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なぜ人は緊張するのか?ビジネスパーソンの悩みに答えます
「プレゼンでガチガチになってしまう…」
「大事な場面で声が震えて頭が真っ白になる」
「伝えたいことがあったのに、結局うまく話せなかった」
こんな経験、あなたにもありませんか?
多くのビジネスパーソンにとって、人前での緊張は避けがたい悩みです。実際、ある調査では約85%もの人が自分を「緊張しやすいタイプ」だと感じていることが報告されています。プレゼンや会議、初対面の場などでガチガチになってしまうのは、あなただけではありません。
ですが、あがり症は決して才能やセンスの問題ではありません。緊張するのは生理的に当然の反応ですが、そのままでは本来の実力を発揮できませんよね。
そこで緊張やあがり症の克服で注目したいのが「身体からのアプローチ」です。中でも、緊張に打ち勝つカギのひとつは「声」、つまり発声の意識と方法にあります。
声の出し方を変えるだけで、不思議と気持ちが落ち着き、自信が湧いてくる――これは、かつて極度のあがり症だった私自身が、劇団四季の舞台を踏むなかで実感してきたことでもあります。
この記事では、発声練習があがり症や緊張を緩和する5つの理由を、具体的な根拠とともに解説します。緊張に悩むビジネスパーソンの皆さんが、声を味方にして堂々と人前に立てるようになるヒントになれば幸いです。
この記事を書いた人:佐藤政樹(研修講師・著者)
劇団四季出身元主役の講師。「人を惹きつける話し方」(プレジデント社)著者。受講生を惹きつけながら“気づき”と“学び”を引き出す研修をモットーに、新入社員研修から行政・金融・教育・医療分野まで幅広く登壇。詳しくはページ下部のプロフィール・研修情報をご覧ください。
発声練習があがり症や緊張を緩和する5つの理由【プロの実感】
「声を整えるだけで、ここまで変わるのか――」
これは、私自身が舞台の現場で何度も感じてきた驚きです。発声練習は、単に声を出すトレーニングではありません。“緊張に強い自分”をつくるための実践的な方法なのです。
では、なぜ発声が緊張を和らげるのか?
その理由を、私自身の経験と科学的な根拠をもとに、5つの視点からわかりやすくご紹介します。
1.自己表現の基礎が身につき、不安が消える
人前に立つとガチガチに緊張してしまう――。
その原因のひとつは、その場で「自分をどう表現すればいいのか分からない」状態に陥っていることです。
これまで自己表現の経験があまりないと、いざ本番の場面で戸惑ってしまう。どう振る舞えばいいかわからず、状況に呑まれて、声が震えたりパニックになったりするのはそのためです。
そこでまず最初に役立つのが、発声練習による“自己表現の土台づくり”です。
「声を出すこと」は、自己表現の第一歩。実際、舞台俳優やお笑い芸人、テレビタレントなど、人前で活躍するプロたちは、必ず発声練習からスタートします。
私自身、ある著名な女性タレントが、Tシャツにジャージ姿で首にタオルを巻いて汗を流しながら懸命に発声練習している姿を間近で見たことがあります。華やかなステージの裏では、それほどまでに「声の土台づくり」が自己表現のうえで大切にされているのです。
この声の土台がしっかりしてくると、自然と「自分の中に表現の軸」が生まれてきます。内側から外側へ、自分の意思や感情を届ける感覚が少しずつ育ち、「あ、これが自己表現なんだ」と体感できるようになります。すると、これまで感じていた不安や緊張が、徐々に和らいでいくのです。
一方で、どれだけ身体能力に優れたアスリートでも、人前で話すと急に別人のように固まってしまうことがあります。それは、身体の表現力はあっても、人前で“自分を声を使って表現する”土台ができていないからです。
発声のトレーニングは、単なる声出しではありません。「自分をどう外に出すか」という自己表現の軸を育てる行為です。この軸が通ることで、「伝えられる自分」への手応えが生まれ、過剰な緊張は少しずつ静まっていくのです。
2.「インサイドアウト」の感覚が養われる
発声練習を通じて身につくもう一つの効果は、「インサイドアウト」(内から外へ)の意識です。緊張しやすい人は周囲の視線や評価、雰囲気といった外部要因に影響されがちです(いわゆる“他人軸”の状態)。
しかし、声を出すトレーニングを重ねると、自分の内側から声を響かせる感覚=内側から外へと働きかける感覚が芽生えてきます。これは心理学でいう「インサイドアウト」の姿勢と通じるものがあります。
つまり、周りにどう思われるかではなく自分の内面に集中することで、心が安定してブレにくくなるのです。「声」はまさに自分の内面を反映する道具です。発声練習で自分の声が変わり堂々と良質な声を出せるようになると、不思議と他人の反応が気にならなくなります。
周囲に飲み込まれるのではなく自分の声で場を制する感覚が掴めるでしょう。私は大勢の前で話す際に、このインサイドアウトの感覚を幾度となく経験しています。
これが緊張に呑まれない大きな助けになるのです。

3.声が変わると自信がつく
声の質が変化すると、驚くほど自信が高まることも見逃せません。
発声の基礎を学んでいく過程で、姿勢や呼吸法など身体の使い方も改善され、まるで自分の体が楽器のように全身が共鳴する感覚を得られます。
実際、声を磨くことで「自分に自信がつき、表現力が上がる」という声もあります。
発声トレーニングを続けていくと、「今、声がよく前に飛んだ!」「はきはき話せた!」という体験を積み重ねることになります。
こうした体感の積み重ねが自己効力感(自分はできるという感覚)をどんどん高め、結果的に大きな自信につながります。
その自信こそが、人前でも堂々と話す力の源になるのです。
4.呼吸が整うと心が整う
発声と呼吸は、常にセットです。良質な声を出すには、ただ喉から声を出すのではなく、深く長い呼吸をコントロールすることが欠かせません。
発声練習を通じて、この「深い呼吸のポジション」を掴めるようになると、緊張時でも呼吸が浅くなったり上ずったりするのを防げます。
実際、私が直接知っているある有名な歌手はこう語っていました。
「本番前にどんなにあがっていても、一度“深い呼吸のポジション”を掴めば、息はもう上ずらない。だからこそ、深いポジションを知ることが大切なんです。」
また、声を出すときは、息を前に長く流す「ロングブレス」の状態になります。この「息を長く流す」こと自体が、悪い緊張を良い緊張へと切り替えるスイッチになるのです。
悪い緊張とは、頭が真っ白になり、体がガチガチに固まってしまうような状態。一方、良い緊張とは、集中力が研ぎ澄まされ、潜在的な力が引き出されるような状態。
私が劇団四季に在籍していた頃は、何度もこう教えられました。「良い緊張は、最高のパフォーマンスを生み出す源になる」と。
発声練習で深い呼吸法が身につけば、本番前にスッとひと呼吸入れるだけで、過度な緊張を落ち着かせ、悪い緊張を良い緊張へと変えることができるようになります。
そして、深い呼吸で声を出している状態そのものが、心の安定感を支えてくれるのです。
5.集中力と頭の回転が驚くほど上がる
意外かもしれませんが、発声=呼吸法を鍛えることは脳のパフォーマンス向上にもつながります。
声を出すための深い呼吸は脳に良い刺激を与え、萎縮どころか活性化を促す効果があるのです。
名古屋大学の石田浩司教授は、著書『呼吸の科学』の中でこう述べています。「深くゆっくりとした呼吸は、脳の前頭前野という“思考の司令塔”を活性化させる」と。
この「前頭前野」は、注意力・判断力・集中力・記憶力といった、いわば“頭の回転”を担う場所。そこがしっかり働けば、プレゼン中に話す内容が想定外にパッと出てくる/会話の引き出しが広がるといった変化が起こってくるのです。
呼吸のリズムが脳波(思考のスピードに関係する波)と連動され記憶力や反応速度が高まる傾向があることが確認されているそうです。つまり、呼吸が整えば、頭の回転も整う。
生理学的にも、呼吸によって脳への酸素供給が最適化されるので深く安定した呼吸をすれば、酸素がしっかり脳に届き、血流もスムーズになる──これが、集中力やパフォーマンスに直結するのですね。
この感覚はプロとして活動してきた私は何度も感じています。発声練習をすると頭が明らかにクリアになるのです。
このように、発声練習は、ただ声をよくするだけではありません。プレゼン中の集中力・記憶力・判断力までも引き上げてくれるのです。

実践しよう!初心者でもできる簡単な発声練習とは?
ここまで発声練習の効果を見てきましたが、「で、具体的には何をすればいいの?」という方のために、簡単に始められるエクササイズをご紹介します。
まずは、1日たった3分でOKです。
発声練習のファーストステップは「ロングブレス」──つまり、長く安定した息で声を出す練習です。
① 姿勢と呼吸を整える
まずは骨盤を立て、背筋を軽く伸ばして立つ(または座る)姿勢をとりましょう。肩の力を抜いて、リラックスした状態をつくることが大切です。
そして最初に行うのは、「息を吐ききること」。もうこれ以上吐けないというところまで息を吐いたら、全身を脱力します。すると自然に、お腹に空気が「入ってくる」感覚が得られるはずです。
呼吸とは、「吸うこと」ではなく、まず吐ききること。そして腹底に“取り込む”感覚を掴むことが基本です。
② ロングブレス発声をしてみよう
姿勢と呼吸が整ったら、次は「ロングブレス発声」です。
取り込んだ息を、お腹の底から細く長く吐き出すようにしながら声を出します。
おすすめの練習は、英語の「Sing」の“Si”を使って、
「Siiiiiiiiiiiiiiーーーーーng」
とできるだけ小さく、長く、一定の音量で発声してみてください。
息を吐ききったら、一度息継ぎをして、何度か繰り返しましょう。
ポイントは、
声をお腹から押し出すこと
声を小さくすることで息のコントロール力を高めること
喉まわりは力まず、完全に脱力すること
この練習によって、呼吸をコントロールしながら声帯も鍛えられ、芯のある通った声がつくられていきます。
③ 声は“息の流れ”に乗せて運ぶもの
私たちが普段話しているとき、声は「息の流れ」の上に乗って発せられています。このロングブレスの練習を重ねることで、声の土台となる呼吸のラインが整い、芯の通った、ブレにくい声が育っていくのです。
この練習は、毎日たった3分でも構いません。
朝の出勤前、昼休み、人に聞かれない場所で軽くやってみてください。
深い呼吸と発声で体が目覚め、声が出しやすくなるのを実感できるはずです。
発声練習は「短くても継続」が大切。
無理せず毎日続ければ、必ず効果が積み重なっていきます。
ぜひ、今日から始めてみてください。
【参考動画セミナー】
文章だけではわかりづらい部分もあるかもしれません。そんな方のために、今回ご紹介した発声練習のポイントを実演付きで解説する動画セミナーをご用意しました。
声の出し方、呼吸の流し方、姿勢の整え方など、実際に目で見て体感しながら学ぶことで、より深く理解できるはずです。ぜひご活用ください。
まとめ:声を整えることは、自分を整えること
声は、心と身体をつなぐ“架け橋”です。そしてその声を整えることは、自分自身を整えることにもつながっていきます。
あがり症や過度な緊張に悩んでいると、私たちはつい「もっと気持ちを強く持とう」「考え方を変えなくちゃ」と、心ばかりを何とかしようとしてしまいます。でも、身体からのアプローチ──とくに“声”に意識を向けることで、心はぐっとラクになるのです。
私自身、かつては極度のあがり症でした。でも、劇団四季でプロの発声法と出会い、声を通して自分を表現する土台」を築いたことで人前に立てるようになりました。
その変化の原点は、ただ「声の出し方を変えた」だけなのに、呼吸が深まり、心が整い、自信が湧いてきたことにあります。
今回ご紹介したように、発声練習がもたらす変化は、単なる緊張の緩和にとどまりません。
・自分をどう出せばいいのかがわかり、不安がやわらぐ
・周囲に左右されない“内側からの声”で、心がブレなくなる
・声の変化を通して、確かな自信が育っていく
・深い呼吸が整い、心の安定が生まれる
・脳の働きまで活性化し、集中力や判断力が高まる
そして何より、声を出すことそのものが、あなた自身の“軸”を育ててくれるのです。
人前で話すとき「また緊張してしまうかも…」と不安になる方こそ、まずは今日から深く息を吸い、声を出すことから始めてみてください。
発声は、誰もが持っている最高のセルフマネジメントツールです。堂々と、自分らしい声で話せる自分を、ぜひ発声練習を通じて手に入れてください。
きっと、明日のプレゼンや会議でも、落ち着いた、力強いあなたの声が、背中を押してくれるはずです。声を整え、自分を整えて、緊張に打ち勝つ一歩を踏み出しましょう。
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