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■講義中にこんな不安になる事ありません?
セミナーや研修を受けに来る受講生には様々なタイプがいます。
何を言っても好反応でみんながウンウン頷いてくれている。こんな空気感が溢れているような場合は講師にとってとてもやりやすく、口から言葉が勝手に出てくるような状態になっていくものですよね。
しかし
「命令されてイヤイヤ研修を受けに来ているのだろうか?」
「内容が全く響いていないのだろうか?」
「私の話がつまらないのだろうか?」
講師をしていれば、講義をしながらこんな風に感じてしまうほどの殺伐とした雰囲気の中でセミナーや研修をやる時が必ずやってきます。
そんな時、講師はどう対応したらいいと思いますか??
■一番前にPPAPピコ太郎さん風の方が・・・
私は、劇団四季という舞台の世界で主役まで上り詰めた後、教育の道をこころざし、紆余曲折を経て現在は日本全国の企業や教育機関で講演や研修をしています。
劇団四季という舞台の世界では、観客は異常なほどに好反応ですので(もともと完成された舞台にお客様がお金を払って楽しみに来ているため)、それが常識になっていた私は、研修やセミナーの独特の雰囲気に馴染むのにとても苦労をしました。
特に企業に行く場合、組織によって全く反応が無い、ということもあるのです。
先日はこんな組織で120分の講演をしました。
年齢は40~60歳くらいで99%が男性。一番前にはPPAPピコ太郎さんのような髪型の方もいらっしゃいました。講演開始前のセッティングの時に、全員が無言でお弁当を食べながら私をチラチラ見て物色している雰囲気に呑まれて正直萎縮してしまいました。
過去最強のアウェイ感だったのです・・・。
しかし、このような雰囲気での研修を数多く乗り越えてきた今、わかったことがたくさんあります。
この記事では、反応が薄い、もしくは表情一つ変えず無反応な重い雰囲気でセミナーや講演をする時に必要な、私が培ってきた心構えや方法論をお伝えしていきます。
*写真はイメージです。
■知らない人同士が集まる会は注意要
こんなアウェイで数々の講演をしてきた経験則として感じる事があります。例え同じ組織でも、知らない人・話した事がない人・始めて会う人が集まる会というのは、反応が薄くなる可能性が高くなるのです。
例えば、各営業所や支店から代表して一人ないし数人で来ている場合です。
全国から集まっている場合はなおさらです。周りを警戒します。ここは安心な場所だろうか?話しをしていいところなのだろうか?このような空気感に溢れています。
こういう時は反応が極端に薄くなるという心の準備をしておく事をお勧めします。始まってから動揺しないためです。
逆に、同じ営業所同士で普段からコミュニケーションを取れている受講生の場合は、初めから空気感が面白いほど違います。
受講生の参加経緯や理由を主催者に聞けば、情報は得られます。必ず調べて心を備えておきましょう。
■あたたかい空気づくりを自らする
そんなアウェイ感が出そうな時は、私は“ここは安心な空間なんですよ”という空気作りを心がけます。
心地よいリラックスBGMを研修開始前に流すようにしています。
もし自分が登壇する前に誰かのスピーチや講師の紹介などある場合でも、私は許可を得て音楽を流させてもらいます。そして、音を自分で下げることができない時は、スタッフの方にボリュームボタンを絞ってもらいます。
先日の研修では、これをやるだけであたたかい空気感に主催者の方が安心されていました。「なにがはじまるのだろう?となんだかワクワクしますね」こんな風に言ってくださった人事の方もいらっしゃいました。
無音で無言の空気の中、研修がスタートするのとは大きな違いが出ます。
しっかりと意義を主催者に伝え、音楽を流させてもらいましょう。私は断られたことは今のところないです。
■研修への喚起の大切さ(つかみ)
受講生の置かれている状況は様々です。一人一人違うことでしょう。
プライベートで心配事がある
今月達成できるかできないかの瀬戸際である
上司に行けと言われたから来ているだけ
ですから、研修や講演ではつかみが大切です。職場や日常から意識を引き離し、いまこの場に集中してもらう必要があります。
このつかみについては以下のに記事にしてコンテンツとしてまとめてありますので熟読してください。
→満足度の高い研修・セミナーをする上で大切な”構成”と “つかみ”づくりの7つのポイント
■セミナー・講演でディスカッション(シェア)を入れる場合は繊細に
「では今のところで自分が思ったこと感じたことをお隣の方と意見交換してみてください」
半日や1日の研修ではこのようにディスカッションを促し、他の受講生に自分の意見を発信し他の意見を聞くことにより新しい発見をしたり自分の記憶に落とし込ませたりします。
しかし、1時間半程度のセミナーや講演の場合は違います。私も極めて消極的で感情を表に出さない受講生が集まった講演でいつも通りディスカッションを進めたことにより、崩壊気味になったことがあります。
ある程度時間をかけて進める研修と違って、1時間〜2時間の講演ではディスカッションを入れるとやらされている感が満載になることもあります。
そこまではなんとか集中力を保っていたのですが、ある瞬間にディスカッションを促し能動的なことをさせたことにより聞く意識のタガが一気に外れ、ふざけ始める人がで始めるという経験をしました。
受講生のタイプや雰囲気を読み違えると、研修を受け続けることに拒絶感が生まれることがあります。
ですから、アイスブレークなどのない状況だったり、会場が十分に温まっていない場合、無理やり能動的な事もやらせないようにしましょう。
私が何度も試して、一番効果があったのはこの進め方です。
「意見交換してください」このようにいきなりディスカッションを促すのではなく、その前に1分程度考える時間を作るのです。
「今までの話の中で、なにか発見になったことはありましたか?気づいたことはありましたか?仲間に伝えたいと思ったことはありましたか?そこが新しい価値です。ぜひ忘れないように、頭の中を整理してまとめてみましょう。」
そして、ここでうまく想像力がうまれやすい音楽をかけます。
考えて頭の中で整理できると人に話したくなる人もいます。そこから繊細にタイミングと空気感を読み、その音楽を流し続けながらこう言うのです。
「せっかくなので自分が気づいたこと感じたことをお隣の方に伝えて頂いても構いませんよ。ご自由にお話しください。」
このアプローチは、講師をする側もとても良いです。みんな話したくなってから話し始めますので、場の空気もよくなります。
最初にお伝えしましたが、全国から集まるような知らない人同士の場は、周りを警戒してか、無反応のパターンが多いです。
そのような場合「ここは話してもいい場なんだ。安全な場なんだ。」という空気をどんなに作り出しても、意見の発言などを突然させると場がほぐれるどころか逆効果なことがあります。考えてまとめる時間を繊細に入れましょう。
(シンキングタイム中に空気が悪くならないように音楽を忘れずに。私はスピーカーを必ず研修会場に持参しております。)
*写真はイメージです。
■受講生は講師が言ったことを自分ごとに変換できるとは限らない!
講師をしていると、ついつい陥りがちなのが、「講義内容を受講生が自分ごととして、捉えて学んでくれている」 といつのまにか勝手に思い込んでしまうことです。
例えば、営業力の研修で、私の営業経験やそこから生み出されたアイデアをお話します。私の経験をお話することで、自分と同じような状況をイメージして「気づき」を得てもらいたいと思っているからです。
経営者や教える立場にいる方は、人の話を聞いて”この話は自分の課題や問題を解決するための要素だ”と解釈して直接的に言わない部分まで気づきを得ることが多いと思います。
そのため、他の人もそれが当たり前と思ってしまうのです。
しかし、誰もが人の話を自分ごとに変換できるとは限りません。というか、むしろできる人は少ないのです。
そのためには
「体験→気づき→セオリー(理論)→現場に落とし込み」
というロジックは効果的です。
例えば、挨拶を例に考えていくとこのようになります。
(体験)舞台の世界は挨拶が大切でした。挨拶ができない人は舞台本番での演技にも影響していました。
(気づき)舞台でもビジネスでも挨拶というのは、コミュニケーションの基本だと思いました。
(理論)ただ発言するのが挨拶ではありません。心を込めて言葉を届けるのが真の挨拶です。
(現場への落とし込み)皆さんも、朝の職場の挨拶が形骸化していませんか?目をみて、挨拶できていますか? 心を込めた挨拶をすることで営業でも好感度アップしますし、チームの連携も高まりますよ。
などというように、繊細にこのロジックで進めるといいでしょう。
■声を張る
マイクに頼らず、声を張っていきましょう。
声はエネルギーです。しっかりした発声によって人の集中力を呼び起こし喚起することもできます。
私はボランティアで中高生向けのチームビルディング研修を行っています。その際、最も重要なのは声です。
声が弱い他の講師の担当クラスは崩壊していることがまれにあります。
その子供向けのチームビルディング研修では、声を張ることによってたくさんの子供を1日中集中させてきました。私は劇団四季時代に子供向けのミュージカルで子供を2時間惹きつけてきましたので、ここは百戦錬磨の得意分野でもあります笑。
声は、反応の薄い受動的な受講生を巻き込んでいく重要な要素です。
正しい発声方法もしっかりと身につけましょう。
■テンポ感を意識する
同じテンポでだらだら進めると、絶対に集中力が持ちません。「まだ終わらないのかな?」という思考になってきます。人間が集中力を保てる時間というのには限りがあります。
必ずいいテンポ感を意識しましょう。
ミュージカル「ライオンキング」がロングヒットしている一因もここにあります。舞台装置やシーン変換のテンポ感をディズニーは徹底的にこだわっています。観客が息をつく暇がないのです。
ディスカッションも同じです。もっと話す時間を用意して欲しいと主催者や人事の方から言われてもしっかりと意義を伝えましょう。
だらだらディスカッションをして自分の意見を言い切るとその人は満足して集中力が低下します。
私はディスカッションの際、90秒のアップテンポの曲を用意し、残り15秒のアナウンスをした後に徐々に音量を上げて時間がきたら「はい、みなさんありがとうございました!」と区切ります。
これくらいが一番いいのです。
■無反応&無表情に打ち勝てるマインドとは?
私は舞台の世界から、講演や研修の講師をする側に転身しましたので、初めにお伝えした通り、無表情で無反応な受講生に対してなかなか対応ができませんでした。心が折れそうになり、途中で帰りたくなったこともありました。
しかし私の講師トレーニングをしてくれてきた仲間が私に言ってくれた言葉が、私の講師としての重圧を解放し、私を強くしました。
その言葉を紹介します。
「佐藤さん、自分の話をしっかりと集中して聞かなければいけない、という妄想と思い込みを捨てるのですよ。
無反応な人・寝ている人がいても、壁に向かってスカッシュを打つように、受講生の好反応を期待せずに淡々と進めることも大切です。
人には熟考するのが好きな人や積極的な人、内向的な人などいろいろなタイプの人がいる。無表情で無反応でも本人の心の奥では響いていることもある。自分の好みを押し付けてはいけないのです。」
この言葉を頂いてから、私の心は解放されてどんなタイプの受講生でも自分自身が楽しめるようになったと実感しています。
逆を言うと、もしあなたが「完全アウェイ&閉塞感が漂っている現場」で、心が折れそうになった時に自分を勇気付けてくれる言葉でもあります。
最後は全員前のめり。(写真はイメージです)
■終わった後の受講生の反応
完全アウェイで閉塞感が漂っていた現場で、こんなことがありました。
講義をするこちらの目にどうしても入ってしまい、気になってしまった無表情かつ無反応であまりいい雰囲気を出していない受講生の方が、研修後に嬉しそうな表情で私のところに来て「一緒に写真を撮って欲しい」と言ってくれたのです。質問攻めにもあいました。
別の現場では、講義中は全く反応がなかったものの、質疑応答の時間になったら受講生が積極的になり質問が止まらなくなったこともありました。
やはり、講師が感じる受講生に対する解釈と、実際とは相違があるということを実感しました。
この記事を読んだあなたは、人材育成の現場に身を置かれていることと思います。
現場では、もっと対応が難しい受講生がいるかもしれません。この記事では書ききれない自己表現の方法論についても様々なコンテンツを持っておりますので、なにか質問がある方はお問い合わせください。
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