていた」
――そんなヒヤリとする場面、あなたの会社でも思い当たることはありませんか?
近年、企業のコンプライアンス違反に関するニュースは後を絶ちません。社内データの無断持ち出し、インサイダー取引、SNSへの不適切な投稿(いわゆる「バイトテロ」)など、些細な行動が一気に社会問題化し、企業全体の信用が揺らぐケースも珍しくない時代です。
「うちの社員はそんなことはしない」と思っていても、無自覚のうちに“地雷”を踏むリスクは、すべての職場に潜んでいます。特に、社会人経験が浅く、常識や責任感がまだ育ちきっていない若手社員や新入社員にとっては、何がセーフで何がアウトなのかの境界線が曖昧なままになっていることも少なくありません。
では、こうしたリスクを未然に防ぐにはどうすればよいのでしょうか?
その鍵を握るのが、社員一人ひとりのコンプライアンス意識です。
ただし、意識とは言っても、上から「守れ」と命じただけでは身につきません。特にコンプライアンス初心者にとって、ルールや法令の意義を“自分ごと”として理解できなければ、どこか他人事のまま過ごしてしまいます。
たとえば、「うっかりハラスメント」「悪気ない情報漏えい」が起きるのは、個人の悪意よりも、“無知”や“思い込み”が原因であることがほとんどです。実際、ハラスメントを理由に退職する人は年間86.5万人にものぼり、半数以上は誰にも相談できず辞めているというデータもあります。このままでは、人材の流出、社内の空気の悪化、そして会社全体のリスク管理が崩れてしまいます。
だからこそ今、重要なのは「分かりやすく、納得感をもって伝える」コンプライアンス研修です。
本記事では、研修を形だけの儀式に終わらせないために、コンプライアンス初心者にも響く“面白くて実践的な伝え方”を、事例や工夫とともにご紹介していきます。
はじめまして、この記事を執筆した佐藤政樹と申します。劇団四季出身の研修講師として【受講生を惹きつけながら気づきと学びを促すことをモットー】に、日本のリーディングカンパニーをはじめ行政・金融機関・教育・医療機関などでさまざまな分野で講演を行っております。記事の内容をお読みいただき、もしご興味いただけましたら、ページ最下部のプロフィールや研修内容の詳細をご覧いただけますと幸いです。
コンプライアンス研修がなぜ必要?初心者こそ知るべき企業ルールの重要性
まずは基本に立ち返り、コンプライアンス研修の重要性について確認しましょう。コンプライアンス(compliance)とは本来「法令遵守」を意味しますが、企業活動において守るべきなのは法律だけではありません。
社内規程や社会のルール、職場での倫理観やモラルも含めて遵守することが求められます。言い換えれば、法律+社内ルール+社会常識——これらをしっかり守って適切に行動することが企業人としての責任です。
そして社員一人ひとりにその責任を自覚させるのがコンプライアンス研修の目的です。
企業内で起こりうるコンプライアンス違反にはさまざまなものがあります。例えば、ハラスメント(パワハラ・セクハラ)は放置すれば職場環境を悪化させ人材離れを招きますし、情報漏洩や不適切なSNS投稿はひとたび炎上すれば企業の信用を失墜させます。
また、法令違反ではなくても常識を逸脱した不祥事(顧客への迷惑行為やSNSでの悪ふざけ等)は企業イメージを大きく損ねることになります。新人社員にとっては「そんなの当たり前でしょ?」と思うルールでも、社会人として改めて教育を受ける意義は大きいのです。
例えば新人研修でコンプライアンスを取り上げずに現場配属した場合、本人に悪気はなくても取引先との何気ない会話で社外秘情報を漏らしてしまう、といったリスクも考えられます。
コンプライアンス研修は、企業をリスクから守るための予防線となる重要な取り組みです。不適切な行動を「知らなかった」「自分は大丈夫だろう」で済ませてしまわないように、具体例を通じて何が問題行動なのかを学ぶ機会でもあります。研修を通じて自分の価値観や常識と会社のルールとのギャップを認識し、倫理観や法令についての基礎知識を得ることで、違反や不正の起きにくい組織風土を醸成できます。
特にコンプライアンス初心者である新入社員ほど、「なぜそれがいけないのか」「何のために守る必要があるのか」まで含めて丁寧に教えることで、ルール遵守の意識が腹落ちしやすくなります。
最初にきちんと腹に落ちれば、その後の社会人生活を通じても高い倫理観を持って行動できるでしょう。
ここで強調しておきたいのは、コンプライアンス研修は決してお説教の場ではないということです。研修を通じて社員が「自分も組織の一員として責任ある行動を取らねば」という意識を持てれば、不祥事の芽を事前に摘むことができます。
それはひいては会社の信用を守り、企業価値の向上にもつながるのです。実際にコンプライアンス意識の高い企業は不祥事が起こりにくく、健全な成長を続けている例も多く見られます。コンプライアンス研修は企業の土台を支える重要な柱と言えるでしょう。
コンプライアンス研修が“形骸化”する理由
「うちの社員に限って、そんなことは起こらない」
「一応毎年やっているから、大丈夫なはず」
「研修資料も立派に用意してあるし、問題はないだろう」
──そんなふうに思っているとしたら、少し注意が必要かもしれません。
実際に、何の前触れもなくコンプライアンス違反は起きます。
それは悪意によるものではなく、「まさかそれが問題になるとは思わなかった」「よかれと思ってやった」という“無自覚な行動”から生まれるケースが少なくありません。
ではなぜ、コンプライアンス意識は育たないのか?
その一因が、「研修は受けたのに、忘れてしまった なぜか伝わらない」「研修はしているのに、伝わっていない」という現実です。
多くの企業で義務付けられているコンプライアンス研修ですが、「やればOK」で終わっていないでしょうか?
社員にとって内容が難解すぎたり、退屈だったりすれば、本来伝えたかったことが何ひとつ届かずに終わってしまいます。
法律用語やルールの羅列が中心となった一方通行の講義では、特に初心者には内容が頭に入りづらく、集中力も続きません。
「またお堅い話か…」と感じ、配られた資料を前に、心ここにあらず――
そんな光景に、心当たりのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
単調な講義が続けば、社員の関心は離れ、肝心の“判断力”や“危機感”は育たない。
結果として、「やったこと」に満足して「伝わったかどうか」が抜け落ちてしまう。
こうして研修は形だけの儀式=形骸化してしまうのです。
では、どうすれば新人や若手社員の心にも響く、効果的なコンプライアンス研修が実現できるのか?
その答えは明快です。
伝え方を変えること。参画型で“自分ごと”として学べる研修にすること。
“コンプライアンス”というと堅苦しいテーマに思えるかもしれませんが、実は「人と人とが信頼し合って働くための知恵とルール」。
本来はもっと、身近で、ドラマのある話題です。
社員が参画しながら積極的に関われる研修にすれば、理解度も定着率も飛躍的に上がります。
実際、そうした研修を取り入れている企業では、社員の意識が変わり、組織全体の風土も変わってきています。
初心者にも効果的!コンプライアンス研修を面白くする3つのポイント
それでは、コンプライアンス研修を退屈な儀式で終わらせず、初心者にも効果的で面白い学びの場にするためのポイントを見ていきましょう。ここでは研修を企画・実施する際に押さえておきたい3つの工夫を紹介します。人事・研修担当者の方はぜひ参考にしてみてください。
ポイント1:身近な具体例でリアルに伝える
ルールを「自分事」として捉えてもらうには、身近で具体的なケースを示すことが一番です。
抽象的な法律の説明だけでは他人事に感じてしまう内容も、具体的な物語や事例を通せば急に現実味を帯びます。例えば研修中に実際にあった社内外の不祥事例を紹介したり、業界で話題になったコンプライアンス違反ニュースを題材にディスカッションしたりする方法が考えられます。
最近であれば「SNSにおける炎上事例」や「ハラスメントが原因で優秀な人材が退職したケース」など、参加者が興味を引かれそうなテーマを取り上げると良いでしょう。事例から「何が問題だったのか」「自分だったらどうすべきだったか」を考えさせることで、単なる知識の暗記ではなく教訓として心に刻むことができます。
たとえば飲食チェーン店のアルバイト店員が厨房で不適切行為を行いSNSに投稿して炎上したケースは、ニュースでも大きく報じられました。
研修ではこのような事例を映像などで紹介し、「なぜこの行為が問題なのか」「自分たちの職場で起きたらどうなるか」をアクションプランとともに議論します。
新人社員であっても、自分が利用する身近なお店で起きた出来事であれば関心を持ちやすく、自社の問題としてリアルに捉えられるでしょう。講師が一方的に「SNS投稿は注意しましょう」と説教するより、具体的なストーリーから学ぶことが、伝わる研修の鍵です。
ポイント2:双方向の参加型学習で主体性を引き出す
研修を受講者参加型にすることで、初心者の主体的な学びを促すことができます。一方通行の講義ではなく、双方向にやり取りできる要素を取り入れるのがポイントです。
具体的には、ディスカッション、グループワーク、ロールプレイ、クイズなどを織り交ぜるとよいでしょう。
例えばコンプライアンスに関するクイズ大会を行えば、ゲーム感覚で重要知識を覚えられますし、正解を競い合うことで集中力も持続します。また、いくつかのケーススタディについて少人数のグループで話し合い、「自分たちならどう対応するか」を発表してもらうといったワークも有効です。
参加者同士で意見を交換する中で、自分では気づかなかった視点に気づいたり、理解が浅かった部分を補完し合ったりできます。
さらにロールプレイ(役割演習)は、コンプライアンス研修において効果絶大な手法です。例えば上司役と部下役に分かれてパワハラの境界線について演じてみたり、疑わしい案件を内部通報する場面を再現してみたりすると、単なる知識としてではなく体験を通じてコンプライアンスを理解できます。
「ハラスメントを受けた部下役」を新人が演じてみると、被害者の気持ちに初めて気づくこともあるでしょうし、「通報を受ける上司役」を演じれば、報告を上げる勇気の大切さを実感できるでしょう。
こうしたアクティビティは緊張感もありますが、同時にチームで協力して課題に対処する楽しさも生まれます。クイズやロールプレイ、グループ討議といった参加型手法は研修の単調さを破り、受講者の積極的な参加意識を引き出し、学習効果を高めます。
双方向の要素を取り入れる際、講師役の人はファシリテーションに徹することも大切です。
一方的に正解を教えるのではなく、参加者から意見や質問を引き出し、「それはなぜ問題かな?」と問いかけながら自ら考えさせる進行役に回ります。そうすることで受講者は受け身ではいられなくなり、自分ごととして考えるようになります。
新人社員であっても、自ら発言した内容やディスカッションで議論が白熱したテーマほど記憶に残るものです。ただ座って聞くだけの研修とは、理解定着度に大きな差が出るでしょう。
ポイント3:ユニークな演出で楽しく記憶に残す
コンプライアンス研修=地味でつまらない、という先入観を打ち破るには、研修の演出自体をユニークで楽しいものにしてしまうのも効果的です。人は楽しいと感じたことほどよく覚えているものです。研修の中に笑いどころや「おっ?」と驚くような仕掛けを用意しておけば、退屈させずに重要メッセージを伝えることができます。
たとえばロープレを堅苦しいスーツ姿で行うのではなく、あえてテーマに合わせたコスチュームを着て実践したらどうでしょうか。情報セキュリティ研修なら泥棒の仮装で現れて「あなたの会社の情報、盗みに来ました!」とやれば、参加者は最初は思わず笑いながらも注意を引きつけられるはずです。
極端な例に思えるかもしれませんが、それくらいエンターテインメント性を取り入れることで研修への興味と集中力は格段に上がります。実際、海外では社員研修に即興コメディ劇を取り入れたり、クイズ番組形式で行ったりする例もあります。
ただし不祥事自体を笑いものにするのは逆効果なので注意が必要ですが、グループワークの発表でユニークなアイデアに拍手喝采したりする雰囲気づくりで場を和ませるのです。受講者がリラックスすれば発言も活発になり、「研修=堅苦しい時間」ではなく「学びつつ楽しめる時間」だと感じてもらえます。笑顔は人の心をほぐしメッセージを受け入れやすくする潤滑油です。
さらに研修の中で映像や音楽、実演を取り入れるのも印象付けるコツです。
コンプライアンスのテーマに沿った短い動画を視聴したり、プロの俳優を使って寸劇を行ってみせたりすると、視覚・聴覚に訴えることで理解が深まります。
話は変わりますが、私の知っている市役所での窓口クレーム対応のカスタマーハラスメント対応研修では、職員に暴言を吐いてクレームをつけるお客様役にプロの俳優を雇い、対応する職員はその迫力に圧倒されていました。
コンプライアンス研修でも応用できると思います。
これは体感として心に刺さるメッセージとなるでしょう。このように五感や感情に訴えるユニークな演出を施すことで、研修内容を楽しくそして強烈に記憶させることができます。
まとめ:初心者向けコンプライアンス研修で企業の未来を守ろう
コンプライアンス研修は、企業にとって避けて通れない重要な教育テーマ<です。特にコンプライアンス初心者である新入社員や若手社員には、最初の段階できちんとルールと倫理観を教え込むことで、将来的な不祥事リスクを大きく減らすことができます。 しかし研修の形式や伝え方次第では、せっかくの内容も響かず宝の持ち腐れになってしまいます。だからこそ本記事で述べたように、具体例の活用、参加型の仕組み、そしてユニークな演出という三つのポイントを押さえ、「印象に残る分かりやすいコンプライアンス研修」を実現することが大切です。
研修が面白くなれば受講者の主体的な学びを引き出すことができ、結果としてコンプライアンス意識の向上という研修本来の目的が達成されます。
新人社員であっても、「またあの研修を受けたい」「学んだことを現場で活かそう」という気持ちになればしめたものです。そうした前向きな姿勢が社内に広がれば、ルール遵守は決して堅苦しいものではなく企業文化の一部となって定着していくでしょう。
最後に強調したいのは、コンプライアンス研修は企業の未来を守る投資だということです。 研修によって社員が変われば、企業は不祥事のリスクを減らし、信頼とブランド価値を高めることができます。コンプライアンス初心者であっても臆することなく参加できる研修を通じて、社員一人ひとりがコンプライアンスの重要性を真に理解し実践できるようになれば、結果的に企業全体の力強い成長と持続的な発展につながるはずです。
ぜひ貴社でも、コンプライアンス研修で社員の意識改革に挑戦し、安心・安全で活力ある企業風土を築いてください。社員の成長と企業の未来を守るコンプライアンス研修は、きっと大きな価値をもたらすことでしょう。
【おすすめ記事】
「面白くて効果的な研修って?」驚きの成功事例とまとめはこちらでチェック!
筆者の3分講師紹介動画
劇団四季出身の講師である筆者プロフィールはこちら

話し方やプレゼンとともに
発声について学びたいというビジネスパーソンの方
士業、先生業、講師、コンサルタントの方
がとても多いので
発声について基礎を学べる1時間10分の無料の解説動画を作りました。
・発声に関する基礎知識
・声に一本芯が通る理由
・具体的な練習方法…他
などの知識と情報が得られますので、ぜひご覧ください!!
>>無料動画セミナーを観る<<
SNSでも発信してます
Follow @masakisatochan