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■”伝える”と”伝わる”の違いとは?
“伝える”と“伝わる”。この二つの言葉を聞いて、その違いは?と問われたらあなたはどうこたえるでしょうか?
私の講演会やセミナーでこの質問を多くの方にさせて頂きます。いろんな意見が飛び交うのですが、多くの方が答えて下さることに
“伝える”は、一歩方向
“伝わる”は、双方向
という意見があります。
職場でいいますと、上司が部下に“あれをしておいて”、“これを考えておいて”と一方的に指示をする場面に例えられますね。よくみられる光景です。
逆に、上司が望むことを部下が「私がやります」自ら率先してやる場面もあります。
これこそまさに“伝える”と“伝わる”の違いではないでしょうか。
“伝わる”という言葉は、“伝える”と一文字しか違いませんがその差は大きいものとなります。
前者の上司と部下の関係で言いますと、上司はしっかりと伝えたつもりが伝わっていなかった…。もしくは、部下が「はい」とは言ったものの心では納得していないという状況も充分に起こり得ます。
“伝わる”には様々な定義があると思いますが、この記事では“伝わる”の定義を以下のように決めてみましょう。
「伝わるとは、自分との関わりによって相手が影響を受けて、自ら行動に移すこと」
つまり、相手が自ら行動に移して初めて伝わったと言えるという事です。
営業マンで行ったら、お客様に成約してもらうということです。
経営者の方でしたら、IRでのプレゼンテーションにより株主が行動をし株価に大きく影響を及ぼします。
人事採用担当者でいいましたら、会社説明会で求職志望者に「この会社で働きたい!」と思ってエントリーをしてもらうことです。
スティーブジョブスの新商品発表のプレゼンテーションのレベルが低かったら商品の売れ行きにも大きく左右するはずでしょう。この“伝わる力”が向上すれば成果に大きな影響が現れます。
つまり“伝わる力”の向上は、組織の業績や利益・収益に大きく関わってくるものだという事がわかります。
■センスや感覚で片づけていいものなのか?
しかし、成果に大きな影響を及ぼすこの“伝わる力”を感覚的に捉えセンスの有る無しで判断されている方が多いように思います。あなたはどうですか?
今、世の中には“伝え方”や“伝える技術”といった言葉が溢れています。テクニックやノウハウ集も多いです。しかし、テクニックやノウハウを先に得ようとする姿勢は逆に成長を妨げてしまう可能性があります。
立派な大木をイメージしてみましょう。
揺るぎない木の幹の部分があって始めて沢山の枝や葉が身をつけます。先にお伝えした通り幹が細いうちにテクニックやノウハウを先に求めると枝や葉ばかりが大きくなり木自体が倒れてしまいます。これでは、本末転倒です。
そうならないためにも、木の幹の部分を内側からどんどん太くしていく意識が重要になります。
そのためにも、“伝える”から一歩深く入り込んで、相手が行動に移す“伝わる”本質の部分を学ぶことが大切になります。
■センスがなくても話下手でも感動を巻き起こせるという事実
しかし、このことを伝えると「自分にはセンスがないから…」とおっしゃる方が、必ずいます。ですが安心して頂きたいです。
“伝わる”には、センスのありなしは全く関係がないと私は考えています。私が実際に体験したこんな例があります。
それは、ある結婚披露宴に参列した時のことでした。
新郎新婦のお色直し後の再入場が済むと、2名の友人スピーチが始まったのです。その2名は新郎新婦のキューピットとなった男性と女性でした。
まずは女性のスピーチからです。
女性は、人前で話すことに慣れているのでしょうか。笑顔で歩きながらマイクの前に立つとアナウンサーのようなきれいで流暢な言葉でお祝いを述べました。もちろん、彼女のスピーチが終わると拍手が沸きます。
そして次に男性の番です。
その男性は自分の名前が呼ばれると紙を手に持って席から高砂の横に向かいました。明らかに緊張してガチガチでナンバ歩きのようになっております。その時点で会場に緊張感が漂いました。
そしてその男性は、紙を前に出して手紙を読み始めたのですが手が震えてしまって全く読めないのです。震える紙と、産まれたての小鹿のように怯えた姿に会場がざわめきました。

彼は、一生懸命手紙を読もうとするのですが声が出ません。「がんばれー」という女性からの声も聞こえます。
その時です!
その男性は、「ちくしょう、ちくしょう!!」とマイクに向かって叫びました。そして会場がシーンとなると手紙を持った手を「ちくしょーーう!」という声と共に振り下ろしたのです。
そして、彼は別人のようになって自分の言葉で新郎新婦との思い出を語りました。
その話の途中です。彼は、新郎を見ました。すると新郎は目を赤くして涙をためています。その姿を見た男性は「お前が泣くのは反則だよ」といってゲストを無視して、背中をみせて涙を堪えているのです。
その間はずっと無言です。しかし、言葉がなくてもゲストは皆、その姿に目頭を熱くしました。
そして、彼は「本当におめでとう!」という実感を込めた言葉で締めると、割れんばかりの拍手が会場中を包んだのです。
彼は、話上手でしょうか?話下手でしょうか?
彼は、センスがあるのでしょうか?ないのでしょうか?
おそらく、話下手でセンスはないはずです。しかし、彼が会場中に感動をもたらしました。帰り際に、「あいつ、全部感動を持って行っちゃったな」とゲストが口々に話していたことが証明をしています。
【関連記事】→人前でうまく話すには、◯◯しないことです。
■これがわかれば伝わる。その3つの原則
つまり、“伝わる”本質は、話が上手い・下手、センスのある・なしを超えていると思うのです。
ここでこの話下手の男性が会場中に感動を巻き起こした3つのポイントをまとめてみたいと思います。
1:自分をさらけ出し、かっこつけていなかった。
出し切っていないプロよりも出し切った素人の方がよっぽど感動するとは、まさにこのことです。アナウンサーのように格好良く流暢に話すことが“伝わる”事ではありません。
彼は自分をさらけ出したことにより、お祝いしたいという想いがコップから溢れた水のように腹底から出てきました。だからゲストが感動したのです。逆に格好つけたり自分を装ったりすると、この腹底からの想いは溢れ出てきません。
これを舞台専門用語では”捨てる”といいます。
2:その場に存在することができた
その男性は、名前を呼ばれて手紙を読むまではなぜその場に存在することができていませんでした。スピーチする理由が、「無事に速く終わらせたい」「緊張する」「失敗したらどうしよう」というものだったかもしれません。
しかし、手紙を振り下ろしてからは、“新郎新婦を祝いにこの場に来た”というスタンスに明らかに変わりました。そのため存在感がまし、ゲストを一瞬で惹きつけたのです。
これを舞台専門用語では”その場に居る”といいます。
3:実感して自分の言葉で語った
手紙を読むのではなく、彼は自分の言葉で新郎新婦へのお祝いの言葉を実感して語っていました。この実感して語るというのがポイントです。腹落ちしていて上辺でも嘘偽りでもなく言葉の奥に彼の純粋な祝福の想いが実感地としてこもっていました。ゲストの方の目頭が熱くなるのも当然です。
これを舞台専門用語では”言葉を実感して語る”といいます。
■まとめ
彼は、おそらく意識などまったくしていないでしょうか、この人に“伝わる”3つの原則を素でやっていたから感動を巻き起こしたのです。
逆を言えば、この“伝わる”3つの原則を意識して日常でトレーニングをし、スピーチする経験を積んでいけば自然と“伝わる”力は身に付くはずです。この3つのポイントを意識して、あなたの“伝わる”力を向上させ成果に結びつけて頂ければこの上なく嬉しく思います。
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Masaki Sato
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