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スティーブジョブズのプレゼンを真似て「イタい人」にならないための豆知識

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ジョブズのプレゼンを真似してもいいことはない

■スティーブジョブズ驚異のプレゼンを日本人が真似するとどうなるのか?

人のプレゼンテーションを見ていて

 
「大袈裟な身振り手振りがなんだか不自然だ」
「情熱的だけどなんだか引いてしまう」
「なんか嘘っぽい・・・」

 
こんな風に感じたことはありませんか?

 
いつもありがとうございます、佐藤政樹です。
このコラムでは、上記のような多くの方が何となく感じてはいるけれど、言葉にして整理できないことを、プロの表現の世界で生きてきた私が言語化して説明することを目的として書いています。

 
私は劇団四季の主役を経験し、プロの世界で10年間自己表現の本質を学び、現在は研修講師として様々な企業で研修をしながら上場企業経営者などのプレゼンのトレーニングなどもしています。

 
今回は、ビジネスの世界のカリスマである”スティーブ・ジョブズ”を題材にして、自己表現の本質を学んでいきたいと思います___。

 
プレゼンテーションの達人と言えばスティーブ・ジョブズをあげる人が多いでしょう。アップルの創始者であるスティーブ・ジョブズはそのプレゼンテーションを通してMacの商品を世界に広め多くのファンに魅了してきました。

  
スティーブ・ジョブズのパフォーマンスがなかったらMacの繁栄はなかったと言っても過言ではありません。そのため、人前で話す機会の多い経営者の方や自社商品のプレゼンテーターの方には、スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションを参考にする方もいます。

 
スティーブ・ジョブズを真似してスピーチとスピーチの間に歩きを入れたり、目を引く動作を取り入れたり、表情や目線や手の動かし方・間合いを指導するプレゼンスクールもみかけます。

 
アメリカ式のプレゼンテーションメソッドを応用したプレゼンのスキルテクニック前面に伝える講師もとても多いです。

 
形から入ることはとても大切なことです。

 
しかし、ここに一番の落とし穴があります!

 
スティーブ・ジョブズのプレゼンはとても素晴らしいものがあります。しかし、これを表面的に真似すれば良いプレゼンができるかというと、そうではありません。

 
むしろ、我々日本人がやると極めて滑稽もしくはイヤな奴になる可能性もあります。

 
そこで、自己表現のプロの世界を経験した私が、一見抽象的に捉えられがちな
「人前に立って自己表現するための心構え(あり方)」
プロの視点切り口で解説していきます。

 
あなたのプレゼンテーション能力が「自分らしく」「自然体で」「より相手の心に響き」「伝わる」ようになるためのヒントになりますのでぜひ熟読してみてください。

■スティーブジョブズのプレゼンテーションの世界観は?

 まず、スティーブ・ジョブズのプレゼンを分析してみましょう。

 
プロの百戦錬磨の舞台の世界で生きてきた人間の観点でみると、スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションは演劇的な要素が多く含まれます。

 
心に突き刺さるエッヂの効いたキーワードが用意された台本の中に散りばめられています。スティーブ・ジョブズは、演劇の舞台のようにその台本の内容を正確に届けるよう繰り返し訓練しているはずです。

 
大切なキーワードを発する時の、角度、首の方向、客が見ていないであろう空いている手の位置まで正確に決められているのでしょう。音響や照明効果しかりです。全ての所作や演出が繊細に計算されているはずです。

 
そして、スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションは演劇のような一方向のコミュニケーションのスタイルです。観客が割り入る状況を与えず進行させています。

 
私たちのビジネスの現場でのプレゼンで求められる即興的な対応や臨機応変さをみせるといった瞬発力をふんだんに発揮しているわけではありません。

 
その上で、スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションは、なぜ多くの人の心を鷲掴みにし、聴衆を惹きつけるのかを考えていきましょう__。

■プレゼンテーションとアイデンティティの関係性

 スティーブ・ジョブズの演劇のようなプレゼンテーションが多くの人を魅了する理由。

 
それはプレゼンテーション中の全てが彼のアイデンティティそのものなっているからです。アイデンティティとは、「あるものがそれとして存在すること」「同一性」「一致」といったりもします。

 
つまり身振り手振りや移動など、それらの所作一つ一つに
スティーブ・ジョブズ自身が投影されている
ということです。ジョブズの言葉や一挙手一投足が、自己と嘘偽りなく一致しているのです。

 
そして、ジョブズのすべての言葉の奥には、信念が実感値として込められています。それが言葉や繊細な動きを通してエネルギーとなって聴衆に届けられているのです。

 
そこにはがありません。だから多くの聴衆が魅了され気づかないうちにその世界観に引き込まれていくのです。

 
もしここに、スティーブ・ジョブズにそっくりな人が現れて、すべての言葉や動きを完璧に模写(コピー)してプレゼンテーションをしても感動は生まれないでしょう。生まれないどころかそこには違和感しか残らないはずです。

■演じている人から違和感が生じる理由とは?

 プロの視点で、さらに一歩深く
「人前で自己表現する」という事と「アイデンティティ」について考えていきましょう。

 
私は、劇団四季という少しの失敗も許されない百戦錬磨の感動を創造するプロの組織に約10年在籍し、幸運にも主役までやらせて頂きました。その際に、超一流の方々から「人前に立って自己表現するための心構え(あり方)」を徹底的に叩き込まれてきました。

 
恩師である演出家・浅利慶太氏に口酸っぱく言われ続けたことがあります。 それは、

 
「演じるな!」

 
です。

 
多くの人は、いざ自分が人前に立って表現しようとする時に、「別の自分を演じる」というアプローチをとろうとします。盛って大きく誇張表現をすることにより存在感を示そうとする人もいます。

 
特に人前に立つ機会に慣れれば慣れた人ほどです。

 
しかし、私の生きてきたプロの自己表現の世界では、人前で自己表現する時に「別の自分を演じてはならない」という考えがあります。

 
もう一度言います。

 
人前に立って何かを表現しようとする時には、別の自分を演じてはならないのです。

 
むしろ、大切なことは「演じる」のではなく「その瞬間を生きる」ということです。

 
 
少し演劇の世界を例に、お話ししましょう。

 
劇団四季ミュージカル「ライオンキング」は幕が開けると、舞台の右手からチーターの衣装を着た女性が現れます。そのチーターを観るだけで観客は一気にライオンキングの世界観に引き込まれ感動します。

 
このチーター役の女性は、チーターの細かな動きをします。この時、この女性はチーターを演じるというスタンスではないのです。

 
もし動物のチーターを演じるスタンスでしたら観客の目には「チーターの着ぐるみを着たお姉さん」に映り、一気に学芸会レベルになりさがってしまいます。

 
演じるではなく、チーターという役をもらったこの女性は、自分は大草原でサバイバルをしているチーターとして「役を生きる」のです。

 
表面的な模写をするのではなく、

 
そこにいる・存在する理由を深堀し自己とチーターとを必ず一致させます。

 
チーターの所作(動き)をするのなら、なぜその動きをするのか?その理由と動きを一致させます。

 
役とアイデンティティが一致したその姿は、チーターの着ぐるみを着た女性には見えません。その身体を通して本物のチーターが憑依したように感じます。そこには嘘が消え、観ている聴衆をその世界観に惹き込んでいくのです。

(役とアイデンティティを極限まで一致させるのが俳優の仕事でもあります。)

 

アイデンティティと一致させるとは

※自己と役は一致していなければ見るに堪えないものとなる
 
 
「演じるのでなくその瞬間を生きる」

 
これは、聴衆に嘘偽りない自分を届けるためにプロの世界で重要な言葉の定義です。その人がその場に存在することと自己とを一致させる(先に述べたアイデンティティ)をまさに表現した言葉の定義です。

 
では「瞬間を生きる」にはどうしたらいいのでしょう。

 
第一に、「なぜ自分はそこに存在するのか?」肯定的な存在理由を自分に問くのです。

 
第二に、演じるのでも大きく盛って魅せるのでもなく一切の無駄を削ぐのです。これはジェスチャーなどの所作(動き)しかりです。

【関連記事】→中途半端なプロより素人の方がよっぽど感動する理由

■スティーブ・ジョブズのプレゼンを真似して良い点、だめな点。

 「演じるのでなくその瞬間を生きる」というプロの表現の世界の言葉の定義は、当然、私たちがミーティング、研修、営業、会社説明会、株主総会など、人前でプレゼンテーションをする際にも全く同じことが言えます。

 
ここからスティーブ・ジョブズの素晴らしいプレゼンテーションを例に、真似してあなたのパフォーマンスに取り入れてもいい点と気をつけなければいけない点を分析していきましょう。

1:ジョブズのプレゼンを真似してはいけないポイント

 スピーチとスピーチの間の歩き、目を引く動作(ジェスチャー)や身振り手振り。表情や目線、間合いは、真似するのではなく、逆にそぎ落としていく意識を持った方が逆にあなたの魅力が引き立ちます。

 
余計な動きはそぎ落として、まずはそこに存在できるように努めましょう。

 
そして、かっこよく見せよう意図して演じたり、上辺で説明的に表現してはいけません。なぜなら、それは嘘になるからです。

 
どれだけ盛って大きく見せてもそれは嘘になります。

 
アメリカ人のフランクなスピーチと日本人の表現は違いますし、スティーブ・ジョブズ自体が人間のステージとして削ぎ落とされているから通用している部分が大きいのです。

 
ありのままのあなたで、裸になった気持ちで聴衆の前に立つのです。

2:ジョブズのプレゼンテーションを吸収するポイント

 ジョブズは言葉や動きを通して「自分の信念」を訴求しています。そして自分の頭の中で描いている世界観や理念やビジョンを、聴衆の頭の中に描かせています。

 
この点は、私たちが真似ではなく積極的に吸収し、出来ているかどうかを常に自分に問いていかなければならない点です。

 
「なぜそのプレゼンテーションをやるのですか?」と聞かれたら即座に答えられる肯定的な理由。つなりあなたの信念が、言葉や動きの核になります。

 
「なぜ自分はそこに存在するのか?」

 
登壇前には、自分の理念やビジョンといった信念を改めて確認しましょう。その信念こそがあなたの言葉の奥にある力や魅力を最大限に引き出す重要な要素なのです。

 
あなたもその信念の部分を訴求していくのです。

 
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■こうすればあなたのプレゼンは研ぎ澄まされる

 「嘘」や「表面的な動き」をそぎ落として、あなたがそこに存在する理由が自己と一致した時(アイデンティティ)、地下から溢れ出る湧き水のように、あなたの言葉や動きの奥から力強さ(エネルギー)が出始めます。

 
その姿に、人は魅了されるのです。

 
スティーブジョブズを真似て

 
・大きなジェスチャーをする人
・間合いを使う人
・目線や表情をおくる人
・壇上を右往左往する人

 
こういう人はたくさんいるでしょう。しかし、全く心に入ってこない・伝わってこない・響いてこない人も沢山います。

 
スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションを見て勉強する際、テクニックに振り回されるのではなく、大事な”ポイント”を掴んでください。

 
ありのままで、“その瞬間を生き”自分の信念を訴求するのです。

 
これらを意識して経験を積めば、あなたのプレゼンテーション能力は間違いなく向上し「自分らしく」「自然体で」「より相手の心に響き」「伝わる」ようになるでしょう。

TEDxでプレゼンをする筆者

プレゼンテーションの殿堂TEDxでプレゼンする筆者

 
このコラムでは、多くの方が何となく感じてはいるけれど、言葉にして整理できないことを、プロの表現の世界で生きてきた私が言語化して説明することを目的として書いています。是非、他の記事も合わせてお読みください。

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