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講演、研修、プレゼンテーション……
いざステージや教壇に立ち、入念に準備した本題を話し始めたものの
「なんだか聴衆の反応が鈍い」
「うなずきが少なく、目が合わない」
と感じた経験はありませんか?
どれほど価値のある情報や素晴らしいノウハウを用意していても、初対面という状況下では、話し手と聴き手の間に目に見えない分厚い壁が存在しています。
この壁がある状態では、想いを熱く語っても、言葉は聴衆の心の奥底まではなかなか届きません。
情報を受け取る前の「心の準備」ができていないからです。
「そうは言っても、初対面の人たちをいきなり笑わせるなんてハードルが高い」
「気の利いたアイスブレイクのネタなんて、そう簡単に思いつかないよ……」
こう思う方も多いことでしょう。
特に、真面目で誠実な話し手であるほど、早く有益な情報を伝えなければと焦り、いきなり本題に入ってしまいがちです。
しかし、その壁を取り払う方法は、実はとてもシンプルです。
それは、本題に入る前のほんの数分間、あなたの人間味が伝わる「雑談」を挟むこと。
特に、その土地に紐づいた「ご当地ネタ」を交えて関係性(ラポール)を築くことが、プロとして最も効果的で確実な解決策なのです。
はじめまして、この記事を執筆した佐藤政樹と申します。劇団四季出身の研修講師として【受講生を惹きつけながら気づきと学びを促すことをモットー】に、接客・接遇研修をはじめ行政・飲食・アパレル・医療機関などでさまざまな研修を行っております。記事の内容をお読みいただき、もしご興味いただけましたら、ページ最下部のプロフィールや研修内容の詳細をご覧いただけますと幸いです。
トッププロが実践する「カスタマイズ」の精神
この「目の前の相手に合わせて場を作る」という極意について、私に大きな気づきを与えてくれたのは、お笑いコンビ「テツandトモ」さんの記事でした。
彼らは2003年にブレイクし、流行語大賞に選ばれました。
一般的に流行語大賞を受賞した芸人は一発屋で終わると言われがちですが、彼らはその定説を見事に覆し、現在も全国各地を駆け回り、多忙な日々を送っています。
なぜ彼らが全国の企業や自治体のイベントでこれほどまでに呼ばれ続けるのか。
その理由は、彼らのステージがお客さんによって「カスタマイズ」されている点にあります。
一般的なお笑い芸人の地方営業が、決まった定番のコントを披露して終わるのに対し、テツandトモさんは「自分たちのネタを純粋に楽しんでもらう」ことを最大の目標として掲げています。
15分や30分という限られたステージ時間の中で、単にパッケージ化されたネタを押し付けるのではなく、目の前のお客さんの層や状況に合わせて柔軟に内容を変化させているのです。
この「相手に合わせてカスタマイズする」という姿勢こそ、人前で話す私たちに最も必要なマインドです。
全国どこに行っても全く同じ台本を一言一句違わず話すのではなく、その日、その場所に集まってくれた人たちのために、特別な「入り口」を用意する。
それこそが、プロフェッショナルとしての誠意であり、聴衆の心を開く鍵なのです。
ご当地グルメがもたらす魔法のラポール
私はこの記事に出会ってから、自身の講演や研修のスタイルを大きく見直しました。
全国各地へ赴く際、以前はただスケジュール通りに会場に入り、与えられた役割をこなすだけになりがちでした。
しかし今では、聴衆とのラポール(信頼関係)づくりを何よりも大切に考え、可能な限り前泊をして、その土地ならではの「ご当地グルメや文化の体感」を肌で味わうようにしています。
そして、そこで得た感動や体験を、講演の冒頭の「雑談ネタ」として語るのです。
この効果は絶大です。
本番のステージ上だけでなく、登壇前の主催者や担当者との打ち合わせの場でも大きな威力を発揮します。
名刺交換の直後に「昨晩到着して、ご当地の食事をいただいたのですが、本当に美味しくて感動しました!」と伝えるだけで、担当者の方の表情がパッと明るくなり、一気に距離が縮まります。
自分が暮らす街や文化の魅力に共感してくれる話し手に対して、人は無意識のうちに「この人は自分たちに寄り添ってくれている」という安心感を抱くのです。
20年越しの憧れ。「神戸牛」が繋いだ心の架け橋
この「ご当地グルメ雑談」がいかに強力な武器になるか、つい昨日、神戸で行われた講演会でのエピソードをご紹介しましょう。
昨日の神戸での研修の機会。私は兼ねてからの念願だった「神戸牛」を食べることを決意していました。
私にとって、神戸牛はただの高級食材ではなく、非常に深い思い入れのある特別な存在だったからです。
その思い入れの原点は、アメリカの伝説的なバスケットボール選手、コービー・ブライアントに遡ります。
実は彼の「コービー」という名前は、彼の父親が神戸牛を食べてあまりにも美味しかったことに感動し、そこから名付けたというエピソードから始まります。このエピソードを知って以来、私はずっと「本場の神戸牛を食べてみたい」と憧れを抱いていました。
また、私のキャリアの原点でもある劇団四季時代。公演で神戸を訪れる機会は何度もありました。
その度に「今日こそは神戸牛を食べてみたい」と思ったものです。しかし、当時の私にとって神戸牛の値段はやはりかなり高く、食べることは叶いませんでした。
そして最近になり、かつてヴィッセル神戸に在籍していたイニエスタ選手が、Instagramで神戸牛を美味しそうに堪能している投稿を目にしました。それを見た瞬間、心の奥底に眠っていた「いつか必ず見てみたい、食べてみたい」という思いが再燃したのです。
そのタイミングで今回の神戸での研修は、まさにその夢を叶える絶好のチャンスでした。主催者や聞いてる方との関係性を築けるように、また自分自身の経験としてもとてもいい機会ではないかと思ったんです。
そして、ついに実食。一口食べた瞬間、長年の思いが報われるような感動に包まれました。(ただ、お会計の時にサービス料がかなり高かったので驚いてしまったのは、ここだけの笑い話ですが!)

「完璧な講師」を捨て、「一人の人間」として語る
研修の始めに、私はこの神戸牛にまつわる思い出の話、そしてついに夢を叶えた話を雑談としてお話ししました。
結果は、想像以上でした。
主催者の方との会話が弾んだのはもちろんのこと、聴衆の皆さんも自分の地元を、講師の「I LOVE 神戸&神戸牛」に大変喜んでくださり、見違えるように表情が柔らかくなったのです。会場全体に温かい空気が生まれ、「この人は、私たちの地元を気に入ってくれているんだ」という共感が広がりました。
この雑談という「地ならし」があったおかげで、その後の研修も素晴らしい関係性のなかで進めることができました。
人前で話す時、私たちはつい「完璧な専門家」を演じようとしてしまいます。
しかし、聴衆が本当に心を開くのは、完璧なロボットのような話し手ではなく、憧れや挫折、そして少しのユーモアを持つ「人間味あふれる話し手」です。
テツandトモさんが目の前のお客さんのためにステージをカスタマイズするように、私たちもまた、目の前の聴衆のために話題をカスタマイズする必要があります。
その土地の食事に感動したという個人的な体験を自己開示することは、「私は皆さんに関心を持っています」という最強のメッセージとなります。

雑談は、最高のプレゼント
ぜひ、次に出張先などでお客様と話す際や登壇する機会があれば、前泊などをしてその土地の味覚を楽しんでみてください。
そこで感じたあなたの素直な感動を、冒頭の数分間で聴衆にプレゼントするのです。初対面の緊張感という分厚い壁は、あなたの温かい雑談によってあっという間に溶け去り、強固なラポールへと変わるはずです。
本題をしっかりと届けるための「魔法の雑談」、ぜひ次のステージから取り入れてみてください。
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