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AI任せのエントリーシートES作成がいずれバレる理由
就職活動の現場では、AIを活用してエントリーシート(ES)を書く学生が急増しています。確かに、ChatGPTなどを使えば、それらしい文章を瞬時に生成できます。
しかし、実際に大手企業の人事担当者に話を聞くと、「AIに書かせたESはすぐにわかる」と口を揃えます。
なぜか?
それは“言葉に接地していない”からです。
──つまり、生成された言葉が本人の経験からくる実感に根ざしていないため、文章と人間が乖離してしまうのです。
特に対面で話した時にその差は歴然。人事はそこを鋭く見抜いています。
AIの力を借りること自体は悪ではありません。ただ、自分の体験や価値観が接地していない“借り物の言葉”だけでは、最終的に選考を突破することは難しいのです。
本記事では、人事がどのようにAI任せのエントリーシートESを見抜いているのか、そしてどのように自分の言葉を育てるべきかをお伝えします。
はじめまして、この記事を執筆した佐藤政樹と申します。劇団四季出身の研修講師として【受講生を惹きつけながら気づきと学びを促すことをモットー】に、日本のリーディングカンパニーをはじめ行政・金融機関・教育・医療機関などでさまざまな分野で講演を行っております。記事の内容をお読みいただき、もしご興味いただけましたら、ページ最下部のプロフィールや研修内容の詳細をご覧いただけますと幸いです。
実際に聞いた“人事の本音”─AI任せのエントリーシートESの特徴
先日、大手企業の人事採用担当の方と食事をご一緒する機会がありました。企業名はお伝えできませんが学生から非常に人気の有名企業です。
就活生の傾向や、入社までの内定者の教育について、ざっくばらんに意見を交わす中で、その方がふと口にした言葉に私は強く引き込まれました。
「AIで書いたエントリーシートは、いずれわかりますよ。」その方によると、AI任せのエントリーシートESには以下のような“特徴”があるのだそうです。
ChatGPTなどの生成AIは、言語的に“整った”文章を作るのが得意ですが、その反面、テンプレート的で個性がなく、他の学生と文言が酷似してしまうという特徴があります。耳障りのいい言葉ばかりが並び、どれも同じでその人らしさが感じられないのです。
それは良いとしましょう。
ただ、もっとも決定的なのは、エントリーシートESの中の言葉が、実際に対面で面接した際の発言とつながっていないこと。つまり、「AIが書いた文章」と「本人の内側から出てくる言葉」に明らかなギャップが生まれるのです。
人事部もバカではありませんので、その設計(ESの内容と実際の発言との乖離を図る仕組み)もしている、という話は納得でした。
ギャップが生まれるということがまさに冒頭に伝えた「言葉に接地されていない」ことであり、本人の体験や想いに裏打ちされていないため、薄っぺらく響いてしまいます。
他人の知見で書いた事前課題やエントリーシートESも“わかる”
もうひとつ面白い話がありました。
友人の知識を頼って作成された事前課題やエントリーシートESも、最終的には人事にはわかるそうです。これも対面で会った時の本人の内側から出てくる発言によってです。
決して、友人の知識を頼って作成したことが悪いことではなく「その学生の交友関係が広いかどうかを理解するための材料」という話はとても意外で、とても印象的でした。
AIに文章を作らせること自体が悪いわけではありません。問題は、「自分の軸」「経験に根ざした価値観」「言葉に対する実感」がないままAIに任せてしまうこと。そうなると、ESに書かれた内容がすべて借り物になり、結果として“中身が空っぽ”の印象を与えてしまいます。
さらに人事の方は、「生成AIが出力する文章を検証もせずにそのまま提出する行為は、情報リテラシーのない人間だということを証明してしまう」とも話していました。
AIはあくまでもアシスタントであり、代行業者のように、影武者のように使ってしまうと最終的に痛い目に遭います。
目先の壁を小手先で乗り越えても、次の壁は乗り越えることはできないのですね。
記号接地とは?
ここで見慣れない言葉である記号接地について確認してみましょう。
記号接地(symbol grounding)とは、簡単に言えば、
「言葉が、身体的な経験や感情、現実の世界に結びついている状態」のことです。
「努力しました」「挑戦しました」「成長しました」──
これらの言葉が、単なる美辞麗句ではなく、人事の心に刺さるかどうかは、“その言葉が本人の実感に根ざしているかどうか”で決まります。
就活のESでも“メロン問題”が起きている
AIにエントリーシートを書かせた文章は、しばしば「メロンを食べたことがない人が語るメロンの感想」のようになりがちです。
たとえばAIに「メロンの味を教えて」と聞けば、「甘くてジューシー」「とろけるような食感」「芳醇な香りが鼻に抜ける」といった、もっともらしい言葉を返してくれます。しかし、AIには実際に食べた記憶も、香りをかいだ経験も、舌で味わった感覚もメロンを食べた後の幸福感もありません。
それでも、それらしく“書けてしまう”のが生成AIです。だからこそ、表面上は整っていても、どこか空っぽで、読んだ人の心には届かない。
これは文章の上手い・下手の問題ではありません。
どれだけ美しい言葉を並べても、それが自分の体験や感情と結びついていない限り、人は“嘘のにおい”を直感的に感じ取ってしまうのです。
「実感のある言葉」こそ、最大の武器
あなたが本当にやってきたこと。
悔しかった経験。嬉しかった瞬間。心から納得できた出来事。
大切にしている価値観や信条。
その“身体感覚”や“記憶”が宿った言葉は、誰にも書けない、自分だけのエントリーシートになります。
そしてそれは、AIでは絶対に真似できない、人間だけの強みです。
だからこそ、AIを使うならなおさら、「自分の経験に根ざした言葉で肉付けすること」が大切。
文字に“あなた自身の価値観や人生”が宿っているか。──それが、人事が本当に見ているポイントなのです。
AIを“支え”として使いこなす学生の共通点とは?
では、AIを使うのがすべて悪なのか?──もちろんそんなことはありません。
むしろ、AIを「支援ツール」として賢く活用できる学生も、実際に一定数います。
彼らの共通点は、“自分の軸”があること。
たとえば、「自分はどんな経験をして、何を感じ、どんな価値観を持っているか」──そうした自己理解がしっかりしている人は、AIを補助的に使うことで、より明確に、より伝わりやすく、自分の考えを表現することができます。
杖の目的は“歩けるようにする”こと
AIの使い方で、よく似た話があります。
杖の目的は、自分の足で歩くのを支えることです。
でも、杖に体を預けすぎてしまえば、歩く力はどんどん失われてしまう。
本来必要なのは、「自分の足で歩く意志」を持ったうえでの、“正しい頼り方”なのです。
AIもまったく同じです。
AIにすべて任せてしまえば、自分の言葉は上滑りします。
しかし、自分の考えや経験をしっかり持ったうえで、それを伝えるための表現サポートとして使うのであれば、AIはとても頼もしいパートナーになります。
伝えたい想いや、自分の体験から得た学び。
まずは自分自身の中にある「実感できること」を掘り下げること。
それが就活における、最初で最大のスタートラインです。そのうえで、「どう伝えるか」「どの言葉を選ぶか」にAIの力を借りる。
この順序を守れる学生こそが、“AIを支援として活かせる人”であり、社会人になってからも情報ツールを正しく使いこなせる人材として評価されるのです。それを踏まえた上でAIの力を活用しましょう。

まとめ:AIは“杖”。本質は、自分の思考力と対話力
AIの登場によって、エントリーシートの作成が誰にでも“それっぽく”できる時代になりました。けれども、AIがいくら言葉を生成してくれても、そこに「自分」がいなければ、その言葉はただの空っぽな記号にすぎません。
大切なのは、何を書くかよりも、なぜそう思ったのか。
どう表現するかよりも、どう感じたのか。
つまり、“自分の頭で考える力”と“人と真摯に向き合う力”が、どんな時代でも変わらず求められる本質なのです。
企業の人事は、あなたの大切にする価値観や信念を、自分たちのビジョンやミッションに重ね合わせて、「この人と一緒に働けるか」「同じ船に乗る仲間になれるか」を見極めようとしています。
だからこそ、「借り物の言葉」ではなく、自分の実感を通じた“本音”がにじむ表現こそが、最大の武器になります。
AIは“自分の足で歩くのを支える杖”です。
必要なのは、「自分の足で歩く意志」を持ったうえでの、“正しい頼り方”なのです。
就活も同じです。自分自身の言葉で、自分の軸を語れる人だけが、本当の意味で評価され、納得され、信頼される。
繰り返しますがAIの力を借りることは悪ではありません。ただし、主導権を握るのは、常にあなた自身であるべきです。
「あなたは、あなた自身のことを、あなたの言葉で語れますか?」そこに、AIには決して踏み込めない、人間だけの“強さ”があります。
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