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ティール組織とは?本の要約と企業事例から徹底解説

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会社で働く一人ひとりの社員が、自分のもっている才能を発揮し、ワクワク感をもっていきいきと毎日会社で働いている。
 
皆さまの会社でこうしたエネルギーに満ち溢れた人材が沢山いらっしゃれば、会社全体としても想像できないくらい成長していけると思いませんか?
 
「うちの会社ではそんなの無理だ」
「うちの社員はみんな受け身だから」
 
そのように諦めていませんか?
 
そこで筆者が注目しているのが、本でも話題になっている「ティール組織」です。
 
ただし、誤解しないでいただきたいことがあります。ティール組織で語られているのは、組織の構造の話ではありません。突き詰めれば、人間の心と思考のあり方の話をしているのです。
 
・ビュートゾルフ
・FAVI
・セムコ社
 
本の中でも紹介されているティール組織と言われるこれらの組織のやっていることをそのまま真似しても、皆さまがティールに進化できるわけではありません。
 
「組織とはこうあるべき」という古い価値観を手放し、新しい価値観を受け入れる。ティール組織に進化するために必要なのは、こうしたパラダイム(考え方を支配する認識の枠組み)のシフトです。
 
ぜひ本コラムを通してその本質を学んでいただけたら幸いです。
 
本コラムを読まれるのは、もしかしたら組織の変革を担う方々なのかもしれません。しかし、ティールの本質が人間の心の変化にあるならば、ぜひ人材開発を担う人事の方にも読んでいただきたいと考えます。

ティール組織とは何か?組織は機械から生命体へ進化する

『ティール組織』は、元マッキンゼーのコンサルタントでもあるフレデリック・ラルー氏によって提唱された、これまでにない新たな組織の考え方です。
 
ここで一つ確認させてください。組織の定義とはなんでしょうか?
 
組織とは、「ある共通の目的のために集められた2人以上の人間による活動体」と定義されています(経営学者のバーナードによれば)。組織と聞いて、皆さまが思い描いているものは、おそらくはピラミッド型の組織図ではないでしょうか?
 


組織図のいちばん上にいる人が、皆さまの会社でいう社長になるのかも知れませんね。社長をはじめとした組織のトップの人間が、「うちの会社はこうしていこう」と方針を立て、その方針に則って経営計画を立てる。トップの立てた経営計画を現場レベルまでブレークダウンしていき、社員は上から降ってきた通りにタスクをこなすという形でしょうか。
 
皆さまの会社でも、こうした組織図はありますよね?
 
この組織図の通り、「組織とはこういうのが当たり前」という固定概念があるかと思います。
 
この「当たり前」がいわゆるパラダイムであり、こうした従来のパラダイムがラルー氏の書籍で説明されている「順応型(アンバー)」「達成型(オレンジ)」の組織になります。
 
順応型(アンバー)では、上のヒエラルキー構造は強固で崩れることがありません。トップの地位が揺らぐなどということは絶対にありません。
 
今日の会社組織に多いのが、達成型(オレンジ)の組織です。簡単にいえば、「頑張って成果を出した人間が報われる」という考え方です。会社が立てた目標、与えられた役割に対して成果を上げることができたならば、それ相応の報酬をいただくこともできるし、上に上がっていくこともできます。
 
この達成型(オレンジ)の組織は、書籍の中では「機械」に喩えられています。会社は社員に対して役割を与え、一定のパフォーマンスを出してくれることを期待します。その役割をまっとうした社員は評価しますが、期待にこたえてくれなければ評価することもありません。働く中で体調を崩して働けなくなったならば、それを「故障」とみなして他の社員で代替しようとします。
 
会社の中では、社員は機械の部品であるかのように見做されている。これが達成型(オレンジ)の特徴です。組織の中では、社員個人の価値観や意思、大切にしているもの、好きなことなど、パーソナルなことを挟み込む余地がありません。
 
デジタルネイティブと呼ばれている若い世代にとっては、こうした組織の中にい続けるのは、非常に居心地が悪いと感じる人が多いと言われます。
 
SNSを使えば、自分が繋がりたい人たちと好きなタイミングでつながることができる。人間関係を会社に縛られる必要はないし、会社の人間関係が合わなければ、すぐに辞めてしまいます。
 
また、達成型(オレンジ)組織には、決定的な問題があるのです。
 
それは、過剰な利益を追求するがために、限りある地球の資源を搾取し続けていることにあります。本来は世の中に必要ないはずなのに、利益追求のために無理やり消費者のニーズを喚起する。TVCMなどをみていると、要らないはずなのについつい買ってしまう商品が多くありませんか?
 
他社との競争に打ち勝つ。他の人間を出し抜いてでも勝ち組になる。達成型(オレンジ)にあるそうしたパラダイムが、地球環境を汚し続けるだけでなく、人間の精神性にも悪影響を与えているのです。
 
学習する組織の中で語られているシステム思考とはまさにこのことです。
 
そのような達成型(オレンジ)も枠組みを超えて、社員を家族とみなした組織が多元型(グリーン)という概念も生まれました。
 
達成型のように、社員は命令して従わせるものではなく、支援する存在だというのが多元型(グリーン)です。社員(=社長にとっては子供のような存在)たちの価値観を尊重し、社員が最高のパフォーマンスを発揮できるように、精神面でも物質面でも惜しみなく支援をするのです。
 
社員にとっては、こうした会社で働けることが幸せに感じる人が多いかも知れません。社長から家族のように大切にされ、会社で働くことが幸せに感じられる。自分たちの仕事や生活のことは、会社が面倒を見てくれる。
 
坂本光司先生の「日本でいちばん大切にしたい会社」でも取り上げられた伊那食品工業様も、まさにこの多元型(グリーン)の概念に近い会社です。
 
近年はサーバント(支援型)リーダーシップという考え方が定着してきましたが、リーダーは部下を支えるものだという考え方も多元型には組み込まれているようです。

とはいうものの、会社の舵取りを行うのはあくまでも社長です。
 
社員の主体性を尊重し、いくら自由に意見を言えたとしても、最終的な意思決定は社長に委ねられます。会社のためにと思って、社員がいくら頑張って色んな提案を持ちかけたとしても、「いやいやそれは違うでしょ」といって社長にハネられるケースです。
 
多元型(グリーン)はとても理想のように感じる方もいるかも知れませんが、ここに矛盾があるのです。
 
社員の主体性を重んじ家族のように大切にする反面、「社長は社長。社員は社員」という線引きがどこかにあり、大事な意思決定はすべて社長が担うことになるのです。
 
こうした多元型(グリーン)の組織に物足りなさを感じる人もいらっしゃるかもしれません。
 
順応型(アンバー)、達成型(オレンジ)、多元型(グリーン)の先にある考え方こそが、ティール組織なのです。ティール組織をイメージで理解すると以下のような形になります。


 
上の図の中で、いちばん偉い人は誰でしょうか?誰が偉いかなど分かりませんよね。ティール組織とはいっても、いちおう社長と社員という立場があることには変わりません。会社法上では株式会社に対して代表取締役(社長)がいて、会社と社員の間で雇用契約が結ばれる。
 
しかし、会社の実態を見てみると、誰が社長で誰が社員なのかがはっきりとわからない。むしろ、一人ひとりのメンバーが、あたかも社長であるかのごとく、会社の重要な意思決定を担う権利をもち、トップからいちいち指示されなくても主体的に動くのです。
 
順応型(アンバー)や達成型(オレンジ)、多元型(グリーン)の組織が中央集権型(大事なことはすべてトップが決める)であるのに対し、ティール組織は完全に分散型の組織とも言えます。

ティール組織と従来型組織の違い

しかし、皆さまもこんな風に考えたことはありませんか?「うちの社員ももう少し主体的に動いてくれたらいいのに」と。社員一人ひとりが主体的に動き、あたかも自分が組織の代表であるかのように振舞う。
 
その行き着く先がティール組織ではないでしょうか。

ティール組織に進化した企業が通るべき3つのブレークスルー

それでは、達成型、多元型の組織を超えて、ティール組織に進化するにはどうすれば良いのでしょうか。
 
ラルー氏は、達成型(オレンジ)や多元型(グリーン)からティールへ進化する過程で、3つのブレークスルーがあることを謳っています。それが、「自主経営(セルフマネジメント)」「全体性(ホールネス)」「組織の存在目的」の3つです。

⑴自主経営(セルフマネジメント):働く時間も給料も自分で決める

皆さまに質問です。
 
就業時間は9時から18時まで
毎月支給される給料はいくら
勤務地は〇〇
所属部署は△△
 
こうしたことを決めているのは誰でしょうか?
 
一般的には、就業規則に基づいて就業時間が決まっており、社員に支払う給料も会社によって決まっているはずです。多くの会社さまでは、社員の働き方が会社によって管理されています。
 
自主経営(セルフマネジメント)とは、名前の通り社員を管理するための明確なルールがなく、自分のことは自分で管理している状態のことです。
 
例を挙げるならば、『奇跡の経営』で一躍メジャーになったセムコ社があります。
 
 

 
セムコ社では、社員を縛るための明確なルールがありません。社員の給料は、社員自ら決定する。働く時間も会社によって管理されるものではありません。何時から何時まで働くのかは、一人ひとりの社員が決めているのです。

もう一つ例を挙げるとすれば、アウトドア用品を手がけるパタゴニアです。アメリカ西海岸のベンチュラという街に本社のあるパタゴニア。私も2017年にパタゴニアの本社を視察させていただきました。
 
パタゴニアといえば、創業者のイヴォン・シュイナード氏の著書である『社員をサーフィンに行かせよう』を読まれた方も少なくないはずです。
 
「勤務時間中にサーフィンに行くとは、なんて自由な会社なんだ」と思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、私は「社員が勤務時間中にサーフィンに行く」という発想の中に自主型(セルフマネジメント)の真髄が隠れていると感じるのです。
 
いい波が来ているならば、遠慮なくサーフィンに行く。サーフィンに行くかどうかも社員自らが決めています。サーフィンが気持ちが乗った後の方がむしろ仕事も捗るので、そちらの方がむしろ効率が良いのです。ある社員がサーフィンに行くときには、「いない間の電話対応を頼む」と他の社員への声かけも忘れていません。
 
「就業時間中は仕事に専念してください」と会社側が縛るよりも、仕事をする時間とプライベートの時間の管理を社員に任せた方が、仕事のパフォーマンスが格段に上がります。
 
セムコ社にしろパタゴニアにしろ、こうした管理をせず個人の自主性に任せられるのは、会社と社員の間に圧倒的な信頼関係があるからです。
 
では、日本の多くの会社で「自主経営(セルフマネジメント)」のブレークスルーはすぐに超えられるでしょうか?おそらくは難しいのではないでしょうか。
 
ルールを設けるということの裏には「管理しないとサボるから」という前提がどこかしらにあるからです。
 
社員さんの立場に立ったとしても、長年にわたって管理されている状態に慣れてきています。その状態からいきなりルールを撤廃したとしたら、社員は自分の働き方をどうコントロールすれば良いのか分からず、途方に暮れてしまいます。それこそ、サボる方がいてもおかしくはないでしょう。
 
日本の企業では、「100人100通りの人事制度」に取り組むサイボウズがティール組織にもっとも近い会社の一つかと思います。
 
会社としてそうした働き方を実践している代表例はサイボウズ社です。すべての社員が9〜18時までフルタイムに働く必要はない。
 
週5日で働く人もいれば、週3日働いてサイボウズ以外で複業をこなす社員もいる。会社に出社する社員もいれば、在宅ワーク中心の社員もいる。給料も画一的ではなく、一人ひとりが上司と話し合いながら妥当な給料を決めているとのこと。
 
サイボウズも初めからこうした働き方を実践していたわけではなく、達成型(オレンジ)のパラダイムを経ていまに至っています。

⑵全体性(ホールネス):ありのままの自分をさらけ出す。装いの仮面はいらない

全体性(ホールネス)とは、うその装いも恐れもしがらみも忖度もなく、ありのままの自分を曝け出している状態であり、組織のメンバーとのそうした関わり合いがある状態を意味します。
 
 

 
上の挿絵をみてください。
 
社長に対してお世辞をいっている社員がイメージされるかもしれません。
 
こんな光景を見ることも稀になってきましたが、この社員の方は、本来の自分の姿で社長とコニュニケーションを取っていると思いますか?おそらくはそうでないと感じた方が多いのではないかと思います。
 
多くの職場ではこの挿絵の社員のように、ありのままの自分とはほど遠い自分を装い、その場に受け入れられるような一定の様式に従おうと、仕事用の仮面を身につけ自分を作ってその場にいます。
 
スーツを着た瞬間に本来の自分を隠して、仮面をかぶり組織に受け入れられるように振る舞うのです。情緒的な部分を表に出すことは歓迎されず、場違いとされます。
 
ありのままの自分を出すと、非難されるか馬鹿にされるか、場違いな人と印象を周りに与えかねないことを恐れ、自らを隠しておく方がはるかに安全だと考えるのです。
 
ティール組織著者のフレデリック・ラルー氏は著書の中でそのような職場を「魂の抜けた場所」と表現しています。その中で、社員が本来もっているパフォーマンスが発揮されるとは思わないのです。
 
「効果的なチームとは何か?」についてGoogleが語っているのですが、その中で「心理的安全性」がチームに対するエンゲージメントの強化に寄与していることを述べているのです。
 
チームの中でリスクのある行動を取ることに対して、「このチームのメンバーならば受け入れてくれるから大丈夫」という安心感があると、「こんな発言してもいいのかな?」ということも積極的にシェアできるようになるし、自分の弱いところも曝け出すことができると言われています。
 
ありのままの自分を出せる環境が、個人と組織のパフォーマンスに直結する。
 
筆者も劇団四季の中で長年にわたって俳優を演じてきたからこそ、「ありのままでいること」の重要性を実感しています。
 
「俳優たちはよく見せようと頑張っている」と思っている方もいるかもしれませんが、むしろ逆なのです。演劇の世界では、ありのままの自分でないことはむしろ致命的になります。
 
なぜならば、相手を感動させる言葉は態度は、その人の芯からあふれ出るエネルギーに現れるからです。俳優がもし「よく魅せたい」という態度で舞台に上がったならば、お客様からはすぐに見透かされてしまいます。
 
ありのままの自分でいること、嘘偽りの自分を削ぎ落としていくこと。こうしたことは、個人のパフォーマンスを最大化させることにもつながりますし、そうした環境が職場にあるからこそ、社員のエンゲージメントを高めることにもつながります。

⑶存在目的:利益追求よりも大切なものがある

会社は何のために存在するのでしょうか?
 
達成型(オレンジ)のパラダイムの中では、会社の成長に重きが置かれていました。つまり、売上や利益を高めることです。競合他社に勝つための戦略を打ち出し、人・モノ・金・情報を戦略に合わせて最適に配分する。企業の経営戦略においては、人材は経営資源の一つに過ぎず、機械に例えるならば歯車のような扱いです。
 
しかし、会社の成長を求め続けた先にあるのは何でしょうか?
 
会社の成長のために、自社のかけがえのない人材を疲弊させ、地球の限りある資源を食い尽くすような経営に、本当に意味があるのでしょうか。それが正しいか間違っているかどうかではなく、「なぜ企業が存在するのか」を改めて振り返ってみる必要があるのです。
 
先に例示したパタゴニアも、企業によるこのような果てしない成長に対して危機感を抱いていました。我々がビジネスの現場で行っている活動が、地球環境を汚し続けている。そこに対して待ったをかけ、会社として利益を上げ続けることで地球と共存していくことが、彼らにとってのミッションです。
 
何をすれば儲かるのか?
そのために、どう資源を配分していくのか?
 
こうした論理づくめの思考に対し、ティール組織では「なぜ組織は存在しているのか」に徹底的に耳を傾けます
 
それは「考える」を通り越して、「感じる」の領域になります。
 
ラルー氏の本で紹介されている会社では、対話のときに椅子を円で囲んで座るのですが、一席だけ誰も座らずに空けておくのです。あたかもそこに生命体である組織がいるかのようにして、「私たちが何のために存在するのか」を組織と対話しながら導き出しているのです。
 
この「誰も座らない椅子」については、またあとで登場してもらうことにしましょう。

ティール組織の具体例

⑴ビュートゾルフ:オランダで高齢者向けの在宅ケアを行う看護師による非営利団体

ビュートゾルフとは、オランダで高齢者向けの在宅ケアを手がける看護師による営利団体です。2006年にヨス・デ・ブロックによって設立されました。著書『ティール組織』の中で、たびたび事例として取り上げられる企業です。
 
オランダでは、医療費の削減のために、訪問看護の徹底的な効率化が進められていました。患者の近くにいる空きのある看護師がアサインされるので、患者のもとには毎回違う看護師が訪れる。看護師が患者のもとに行き、包帯を巻く時間や注射を打つ時間などが細かくデータ化され、効率化のための分析の対象になる。
 
患者としては、自分たちのことを一人の人間として診てほしいと思っている。その一方で、効率化の渦中にいる看護師たちは、患者を包帯を巻いたり注射を打つ「対象物」としてしか見れない状況。本当は尊重すべき一人の人間として向き合うべきはずの患者に対し、モノと見なさなければやっていられない状況。
 
自分たちが目指す看護はこんなモノだったのか。
 
こうしたオランダにおける看護のあり方に疑問をもったヨス・デ・ブロック氏は、従来のしきたりにとらわれず、看護師たちが自分たちの仕事に誇りをもち、患者一人ひとりに対して向き合えるよう組織体制を整えました。
 
10〜20名の看護師がチームを組み、対象のエリアで訪問看護にあたるのです。患者のもとには毎回同じ看護師が訪問し、一人ひとりの患者と人として向き合います。
 
ビュートゾルフのこうした取り組みによって、患者の看護師に対する信頼が回復し、看護師も自分たちの仕事に対して誇りを取り戻せるようになったのです。
 
今では9,000人もの看護師がビュートゾルフで働いています。
 
ちなみに、ビュートゾルフのこうした在宅ケアのスタイルは、日本でも横展開されており、地域の医療機関がビュートゾルフからノウハウを取得して経営を行っています。

こちらは千葉県柏市にある地域看護を行うNeighborhood Care。ビュートゾルフに倣ったチームによる訪問看護を行っている。

⑵FAVI


FAVIは、フランス発祥の自動車部品メーカーです。こちらの企業もビュートゾルフと同じく、著書『ティール組織』で頻繁に取り上げられている企業であり、従業員数は400人くらいいます。
 
FAVIの顧客は、フォルクスワーゲンやボルボといった自動車メーカーです。ものづくりの業界といえば、工場でモノをつくる人、お客様にモノを売る人が分かれているケースが多いですよね。FAVIも以前はそうした製造と販売の分業体制でした。
 
こうした分業体制は、お客様や社員の立場からすると、厄介なところがあるのです。工場で働く社員は、お客様のことをよくわかっていない中でモノを作り続ける。
 
営業の現場でお客様と接する社員は、自分たちが売るモノが工場で誰が・どんな設備で造られているのか分からない。注文から納品までどれくらいの時間がかかるのか分からない。「なるべく早く納品してほしい」とお客様から言われても、「いつまでに納品します」と明確に回答でできない。
 
そうした分業体制をひっくり返したのが、1983年にCEOに就任したジャン=フラソワ・ゾブリスト氏です。彼は、従来の製造と営業の完全分業の体制から、「ミニファクトリー」に切り替えたのです。
 
「ミニファクトリー」は、担当顧客ごとに少人数のチームを組み、そのチームの中で営業から製造、納品までを特定の顧客に対して一気通貫で行うというやり方です。組織編成がビュートゾルフと非常に似ていますよね。
 
彼らが担当するのは、何も販売・製造に限った話ではありません。顧客や競合企業の動向も積極的に調べます。競合企業が値下げをしてきたならば、自分たちはそれに対抗しうる策を打てるかどうか、生産性をさらに高められないかをチーム内で議論します。
 
一つ一つのミニファクトリーが、あたかも独立した企業体として振る舞っているかのようですね。ミニファクトリーの中で、誰の指示に従えば良いのかといった階層構造はありません。ミニファクトリーの中の一人ひとりが、自分たちが何のために存在するのか、どのように組織を経営していこうかを自分ごととして考えているのです。

⑶オズビジョン


自分が夢中になれることをやろう。
単なる仕事ではなく、自分自身がファンになれることを。

 
オズビジョンが掲げるメッセージが痺れますね。
 
このオズビジョンという会社のことをご存知でしょうか?
 
PontaカードやTポイントなど、買い物のたびにポイントが付与されるカードがありますよね。オズビジョンでは、ハピタスというポイントサイトを運営しています。買い物のたびにハピタスでポイントがたまり、そのポイントを現金やギフト券、電子マネーなどに交換できるという仕組みです。
 
今では会員数も300万人までのび、登録企業数も伸びています。
 
そんなハピタスの運営を行うオズビジョン。彼らは別に、ハピタスを成長させることを目的にしているわけではありません。
 
会社とは、働くための手段の1つに過ぎない。仕事を単にお金を稼いで生活するための手段としてはいけない。人生において成し遂げたいことは何か?そのためにオズビジョンをどう自分の人生に生かしていくのか。
 
そのような思いを持った人材が、オズビジョンという一つの組織体を形成しているのです。
 
オズビジョンは、日本の企業として唯一、著書『ティール組織』にも取り上げられた企業でもあります。残念ながら、書籍の中で事例として紹介された「Thanks Day」や「Good or New」の取り組みは、いまは実施されていないとのこと。
 
個人のパフォーマンスの向上が組織のパフォーマンスの最大化と直結する。そのために、社員にはオズビジョンが事業のために必要な機能を求めるだけでなく、全人格的な関係の構築が必須であると語っています。つまり、オズビジョンに関わるメンバーが、ありのままで無理のない自分をさらけ出せる環境をつくることです。
 
「Thanks Day」「Good or New」は、それを実現するための手段として用いられていました。「Thanks Day」は制度を利用する社員が減ったこと、「Good or New」はやらねばならないという義務感が生まれたことから、両者とも現在は実施されなくなりました。
 
「Thanks Day」や「Good or New」について少し補足しておきますね__。
 
「Thanks Day」とは、誰かに感謝をするための特別な日として、休暇と現金2万円を支給するという制度です。その代わりとして、社内ブログの中で誰に・どんな感謝をしたかを共有するのが必須となっています。
 
「Good or New」は、日常の業務で関わることのない社内メンバー同士の交流を促進するための制度です。毎朝ランダムに数人のグループを作り、「Good(メンバーのいいところ)」または「New(24時間以内にあったニュース)」をシェアするという取り組みです。

⑷セムコ社

先ほど少しだけご紹介させていただきましたセムコ社の『奇跡の経営』。ティール組織を学んだ後に『奇跡の経営』を読んでみると、セムコ社がまさにティール組織そのものであることを実感します。
 
先ほど、3つのブレークスルーについてお話ししましたが、セムコ社はその中でも「自主経営(セルフマネジメント)」をこれでもかというくらい徹底していることが分かります。
 
書籍のサブタイトル通り、1週間毎日が週末発想。月曜日から金曜日まで働き、土日に休んでまた翌日から出社。
 
日曜日の夕方になると、次の日のことを考えるのが憂鬱になる。日本を代表する某テレビアニメが、サラリーマンにとって憂鬱の象徴となっているのがなんとも皮肉なこと。
 
社員がこんな憂鬱な状態に陥るのは、会社が社員を半人前の子供のように扱い、コントロールしていることが原因であると、セムコ社のCEOであるリカルド・セムラー氏は述べています。
 
従業員は本来、立派に物事が判断のできる大人である。
 
その前提にたち、セムコ社では明確なルールを設けていません。何時から何時まで働くのか?どんな職務に従事するのか?一人ひとりの従業員が自ら決定するのです。
 
給料ですら自らの判断のもとで決めているのです(そのために必要な判断材料は会社が提供していますが)。
 
セムコ社にとって、社員は自社の事業目的を果たすための歯車として見ていません。社員が本来もっている才能を発揮できるように、セムコ社として様々な職務機会も提供しています。もしいま従事している職務が自分に合わないものだとしたら、ジョブローテーションの機会も提供します。
 
社員が自らの情熱を発揮して仕事に臨めるならば、そこに外部からの管理は不要であり、社員が自分のことを自分で管理する。本気でそのように思っているのです。
 
本当にそんなことで会社が成り立つのかと不安になりますよね。そもそも、ティール組織のようなパラダイムで本当にうまく行くかどうかも疑問に感じるかもしれません。
 
「管理をなくしたら、社員は仕事をサボるのではないか?」
「給料を自分たちで決めさせたら、不当に高い給料を要求してくるのではないか?」
 
こんな不安が浮かんできそうな感じがします。セムラー氏は21歳のときに父親からセムコ社を引継ぎました。それ以来、セムコ社は急成長を遂げています。
 
誰がそのようなことを想像したでしょうか?
 
一人ひとりの社員が眠らせている情熱を解き放つ。上からのトップダウンで管理するのではなく、社員自らが自分のことを管理する。それが社員の成長につながり、ひいては世の中の変革につながることを、セムラー氏は知っていたのです。


 
ちなみに、日本ではセムコスタイル・インスティテュート・ジャパン(SSIJ)という会社が、セムコスタイルを日本の企業に展開するべく研修やコンサルティングを手掛けています。興味がございましたら、SSIJ社のWebサイトもご覧いただければと思います。

ティールへ進化した組織は何をやっているのか?
組織慣行について

ここからはティールへ進化組織にある慣行についてお話ししたいと思います。
 
組織慣行という難しい言葉が出てきましたが、要は「ティール組織の人たちは普段何をしているの?」ということです。
 
正直に申し上げると、既存の企業がティール組織へ進化するのは容易なことではございません。
 
衝動型(レッド)から順応型(アンバー)
順応型から達成型(オレンジ)
達成型から多元型(グリーン)
多元型から進化型(ティール)
 
ラルー氏がこれまで説明してきた組織の進化の過程を「パラダイム」と表現している由縁はここにあります。
 
パラダイムを「思考の枠組み」「思い込み」とも言い換えられます。つまり、ティールへの進化を考えるならば、「組織とはこうあるべき」というこれまでの思い込みを一度捨てなければなりません。
 
就業時間は9時から18時まで
部下には弱みを見せられない
事業計画は立ててしかるべき
 
会社を経営する上で、こうした思い込みがどこかにないでしょうか?
 
皆さまがティールへ進化したいとお思いでしたら、こうした思い込みをすべて手放すのです。なかなか難しいと思いませんか?
 
ラルー氏は著書の中でこう述べています。既存の組織をティールに進化させる方が、一からティールを生み出すよりも圧倒的に困難であると。
 
これを一言で喩えるならば、「三つ子の魂百まで」に近いです。
 
子供に英語を覚えさせることを考えてみてください。幼少期にアメリカで過ごしたお子様ならば、自然と英語が喋れるようになるはずです。
 
一方、小学校高学年まで普通に日本で育った子どもに英語を学ばせるとなるとどうでしょうか?とても苦労するのではないでしょうか。ましてや、ご年配の方が一から英語を覚えようとなると、尚更大変なはずです。
 
ティールへ進化するというのはそういうことなのです。新しい習慣を形成するならば、一から始めた方が圧倒的に簡単なのです。
 
その観点で、ティール組織の慣行についてこれから説明していきます。

自主経営を実現する組織慣行

①助言に基づく意思決定

新規事業を立ち上げる
既存事業から徹底する
社員を採用する
工場を建てる
設備投資する
 
企業の活動ではこうした意思決定が日々行われています。
 
さて、皆さまの会社ではこうした意思決定を誰が行っているでしょうか?
 
何を申し上げたいかというと、ティール組織ではこうしたことを社長でも人事部長でも工場長でもなく、一人ひとりの社員が意思決定しているのです。
 
皆さまの会社にいる新入社員がこうした意思決定をしていることをイメージできますか?
 
イメージできませんよね。なぜならば、こうした意思決定は社長や部門長によるトップダウンで決まることが多いからです。
 
ティール組織では、意思決定を丸投げしているわけではありません。社員が意思決定するにあたり、他のメンバーに助言を求めることができるのです。
 
ここで注意しなければならないのが、自主経営、全体性、存在目的は相互に絡み合っているということです。助言を求めるにあたっても、お互いの信頼関係がなければ成り立ちません。
 
皆さんが工場長だとしてください。
 
「Aという商品を製造するのにBという設備が必要です。この設備を買えば3年後に投資金額を回収できるのですが、いかがでしょうか?」
 
社員からこんな相談をされて真摯に相談に応じることができますか?
 
「この半人前が生意気に!」と思った時点で社員との信頼関係はなきに等しいですよね。そんな姿勢では社員も気軽に相談できませんよね。
 
ですから、この「助言プロセス」だけをそのまま導入するだけでは失敗する可能性が高いです。ほかの慣行についても同じことが言えるので、その観点で以降の説明も聞いていただければと思います。

②当事者同士の話し合いによる紛争解決

社員同士の意見が噛み合わない
挙げ句の果てには確執が生まれる
 
組織の規模が大きくなってくると、こうした事態はよくあることではないでしょうか。規模の小さな組織でも大なり小なりいざこざはあります。
 
こうした場合、第三者(おもに管理職以上の方々)が間に入って喧嘩両成敗というのが常套手段ではないでしょうか。
 
つまり、「喧嘩しても誰かが仲裁に入ってくれる」というのが普通の考え方かと思います。
 
自主経営で成り立っている組織では、管理職もなく皆が平等な立場です。ですから、課長や部長が喧嘩の仲裁に入ることはなく、当事者同士で解決すべきものです。
 
そのあたりは紛争解決のためのプロセスを明確に決めておき、そのプロセスにのっとって解決に導いているのです。

全体性を生み出す組織慣行

⑴隔たりのないオフィスや工場のレイアウト

本社に行けば豪華に飾られた社長室があり、工場に行けば工場長のための執務スペースがある。事務所を眺めてみると、窓際に課長が座り部下の仕事の様子を見渡せるようなレイアウトになっている。
 
社長と従業員
工場長と作業員
課長と部下
 
多くの会社では、こうしたオフィスの配置からして隔たりを感じさせるような作りになっています。
 
「うちの会社では、社長も工場長も社員も関係ありません。好きな席について座ってください。社長もあなたの席の隣に座るかもしれません。」
 
もし皆さまの会社で社長がこのようなことを言い出したらどう思いますか?
 
絶対に混乱するはずです。
 
組織の中で誰が社長で、誰が従業員なのかわからない。一人ひとりが自主経営の元で、顧客と日々真剣に向き合っている。
 
役職も年齢も関係なく、皆が平等な立場の組織では、空間づくりからそうしたことが考えられているのです。

⑵オンボーディング・プロセスでの関わり合い

ティール組織をそうたらしめているのは、一人ひとりの人材によるところが大きいです。
 
そういう意味では、誰を採用するのかが非常に大切です。後述しますが、会社の存在目的と個人の価値観をすり合わせる上で、採用にも気を配っています。
 
「組織の中に腐ったミカンが一つでもあれば、そのミカン一つから組織文化の崩壊につながりかねない。」
 
ザッポスのCEOであるトニー・シェイは、上記のようなことを言っています。
 
しかし、皆さんは疑問に思いませんか?
 
会社のことも仕事のことも社会のこともよくわかっていない学生にいきなり自主経営を求めたところで、本当について来れるのかどうか。
 
そのような意味で、オンボーディング・プロセス(内定から入社までの空白の期間)がとても大切になります。いわゆる内定者フォロー新人研修です。
 
自社の組織文化のことも仕事のことも理念もビジョンも徹底的に叩き込む。この組織の中では、お互いが自分をさらけ出してもいい安心・安全な場であること。
 
自主経営、全体性、存在目的にまつわることを入社までの期間で学生たちにも浸透させていきます。

⑶ミーティングは論破する場ではなくありのままをさらけ出す場となっている

良い部分も悪い部分も丸ごとひっくるめ、ありのままの全人格をさらけ出せるかどうか。
 
ティール組織で行われているミーティングを見てみると、彼らがどのように全体性を表現しているのかが分かります。ミーティングの中で取り組んでいることをいくつかピックアップしてみます。
 

  • ・1分間の沈黙:メンバー全員が一つの場を共有できるように、ミーティングを1分間の沈黙からスタートする。心を鎮め、いまこの瞬間に立ち返った状態でミーティングをスタートするのです。
  • ・チェックイン・チェックアウト:部屋に入ってきた瞬間に何を感じているかを共有することからミーティングを始める。ポジティブな感情もネガティブな感情もありのままに共有する。
  • ・ハンドシンバル:メンバーが自分のエゴを優先する発言や行動をとった場合にハンドシンバルを鳴らして喋るのを止めさせる。ミーティングがエゴの方向に向かうのを防ぐためにある。

 
もし皆さまがこうした全体性を求めるならば、いきなり自分たちでやろうと思ってもぎこちなくなりますよね。
 
その場合には、外部からファシリテーターを招いて場づくりをお任せするのも手段です。
 
注意しなければならないのは、取り組みそのものを真似るだけでは何の意味のないということです。
 
先ほど具体例であげたオズビジョン。彼らも以前はGood or NewThanks Dayといった取り組みを行なっていましたが、今ではやっていませんよね?
 
やること自体を目的化してはいけません。自分たちの組織が目指すものにお応じてやることは変わってくるのです。著書の中で紹介されている取り組みは、あくまで参考程度に留めておいていただきたいくらいです。

存在目的に耳を傾けるための組織慣行

⑴採用面接で組織と個人の存在目的を深く照らし合わせている

日本の多くの企業が採用でよくやりがちなのが、求職者を「ジャッジ」することです。
 
この人は自社の求める能力にマッチしているか?
キャリアに一貫性があるかどうか?
将来像が明確かどうか?
 
自社の要求と一致する人は採用するが、そうでない人は不採用。もちろん、仕事を遂行するのに一定の能力は欠かせません。パソコンの操作ができない人がIT人材として不適切なのと同じです。
 
しかし、こうした面接の場で繰り広げられるのは、お互い本音の対話ではなくて駆け引きですよね。
 
せっかく入社してくれた社員がすぐに離職してしまうのは、お互いの腹を割った話し合いができていないことにも原因があります。
 
個人として大切にしているものは何か?
組織が存在する目的は何か?
 
採用の面接の場でお互いに深く掘り下げるからこそ、入社後も組織の存在目的に向き合えるしミスマッチも少なくなるのです。

⑵誰も座らない椅子


組織の存在目的に耳を傾ける手軽なやり方として、ミーティングのときに誰も座らない椅子を一つ用意するというものがある。
 
その椅子には、組織という一つの生命体が腰をかけているのです。
 
そのように見立て、メンバー一人ひとりが耳を傾けるのです。
 
「私たちは何のために存在するのか?」と。
 
「耳を傾ける」とあるように、従来の論理的な問題解決では導き出せないことです。一人ひとりの感じ取る力が求められています。
 
マインドフルネスによって今ここに集中し感覚を研ぎ澄ますのも一つの手段です。U理論のように感じ取る(センシング)を通してワクワクする未来を描き出す(プレゼンシング)までの一連のプロセスを学んでみるのもよいでしょう。

ティール組織になれるかはリーダーの考え方次第

皆さまの会社がティール組織に進化するかどうかはリーダーの考え方にかかっています。
 
筆者の働き方改革のコラムでもお話ししたように、組織の変革を進めていくならばまずはトップに立つものが圧倒的なリーダーシップを発揮して社員たちを導かなければなりません。
 
組織の変革が難しい点はここにあります。ティール組織へシフトできるかどうかは、「組織はこうあるべき」という考え方を根本から変えていなけれなりません。
 
社長や取締役の考えがトップダウン型の経営、達成型(オレンジ)のパラダイムならば、マネジャーがいくら組織の変革を進めたくても無駄に終わります。
 
一人ひとりの社員が社長の如く振る舞い(自主経営)、メンバーとありのままの自分でつながり(全体性)、組織の存在目的を分かち合うことができる。
 
ティール組織を「パラダイム」と表現しているように、初めから理解することはとても難しいかもしれません。今まで染み付いてきた組織の理想像を一度手放さなければなりません。
 
ティール組織にシフトするために、リーダーとしてどうあるべきか?
 
これを知るならば、サーバントリーダーシップ(支援型リーダーシップ)について一度学んでみることをオススメいたします。
 
自らが導くものであると同時に、メンバーを支援する存在。
メンバーを導く前に、自身は組織をどう変化させていきたいのか?
 
メンバーの話に耳を傾けると同時に、まずは自分の内側の声に耳を傾けてみる。
 
そうした組織の変革を担うにふさわしいリーダーのあり方を、サーバントリーダーシップから学ぶことができます。

全ての会社がティール組織を目指す必要はない

組織の進化の先にあるのがティール組織だとしても、世の中のすべての会社がティール組織を目指す必要はないと思っています。
 
ティール組織のことを知った上で、あえて達成型(オレンジ)や多元型(グリーン)であり続けるのも一つの手です。
 
どの会社が達成型(オレンジ)で、どの会社がティールかと言う明確な線引きができるわけでもありません。達成型(オレンジ)の色合いが強い会社でも、社長と社員が仲が良いと言うところもあります。要は、ティール組織という概念を知った上で、自分たちの会社の中で取り入れられそうな要素だけを抽出できれば良いと思うのです。
 
既存の達成型(オレンジ)の会社がティール組織のようになるには、長い年月が必要になります。なぜならば、会社の体制を変えねばならないだけでなく、そこで働く社員一人ひとりの意識レベルも変化させていかなければならないからです。
 
会社にとっても働く個人にとっても、ティール組織が万人にとってベストとは限りません。「管理しなくなったらサボるんじゃないか?」という不安などを手放し、社員のことを無条件に信じられるでしょうか。
 
社員としても、自分の時間やお金を自分自身ですべて管理できるでしょうか。強い部分も弱い部分もすべてありのままに曝け出して、お互いに歩み寄ることができるでしょうか。

ティール組織とは?まとめ

ティール組織の中で語られているのは、組織の構造についての話だけではありません。組織を構成するメンバー一人ひとりの心・思考のあり方の話です。
 
冒頭でも同じことをお伝えしましたが、本コラムを通して理解が深まりましたでしょうか?
 
思考が変われば行動が変わり
行動が変われば習慣が変わり
習慣が変われば人生(結果)が変わる
 
ウィリアム・ジェームスという哲学者が残した名言ですが、これをティール組織に当てはめるならば、以下のような形になります。
 
ティール組織への進化のプロセス
 
自主経営(セルフマネジメント)
全体性(ホールネス)
存在目的
 
これら3つのブレークスルーを起こすための組織慣行についてお話ししましたが、ビュートゾルフなどの企業の慣行をそのまま真似てもティールに進化するのはなかなか難しいものです。
 
「組織とはこうあるべき」という今までの固定観念を手放し、自社の存在目的に純粋に耳を傾けてみる。まずはここからスタートするのです。組織のリーダーがこれをまずは率先していくのです。
 
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