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社員が仕事中にサーフィンに!?パタゴニアの組織文化から私たちが学べること

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パタゴニアの組織文化

■Patagonia(パタゴニア)という会社をご存知ですか?

「仕事が本当に楽しい!」
「出社することが待ち遠しい!」
「共に働く仲間は家族のような存在」
「お互いが好きな服装で仕事をしている」
「出勤時間はフレックス」
「子供が病気になったら休んで看病」

 
こんな働く環境を無理なく自然に実現しているアウトドア衣料メーカー
パタゴニア___。
業績が良いことはもちろんのこと、業種関係なく世界中のトップリーダーたちが注目し、自社の経営に取り入れようと手本となっているような企業です。

 
 
こんにちは、佐藤政樹です。
私は劇団四季というプロフェッショナルの組織でいきてきた経歴をもち、現在はその経験を活かして組織の人事コンサルとして様々な企業で研修や講演をしております。

 
パタゴニアの独特の社風・文化・環境は前々から関心があり仲間とともに影響をかなり受けてきました。そこでこの度、海外研修のプログラムのうちの一つとしてアメリカ西海岸のベンチュラという田舎街にあるパタゴニア本社に、共に働く仲間とともに会社見学に行くことになったのです。

 
この記事では私がこの目で見た、パタゴニアで働く人たちの、文献ではなかなか伝わらない生(なま)の姿をお伝えしていきます。この記事によりパタゴニアの文化や環境に触れて、よりよい組織づくりのための新たな視点やヒントになれば嬉しく思います。

パタゴニアの組織文化

パタゴニア本社があるベンチュラの街にて

■パタゴニアに感動した3つのポイント

まず初めに、私の脳裏に焼き付いたパタゴニアの光景が3つありますので、それを皆さんにぜひ紹介させて頂きます。
 

働く人たちの嘘偽りない笑顔

1つ目は働く人たちの笑顔に嘘偽りがなく、とても幸せ感が溢れていたことです。通りすがりの私と目が合うと自然と微笑みかけてくれました。安心して穏やかにリラックスして働く雰囲気が一人一人から溢れ出ていました。

 
生産性をあげるために最も重要な要素は”安心感”だと多くの脳神経科学者や経営心理学者たちが研究発表しています。安心感によりありのままの自然体な自分が働く仲間に受け入れられ、職場で自分らしくいられる。その結果がお互いの信頼感にもつながり、チームワークも良くなることは想像がつきます。

 
働く一人一人があの表情で楽しく仕事をしていたら仕事のパフォーマンスは確かにあがるでしょう。

パタゴニアの組織文化

パタゴニア創業期の歴史的なガレージの前にて

託児所の愛に溢れた光景

パタゴニアは、マリンダ・ペノイヤーという社員の要望でアメリカ中の会社に先駆けて社員のための託児所を充実させてきました。施設の中(本社建物のすぐ隣)に子供たちがいつもいるという独自の文化があります。パパやママが働いている間、本当に子供たちが中庭や託児所で思いっきり遊んでるんですよね。

 
見学していた僕たちに子供たちから手を振ってくれた時はパタゴニアという会社に家庭的な雰囲気をとても感じました。そして仕事を終えたパパが息子を愛らしく抱えて退社していきます。その光景に私は心が温かくなりました。

 
今、社会では顧客満足度だけでなく従業員満足度の必要性も重要視されています。従業員満足を高めるために、制度や表彰に力を入れる企業も多いでしょう。しかし、パタゴニアには「従業員を満足させよう!」という変な力みのようなものを感じません。何と言うか、社員を家族のように想い、自然に大切にしているのです。こんな文化があれば社員の会社に対する愛着心(エンゲージメント)は確実に高まりますね。離職率が低いのもうなずけます。

パタゴニアの組織文化2

社員が仕事中にサーフィンに!?

3つめは社員が仕事中にホントにサーフィンに行っている!ということです。

 
パタゴニアでは出勤中でも「いい波が来たからサーフィンにいってくる」と言って自由に仕事を抜け、「いってらっしゃい」と送り出す有名な文化があります。

 
パタゴニア本社のすぐ側に有名なサーフスポットがあるのですが、私が見学をしているとテラスでMacBookに向かって集中して仕事をしている若い男性がいました。仕事の区切りがついたのか、男性はすくっと立ち上がってオフィスに入っていきました。そして、数分後にはサーフボードを抱えて出てきたのです。そして、受付の社員は笑顔で「いってらっしゃい!」と見送っていました。

 
この“ご自由にサーフィンに行ってらっしゃい”文化は、パタゴニアに行く前は正直「本当かな?」と思っていたので、この光景には驚きました。

 
しかし、社員をサーフィンに行かせるには深い意味があります。
ただサボって遊んでいるのではないのです。

■パタゴニアが素晴らしい文化を実現しているわけ

パタゴニア創業者のイヴォン・シュイナードの著書「社員をサーフィンに行かせよう」(原題:let my people go surfing)にはこう書かれています___。

 
—-以下引用—–
私が社員をサーフィンに行かせようと言い出したのは狙いがある。

 
第一に「責任感」
一人一人が責任感を持つということ。サーフィンに行っていいかという許可やいつまでに仕事を終えるのかなどいちいち上司にお伺いをたてるようではいけない。サーフィンが原因で仕事が遅れたら夜や週末に仕事をして取り戻せばいい。社員一人一人がそんな判断をできる組織を望んでいる。

 
第二に「効率性」
自分の好きなことを思いっきりやれば仕事もはかどる。午後にいい波がくると分かれば、その前の数時間の仕事は効率的になる。旅行前に仕事がはかどるのと同じだ。同僚に迷惑をかけたくないこともあるだろう。

 
第三に「融通をきかせること」
サーフィンは前もって予定を組むことができない。予定した時間にいい波がくるかどうかわからないからだ。いい波が来たらすぐに出かけられるように、常日頃から生活や仕事のスタイルをフレキシブルにしておく必要がある。

 
第四に「協調性」
「サーフィンに行っている間に取引先から電話があったら、受けておいて欲しい」と言ったら「いいよ。楽しんでおいで。」と誰もが言える雰囲気がパタゴニアにはある。このためには周囲がお互いの仕事を理解していなければならない。一人が仕事を抱え込むのではなく、周囲がお互いの仕事を知っていれば、社員が病気になっても、子供が病気になって会社を休んでも、子供が生まれて長期的に休んでもお互いが助け合える。信頼し合えるから機能する仕組みだ。

 
第五に「真剣なアスリートの採用」
アウトドア製品を開発・製造・販売しているパタゴニアは、自然やアウトドアスポーツに深い経験と知識が必要になる。そのためにもその分野に精通した真剣なアスリートの採用が必要。  引用ここまで

 
 
つまり、私が見たサーフボードを持ってサーフィンに出かけた男性の姿は、記事の初めに私が書いた

「仕事が本当に楽しい!」
「出社することがワクワクする!」
「共に働く仲間は家族のような存在」
「お互いが好きな服装で仕事をしている」
「出勤時間はフレックス」
「子供が病気になったら休んで看病(周囲がジョブシェアリングでフォロー)」

 
これらを具現化したものに他ならないのですね。
この目で見て納得しました。

【関連記事】組織文化とは何か?経営者目線で動く自律型人材を育てる方法

パタゴニアの組織文化

パタゴニア本社建物すぐ近くの海岸桟橋にて

■帰り際に偶然起きたパタゴニア社員とのストーリー

これだけで私はパタゴニアに共感したのですが、帰り際にさらに面白いことが起きました。

 
受付にいたチョッパーさんという陽気な方が僕らに笑顔で声をかけてくれ、僕らが日本から来たということをとても歓迎してくれていました。そして、パタゴニアの理念を熱く語ってくれたのです。パタゴニアの理念である自然環境への深い感謝と自然界への熱烈な愛情を文字通り熱く、です!

 
そして最後に言った言葉が心の奥に刻まれました。

 
「君の会社は、売上の1%を社会に還元してるか?それとも利益追求だけの会社か?君たちの宿題はそれだ。一緒に歩もう。全てはあそこにいる子供たちの為だ」

 
中庭にいる天使のような子供たちを指差してこういうのです。

 
企業のトップが理念を語ることはあるでしょう。しかし、一社員が通りすがりの見ず知らずの人にまで理念を実感して語れる企業はどれほどあるでしょうか?

 
パタゴニアが掲げる自然環境への配慮は「サステナビリティ4.0」としてハーバード・ビジネス・レビューなどで数多く紹介されています。しかし、掲げることと当たり前レベルで実践することには大きな開きがあります。

 
パタゴニアは、一切の建前なく、本気で理念を貫いて行動しているのだと感じました。
どんなに小さくても尊い理念を貫いて行動することがこの地球環境を守ることと信じて。

 
私はパタゴニアの大ファンになりました。私はこの数時間だけでこの人たちと働きたいと思ってしまいました。

パタゴニアの組織文化

パタゴニアのチョッパーさんに理念を熱く語られる

■パタゴニアから私たちが学べること

私たちはパタゴニアからたくさんのことが学べます。

 
まず、人は理念に共感して集まり、ビジョンに賛同して一つになるということです。パタゴニアの理念や信条やビジョンがあり、それをしっかりと外に発信するからこそ、それに賛同した人が集まっているのです。これは優秀な人材をいかに集めるかといった類の小手先の採用戦略とは根本が異なります。

 
そして、建前だけで理念やビジョンを掲げるだけではなくそれを一人一人が行動指針にしているのか?ということです。理念はいかなる時でも意思決定や重要な判断をする際の礎になるものです。

 
理念に基づく行動を社員に押し付けるのではなく、企業が呼吸をするように理念そのものから生まれているので、生まれる商品も制度も理念をまとったものになるのです。

 
チョッパーさんは私たちに理念を熱く語ってくれました。チョッパーさんのように組織で働く一人一人が“なぜ自分たちがその仕事をやるのか”という働く理由を出会った人に語っているのか?

 
組織で働く一人一人が、仕事の理念や信条を仲間や顧客に語れば、(私が一瞬でファンになってしまったように)多くのファンをうみ多くの人を巻き込むことができるでしょう。

 
一点の曇りがない理念と信条を行動指針にする。その理念と信条がそこで働く人を成長させ、それがその人の幸福繁栄につながっていくということは間違いありません。

 
これこそが事業(ビジネス)と人間的成長の極みだということをパタゴニア社を直接見て学んだのでした。私がより良い企業を作ろうと真剣に取り組む人たちのために伝えていくべき使命をより強くさせてくれる機会となりました。

 
最後にパタゴニア創業者のイヴォン・シュイナードは、日本の社会と文化に大きく心を惹かれていて、研究に研究を重ねパタゴニア経営の参考にしているそうです。私たちは自国の文化に誇りを持つべきだと感じました。

 
ですからパタゴニアのような人の能力を活かす企業がこれからたくさん増えて、イキイキ、伸び伸び働く人が増えるポテンシャルは日本には十分にあると感じます。そのためにもこの海外研修の一つのプログラムで学んだことを講師として社会に還元していこうと強く思ったのでした。共に素晴らしい企業を日本から生み出していきましょう。共感していただける方との出会いをお待ちしています。

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