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【書評・感想・要約】若者に辞められると困るので強く言えません

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若者に辞められると困るので強く言えません(東洋経済新報社)の書評と要約と感想

「ブラックはダメだと言うからホワイトにしたのに
今度はホワイトすぎるのもダメだなんてどうすればいいんだ!」

こんなふうに感じたことのある人は2022年の12月に日経新聞で紹介された記事「職場がホワイトすぎてやめたい若手、成長できず失望」を見たことがあるかもしれない。

とっても話題になった記事だ。

若手がホワイトすぎる現場に成長の機会を奪われていると感じてやめてしまうという内容の日経記事だった。

「若者に辞められると困るので強く言えません」(東洋経済新報社:横山信弘著)はそんなジレンマを感じて若手とどう接していいかわからないマネジャーに向けて書かれた本。

とっても学びが多くマネジャー層にぜひ手に取って頂きたい一冊なので紹介させて頂く。

はじめまして、この記事を執筆した佐藤政樹と申します。劇団四季出身の研修講師として【受講生を惹きつけながら気づきと学びを促すことをモットー】に、講演会やセミナーの講師だけに限らず大手企業などでさまざまな研修を行っております。記事の内容をお読みいただき、もしご興味いただけましたら、ページ最下部のプロフィールや研修内容の詳細をご覧いただけますと幸いです。

この本を短い言葉で表現すると

まずこの本を短いフレーズでシンプルに表現してみたい。

研修や講演の仕事をしている私は
タイトルのフレーズ「若者に辞められると困るので強く言えません」を現場で本当によく聞く。

SNSでこの言葉のままのタイトルの本が出版されたことを知り即購入した(これは売れるなぁと感じたら即大重版とのこと)。

「ガツンと言わなきゃいけない時もあるのにどう言っていいかわからない」
「失敗したことを励ましたんだけど逆に落ち込んでしまった」
「どうしたらやる気があがるようなコミュニケーションがとれるのだろう」

こんな言葉をたくさんの経営者の方からよく聞いてきた。

著者が重要だと言っているのが時代に応じた適切な「バランス」を見つけること。

・人それぞれ
・ケースバイケース

ゆえにこの本を短い言葉で表現する

マネジメントの場面で「厳しく」と「優しく」、「励ます」と「スルーする」、「強制」と「主体性」、「個人の成長」と「組織の利益」など、それぞれ、どんな場合にどんなバランスでいくべきか、わかりやすくルール化され、具体的なコミュニケーション術や活用法まで落とし込まれた本だと感じた。

著者横山信弘さんのいう「スピード」と「完成度」のバランスとは?

私にとって特にドンピシャで膝を打ちながら読んだのが
第3章「スピード」と「完成度」のバランスは?だ。

著者の横山信弘氏は経験が浅い若手には絶対にスピード重視といっている。

完成度を優先させてしまうと

①大事なことを忘れてしまう
②悩みを深めてしまう
③途中で諦めてしまう

からだ。

読みながらいろんな若手の顔が頭に浮かんでしまった…。

本当にこの通りのことがあった。最初に伝えた重要なことが抜け、悩んで落ち込んで諦めてしまい、納期ギリギリに発覚して「どうしてもっと早く相談してこないんだ!」となり、メンバー全員が巻き取って徹夜で納品したという光景を目の前で見たことがある。

本人が悪いのではなく完成度を優先させて任せていた側に責任があったのだ。

①を防ぐためには「即着手」つまりスピード重視。できれば1時間以内。そしてDoのチェック。

少しでもいいので着手させることにより記憶の定着度合いが高くなり、本人の中でもどれくらい時間がかかるかの見当もつきやすい。

②悩みを深めてしまう理由は、考えるための「切り口」を知らないからと著者は言っている。切り口には知識と経験が必須。考えるためのスイッチとなる切り口がなければそもそも考えようがないというのだ。頭の中の、考えるという機能が働かないために「考える」が「悩む」に変容する。

考える手掛かりとなるその「切り口」を、この本の中ではたくさんあげてくれている。

③の途中であきらめてしまうのは、時間への焦りが募り、完成度を高めるどころではなくなるから。手を動かしていない状態だから人に相談する切り口もわからない。そうして納期ギリギリで「どうしたらいいでしょう?」になる。

私が目の前で見た光景は、まさにこの通りの状態だったのでこの本を読みながら当時の光景がありありと蘇ってきた。

徹夜をして翌朝ギリギリで納品し、ヒゲが伸びた状態でげっそりとし床に倒れ込むメンバーの姿が…。

やる気がやらされ感に変わる4つのプロセス

そしてこの章で書かれている〜やる気がやらされ感に変わる4つのプロセス〜が、まさに”あるある”で著者の言葉選びが秀逸すぎる。

あなたも経験ありませんか?

「わかりました!すぐにやります!!」と最初はやる気や熱量があったものの時間とともに若手のモチベーションも低下していき、それどころか自分の努力不足を棚に上げて責任転換や問題を人のせいにされたこと。

一度はあるのではないかと思います。

そんな経験がある人はおそらく第3章のこの項目「やる気がやらされ感に変わる4つのプロセス」で首がもげるほど共感して頷いてしまうでしょう。

著者の横山信弘さんは言います。

スピードよりも完成度、量よりも質を優先する思考がモチベーションの低下につながることにもなる。

若手に完成度を優先させると時間の経過とともに、①の記憶だけでなく、やる気や熱量も急激に減少していくのです。そして「すぐにやります!」が「まだやらなくていい」に変容し、時間が迫ってくると「期限に間に合わなくていい」と自己正当化が始まり最終的に「私がやらなくていい」という発想につながってしまう。(引用)

1「すぐにやります!」
2「まだやらなくていい」
3「期限に間に合わなくていい」
4「私がやらなくていい」

これがやる気がやらされ感に変わる4つのプロセス。その他責思考の負の連鎖を生み出さないためにもスピードを優先する必要があるのですね。

私は自分の新人研修プログラムの中で完成度を優先させたことによって起きた前述の大変な経験を新人に話している。報連相の目的は「目標達成するための相互コミュニケーション」と言っている。

この本のこの章で学んだことを、新人の立場に立ってこの第3章を通して深く伝えれば新人の意識も変わると感じた。報連相に対する取り組みも変わると思った。

著者はスピードを優先させると

チャレンジ精神
考える力
やり抜く力

が身につくと言っている。

自分に得られるメリットや武器の話になると、新人の耳がダンボになるので、こういったこともうまく伝えながら新人研修に活かしたいと思う。

若者に辞められると困るので強く言えませんの各章要約

私なりに考えたこの本を短く表現した言葉は前述の

マネジメントの場面で「厳しく」と「優しく」、「励ます」と「スルーする」、「強制」と「主体性」、「個人の成長」と「組織の利益」など、それぞれ、どんな場合にどんなバランスでいくべきか、わかりやすくルール化され、具体的なコミュニケーション術や活用法まで落とし込まれた本。

ではこのチャプターでは各章1〜11を短い言葉で表現してみたい。購入の参考になれば。

第1章は「優しさ」と「厳しさ」のバランスは?
厳しく叱るべき2つのケースをわかりやすい例え話を参考に学ぶことができる。叱る方法や基準とルールの作り方も。

第2章は「強制」と「主体性」のバランスは?
著者は主体性に欠ける人はビジネスパーソンとして病気、と言い切っている。矯正させるのは「理解」と「言葉」の矯正というアプローチが面白い。

第3章は「スピード」と「完成度」のバランスは?
上述したので略

第4章は「教育」と「経験」のバランスは?
経験学習サイクルが一般的だが著者は「経験重視」の姿勢はやめたほうがいいと言っている。「わからないなりにやってみて」は禁句。経験→ダメ出し→自信喪失→新しいことを試したくなくなる、という悪循環が生まれることがよくわかる。大事なのは「前提を揃えること」と「見通しを立てること」。

第5章は「頑張る」と「力を抜く」のバランスは?
有名な学習の4段階というフレームワークを通してこの2つのバランスが解説されているので納得。意識しなくてもできるフェーズに入ったら初めて「力を抜いていい」。運転と一緒。

第6章は「励ます」と「スルーする」のバランスは?
著者の深さを感じさせられた。ダニング・クルーガー効果(知識や能力が足りない人ほど自信過剰になる)というフレームワークを使って「励ます」時と「スルーする」時のバランスがわかりやすく理解できる。面白い。

第7章は「個人の成長」と「組織の利益」のバランスは?
「資格学校に通っているので、残業せずに帰ります。」という言葉から始まる。組織にいながらこういう自己都合の発言は若手あるある。そんな時にどのように関わるのかを「責任・権限・義務」の観点から学ぶことができる。責任・権限・義務は三面等価の原則。

第8章は「強みを伸ばす」と「弱みの克服」のバランスは?
もちろん「強みの伸ばす」が重要。ただ、職場で生かされてはじめて強みと言える。その強みを見つけるための「美点凝視」という実践方法がわかる。ただ欠落的欠点(強みを打ち消すほどの欠点)は即是正が必要。

第9章は「チームワーク」と「競争意識」のバランスは?
共創(人と比較せずみんなで手を取り合って結果を出そう)という考えは綺麗事で終わると言い切っている。心理的安全性もそう。適度なストレスがパフォーマンスをあげる。実力が足りておらず、正しい成果が出ていない時には効果が薄い。組織のステージやメンバーの状況によって章タイトルのバランスが理解できる。

第10章は「お金」と「やりがい」のバランスは?
「やりがい」よりも「お金」という若者が多いのは私も現場で感じる。お金は元手になる。「知識資産」や「スキル資産」を増やすためにも、お金は大切。本を買ったりオンラインサロンに入ったり。お金があるから学ぶことができる、は納得。やりがいは副産物。やり切った後で感じられるもの。関わりの上でそこを履き違えてはいけないこともわかる。

第11章は「今までのやり方」と「新しいやり方」のバランスは?
不易流行。変えてはならないものと変えるべきものの区別をすることが重要。あり方は変わらないが、やり方は時代とともに変えていく必要がある。

若者に辞められると困るので強く言えませんまとめ

忘れないように印象に残ったキーワードをメモしておく。
きっとあなたにも刺さるはず。

あなたも興味が湧いたらこの本を購入してキーワードの部分をじっくり読んでみてほしい。

「期待しないことは相手に失礼」
「期待は投資」
「主体性に欠けるは病気」
「インサイドアントとアウトサイドインの違いはものさしがあるかないか」
「クイック&ダーティー。撃って検証を繰り返す」
「自分で考えろ×」
「わからなくてもいいからやってみて×」
「経験からスタートさせることはやる気を削いでいる」
「気づきの質と量」
「向き不向きではなく慣れ不慣れ」
「10年早く知りたかったダニングクルーガー効果」
「責任権限義務」
「ヤーキーズドットソン」
「Willハラスメント」
「自分語り×」

本の中で書かれていることを私も研修や講演会で伝えることがあるが、私の人材育成の研修に関しては、若手の成長フェーズや置かれているケースの説明が足りてないと感じた。著者よりは自分は思考がかなり浅いと感じた。逆にこの本を読み込めば、どうしたらいいでしょうか?と質問された時にも即答できると感じた。繰り返し読みたいと思う。

若者に辞められると困るので強く言えません、と感じたことがあるマネジャー。これからマネジャーになる人。たった1650円でその悩みが実務に落とし込める(根拠つき)おすすめの一冊です。

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