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”伝える”と”伝わる”の違いとは?
“伝える”と“伝わる”。
この二つの言葉を聞いて「その違いはなんですか?」と問われたらあなたはどう答えるでしょうか?
私の講演会やセミナーでこの質問を多くの方にさせて頂きます。いろんな意見が飛び交うのですが、多くの方が答えて下さることに
“伝える”は、一歩方向
“伝わる”は、双方向
というディスカッションがあります。
“伝わる”という言葉は、“伝える”と一文字しか違いませんがその差は大きいものとなります。
“伝わる”には様々な定義があると思いますが、この記事では“伝わる”の定義を以下のように決めてみましょう。
「伝わるとは、自分との関わりによって相手が影響を受けて、自ら行動に移すこと」
つまり、相手が自ら行動に移して初めて伝わったと言えるという事です。
そう考えると伝えると伝わるの違いは自分が関わった相手の主体的な行動があるかないかです。
職場でいいますと、上司が部下に“あれをしておいて”、“これを考えておいて”と一方的に指示をする場面に例えられますね。よくみられる光景です。
逆に上司が部下に関わることにより本人が「私はこうしたらいいと思います」と期待以上の考えを示し自ら率先して考え、成果を出す場面もあります。
前者の上司と部下の関係で言いますと、上司はしっかりと伝えたつもりが伝わっていなかった…。もしくは、部下が「はい」とは言ったものの心では納得していないという状況も充分に起こり得ます。後者では主体的な行動により成果となりました。
営業の現場でいったら、自分が関わることによってお客様に「あなたから買いたい」と言ってもらいご成約をしてもらうということです。
経営者の方でしたら、プレゼンテーションにより社員をビジョンやミッションの実現に向けて巻き込んでいくことです。
人事採用担当者でいいましたら、会社説明会で求職志望者に「この会社で働きたい!」と思ってエントリーをしてもらうことです。
スティーブジョブスの新商品発表のプレゼンテーションのレベルが低かったら商品の売れ行きにも大きく左右するはずでしょう。この“伝わる力”が向上すれば成果に大きな影響が現れます。
つまり“伝わる力”の向上は、組織の業績や利益・収益に大きく関わってくるものだという事がわかります。
はじめまして。この記事を執筆した佐藤政樹と申します。劇団四季出身の研修講師として【受講生を惹きつけながら気づきと学びを促すことをモットー】に、講演会やセミナーの講師だけに限らず大手企業などでさまざまな研修を行っております。人前で話す機会の多いビジネスマンのスピーチトレーニングを多数担当させて頂いております。記事の内容をお読みいただき、もしご興味いただけましたら、ページ最下部のプロフィールや研修内容の詳細をご覧いただけますと幸いです。
センスや感覚で片づけていいものなのか?
しかし、成果に大きな影響を及ぼすこの“伝わる力”を感覚的に捉え、センスの有る無しで判断されている方がとても多いように思います。あなたはどうですか?
今、世の中には“伝え方”や“伝える技術”といった言葉が溢れています。テクニックやノウハウ集も多いです。しかし、テクニックやノウハウを先に得ようとする姿勢は逆に成長を妨げてしまう可能性があります。
立派な大木をイメージしてみましょう。
揺るぎない木の幹の部分があって始めて沢山の枝や葉が身をつけます。先にお伝えした通り幹が細いうちにテクニックやノウハウを先に求めると枝や葉ばかりが大きくなり木自体が倒れてしまいます。これでは、本末転倒です。
そうならないためにも、木の幹の部分を内側からどんどん太くしていく意識が重要になります。幹を太くするにはどうしたらいいのでしょうか。
そのためには、伝えるから一歩深く入り込んで、相手が行動に移す「伝わる本質」の部分を学ぶことが大切になります。
センスがなくても話下手でも感動を巻き起こせるという事実
しかし、このことを伝えると「自分にはセンスがないから…」とおっしゃる方が、必ずいます。ですが安心して頂きたいです。
“伝わる”には、センスのありなしは全く関係がないと私は考えています。私が実際に体験したこんな例があります。
それは、ある結婚披露宴に参列した時のことでした。
新郎新婦のお色直し後の再入場が済むと、2名の友人スピーチが始まったのです。その2名は新郎新婦のキューピットとなった男性と女性でした。
まずは女性のスピーチからです。
女性は、人前で話すことに慣れているのでしょうか。笑顔で歩きながらマイクの前に立つとアナウンサーのようなきれいで流暢な言葉でお祝いを述べました。もちろん、彼女のスピーチが終わると拍手が沸きます。
そして次に男性の番です。
その男性は自分の名前が呼ばれると紙を手に持って席から高砂の横に向かいました。明らかに緊張してガチガチでナンバ歩きのようになっております。その時点で会場に緊張感が漂いました。
そしてその男性は、紙を前に出して手紙を読み始めたのですが手が震えてしまって全く読めないのです。震える紙と、産まれたての小鹿のように怯えた姿に会場がざわめきました。
彼は、一生懸命手紙を読もうとするのですが声が出ません。「がんばれー」という女性からの声も聞こえます。
その時です!
その男性は、「ちくしょう、ちくしょう!!」とマイクに向かって叫びました。そして会場がシーンとなると手紙を持った手を「ちくしょーーう!」という声と共に振り下ろしたのです。
そして、彼は別人のようになって自分の言葉で新郎新婦との思い出を語りました。
その話の途中です。彼は、新郎を見ました。すると新郎は目を赤くして涙をためています。その姿を見た男性は「お前が泣くのは反則だよ」といってゲストを無視して、背中をみせて涙を堪えているのです。
その間はずっと無言です。しかし、言葉がなくてもゲストは皆、その姿に目頭を熱くしました。
そして、彼は「本当におめでとう!」という実感がともなった言葉で締めると、割れんばかりの拍手が会場中を包んだのです。
拍手の熱量、ゲストの聴く姿勢、新郎の涙、どれをとっても感動の差は明らかでした。つまり彼の発する言葉は人の心を動かし、感動をもたらした、つまり伝わったのです。
彼は、話上手でしょうか?話下手でしょうか?
彼は、センスがあるのでしょうか?ないのでしょうか?
おそらく、話下手でセンスはないはずです。しかし、彼が会場中に感動をもたらしました。帰り際に、「あいつ、全部感動を持って行っちゃったな」とゲストが口々に話していたことが証明をしています。
【関連記事】→人前でうまく話すには、◯◯しないことです。
これがわかれば伝わる。3つの大原則
人前で話すことにより、その場にいる人の心を動かし(感動)士気をあげた、結婚式の彼のこの結果はビジネスシーンでも応用できます。
なぜなら経営者の社員向けのプレゼンテーションや営業マンの顧客向けのプレゼンなど、人前で話して、相手の心を動かし、成果をあげる場面は、ビジネスシーンでは多々あるからです。
そして、結婚式のスピーチから“伝わる”本質が、話が上手い・下手、センスのある・なしを超えていることもわかります。
ここでこの話下手の男性が会場中に感動を巻き起こしたことをヒントに伝わるための3大原則をまとめてみます。
3大原則その1:その場に存在する
人前で話して聞き手の心を動かすための、伝わる3大原則のひとつめは「その場に存在する」です。
私たちは、人前にたって自分の想いを相手に届ける場面や営業の場面でいざ顧客と向き合うと、「間違えたらどうしよう」「契約取れなかったらどうしよう」「バカと思われるのではないか」など自分都合の思考になりやすくなります。
この自分向きの思考は本来の目的からは外れています。必ずあなたがその場に存在する本来の理由があるはずです。本来の目的に立ち返ると、地に足がついてその場に存在することができます。
これが原則1のその場に存在するなのです。
結婚式のスピーチをした男性は、名前を呼ばれて手紙を読むまではその場に存在することができていませんでした。スピーチする理由が、「無事に速く終わらせたい」「緊張する」「失敗したらどうしよう」というものだったのです。
しかし、手紙を振り下ろしてからは、“新郎新婦を祝いにこの場に来た”、“ふたりの門出を祝う”、“ふたりに幸せになってほしい”というスタンスに明らかに変わりました。そのためその場に存在することができ、明らかに存在感がまし、ゲストを一瞬で惹きつけたのです。
これをプロの表現の世界の専門用語で”その場に居る”といいます。
プレゼンや商談でも応用が効きます。必ず本来の目的に立ち返るのです。話し方などのテクニックうんぬんではなく、その心構えが相手に伝わる大きな要因になるのです。
3大原則その2:捨てる
人前で話して聞き手の心を動かすための、伝わる3大原則のふたつめは「捨てる」です。
「よくみせよう」「うまくやろう」「カッコつけてやろう」
こういった自我や嘘を全て捨てることを意味します。人前で話すことに慣れている人などは特に気をつけなければならない原則でもあります。なぜなら人前で話すことに慣れたり、上手くなってきたりすると自我が出やすくなるからです。
出し切っていないプロよりも出し切っている素人の方がよっぽど感動するという言葉があります。まさにこのことです。アナウンサーのように格好良く流暢に話すことが“伝わる”事ではありません。
スピーチをした男性は自分をさらけ出したことにより、嘘がすべて消え、お祝いしたいという想いが溢れ出てきました。その姿にゲストが感動したのです。逆にカッコつけたり自分を盛ったり装ったりすると、まったく相手には伝わりません。ビジネスシーンのプレゼンなども同じです。
これをプロの表現の世界の専門用語で”捨てる”といいます。
3大原則その3:実感して語る
人前で話して聞き手の心を動かすための、伝わる3大原則のふたつめは「実感して語る」です。
実感とは嘘偽りのない真実の想いです。語るとは、余計な装飾や脚色を捨てて淡々と自分の持っている大切な情報や思いを届けることです。
このふたつをあわせて「実感して語る」といいます。
スピーチした彼は、手紙を間違えないように読むのではなく、新郎新婦へのお祝いの純粋な想いを実感して語っていました。この実感がポイントです。腹落ちしていて上辺でも嘘偽りでもなく言葉の奥に彼の純粋な祝福の想いが実感値としてこもっていました。ゲストの方の目頭が熱くなるのも当然です。
これを舞台専門用語では”言葉を実感して語る”といいます。
まとめ
いかがですか?
その1:その場に居る
その2:捨てる
その3:実感して語る
この3つが伝わるための大原則です。
彼は、おそらく意識などまったくしていないでしょうか、この人に“伝わる”3つの原則を素でやっていたから感動を巻き起こしたのです。
逆を言えば、この“伝わる”3つの原則を意識して日常でトレーニングをし、スピーチする経験を積んでいけば自然と“伝わる”力は身に付くはずです。この3つのポイントを意識して、あなたの“伝わる”力を向上させ成果に結びつけて頂ければこの上なく嬉しく思います。
プレゼンでも商談でもアポイントでもお客様の前で話して相手の心を動かすため、つまり”伝わる”ために、一歩踏み出す前にこの3原則に立ち返ってみてください。
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