■閉塞感がチームにもたらす影響とは
様々な原因によりチームに閉塞感が漂ってしまうことはよくあります。チーム全体の閉塞感は、チームの動きを停滞させ、社員同士のコミュニケーション機会も減少させてしまい、モチベーションの低下にもつながりかねません。
もしチームに閉塞感が漂っているのでしたら、これを放置することが一番の問題です。
■感動する心を大切にしてみる
モチベーションを低下させる閉塞感を打ち破ることのできる、感動”が生み出すエネルギーについてここで触れてみたいと思います。
私は舞台ライオンキングに出演しておりました。ライオンキングは、年間300公演という過酷なスケジュールに加え、舞台上では動物役を演じるための重い道具を背負って表現しなければならないシーンが多々ありました。
身体への負担が大きく、かなりの疲労が身体に蓄積されていきます。疲労が蓄積されてくるとあきらかに、チーム全体に重たい空気が漂います。それによりメンバーも表情が暗くなってくることは多々ありました。
舞台という仕事は、チームのエネルギーの低下が観客の満足度に直結してくる仕事ですのでこのままでは大変な問題です。
こんな時に、チームの閉塞感を打ち破るのがリーダーの腕の見せどころです。素晴らしいリーダーは、指示命令をして鼓舞するのではなく、チーム全体の士気をあげるために、さまざまな言葉をメンバーに投げかけます。
笑顔で元気を与えたり、言葉によって激励することなどもありましたが、どうも一過性に過ぎなかったように思えます。
しかし、あきらかにチームの意識が変わり、発しているエネルギーが変わったというリーダーの言葉がありました。
それがリーダーが開演前のミーティングで言ったこの言葉です。
「無感動は疲労の蓄積。感動すれば発散。一瞬一瞬を感動して味わおう。」
この一言でチームの雰囲気は一変しました。チーム全員の眼が輝いたのです。その説得性のある言葉に、メンバー一人ひとりが自発的に感動し舞台空間におけるエネルギーが明らかに変わったように感じました。
「チームに一体感」が生まれた瞬間でした。
■感動している時、脳内では何が起きているか?
この“感動する力”は不思議な力があります。閉塞感が漂ったチームの雰囲気を一瞬で変えてしまいます。この不思議なエネルギーを持つ感動力が起きている際、人間の脳や身体の中ではどんなことが起きるのでしょうか?
この“感動”をテーマに言語コミュニケーションにおける脳の働きに精通されている方がいます。明治大学法学部教授の堀田秀吾教授です。堀田教授はご著書の中でこんなことを言っています。
『漫画を読むなど、外部からの影響による感動は、脳の中で「ミラーニューロン」という神経細胞が働いている。ミラーニューロンは、「他人の動作や感情を真似する」働きがあり、これにより人は共感したり感情移入をする。つまり、漫画の中の主人公が楽しそうなら楽しくなり、涙を流すともらい泣きする。』
これに対し、人が内発的に感動して奮起した時は、脳の中で「大脳新皮質」という部分が働いているそうです。
『大脳新皮質はその情報を、自分自身の記憶、経験、知識、ありとあらゆる情報と結び付けて感じ取る。大脳新皮質が働いた時の感動は、その人の人生を総動員して感じる力が大きくかかわっている』
モチベーションが落ちた時に、人から元気や激励の言葉を頼りにしてもモチベーションは一過性になってしまいます。モチベーションが一過性にならないためには、内発的な意欲を起こす“感動する力”がとても大切だという事が、堀田教授の言葉からよくわかります。
■感動力がこれからの時代の大きなテーマ
堀田教授はこのようにもいっています。
『10代20代のうちは、フレッシュなので感動するための知識や経験がどうしても少ないし、逆に年齢を経るとどうしても人と“共感”する能力が落ちてしまいます』
上司は、若い部下と“共感”するためにも、部下が感動した体験をどんどん引き出したり、感動経験を承認するようなコミュニケーションが、本人の仕事への意欲へと繋がるのかもしれません。
自分が、感動力が薄いと感じている人は、自分自信の棚卸として、もう書けなくなるくらいまで今まで生きてきた中で感動した瞬間や感謝した出来事などを紙に書き出してみることが新たな自分を発見する方法かもしれません。小さな感動・感謝経験ならどんな方でも沢山あるはずだと思います。
感動力が上がると毎日の会話が変わり、会うお客様の前でも生き生きとしてきます。嬉しいと感じたり、喜んだときには心に蓋をせずに思いっきり感動して、感動力を高めていくことが大切です。
20世紀は、豊かさを求めた時代でした。豊かになった21世紀は、心の時代と言われています。顧客を満足させることは当たり前となりました。そこからどう感動を生むのかが求められます。感動はモチベーションだけでなく、これからの時代の大きなテーマです。顧客を感動させる前に、自分の感動力を上げるのはとても大切なことなのです。
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