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学習する組織とは?本の要約と事例で徹底解説

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大企業病という言葉を聞いたことがないでしょうか?
 
日本でバブルが崩壊してから、大企業を中心に日本の経済が停滞している印象を受けます。これから先、大企業であろうとも生き残れるかどうかわからないくらい不安定な時代です。
 
うちの会社もどうにか変えたいけれども、どう変えたらいいのか分からない。トップダウン型の経営には限界を感じている。でも、いかに現場の主体性を引き出せば良いものか。
 
皆さまもこのようなことでお悩みではないでしょうか?
 
そこで、今回は「学習する組織」についてお話いたします。学習する組織はアメリカ発祥の概念ですが、いまの日本の膠着した経済状況を打ち破るためのヒントになるのではないかと考えています。
 
自社の組織や人材開発のあり方を変えていきたい方は、ぜひ最後まで一読していただければと思います。
 
おそらく、読者には『学習する組織』の本をすでに読まれた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、あまりに難解で途中で挫折してしまった方もいるのではと思います。非常に素晴らしい本なので、最後まで読んでいただかないともったいないです。そのような方にも分かりやすく解説させていただきました。
 
本コラムを読んだ後に、改めて本を読んでいただくのもありです。

学習する組織とは何か?

学習する組織とは、組織を構成するメンバーそれぞれが自発的に考えて行動すると共に、チームで相乗効果を発揮して大きな成果を上げる組織のことです。
 
マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院で上級講師を務めるピーター・M・センゲという人物によって広められた概念です。
 
極端な話ですが、今までの組織は経営者がコックピットに立ち従業員をロボットのように操縦していました。組織の意思決定を行うのは経営者の役割。従業員は、経営者やマネジャーから言われた通りにやるだけ。そこに自らの意思は関与しない。
 
従来のこうしたトップダウン型の組織がロボットとするならば、学習する組織は細胞の一つ一つが活性化した生命体のようなものです。組織を構成する従業員が、生きた細胞のように自ら学び行動し、従業員同士が一致団結して相乗効果を発揮することによって、大きな成果を生み出す組織です。
 
多くの企業では、これまで社長をはじめトップが従業員に対して指揮命令を行うというやり方(いわゆるトップダウン型)で事業を運営してきました。学習する組織は、従来のトップダウン型の経営とは間反対をいく組織のあり方となります。
 
筆者も企業研修を通して「いかに現場で働く社員の主体性を引き出すか」というテーマに沿って研修を行っておりますが、そうした先にはまさにセンゲ氏の学習する組織があるのではないかと考えています。
 
いわゆるVUCAと呼ばれるような複雑性の高い環境下では、従来のようなトップダウンの経営に限界があるのです。『学習する組織』の著者のピーター・M・センゲは、こうした従来型の経営に対する警鐘を鳴らすが如く、新たな組織づくりの概念である学習する組織を世に広めてきたのです。

【システム思考】企業が解決した問題が新しい問題を生み出している

個々人の従業員が自律して動ければ学習する組織として成り立つわけではありません。センゲ氏は、学習する組織を構成する要素として【5つのディシプリン】を掲げています。5つのディシプリンをすべて満たすことで初めて学習する組織が成り立つのです。
 
5つのディシプリンの詳細は追ってお話ししますが、その中でもっとも重要なのが、システム思考という概念です。システム思考は、従業員、企業、社会、はたまた自然環境と、あらゆる要素をシステムとして捉えるという考え方です。言うなれば、私たち人間も皆さまも、システムの構成要素の1つに過ぎません。
 
センゲ氏は語ります。企業は目先の利益・目標を追い求めすぎるあまり、システム全体に目を向けることをせず、システム全体に対して致命的な問題を引き起こしているということをです。
 
つまり、システム思考の欠如により企業が目先で解決した問題(売上、利益)が、新たな問題を作り出しているということです。
 
身近な例として、【住宅】を挙げてみることにします。というのも、私の尊敬する知人が住宅メーカーの経営者であり、人間の健康だけでなく地球環境にも配慮した高性能住宅を手掛けているのです。

皆さまがローンを組んで家を買うとしたら、どのお店を訪ねますか?おそらくは◯◯ホームや〇〇不動産と呼ばれるようなハウスメーカーを訪ねますよね?こうしたハウスメーカー様は、おそらく広告宣伝を打つことでお客様に認知してもらい、お店を訪ねてもらいます。それで家が売れれば、会社も儲かり社員にお給料を支払うこともできるし、株主に配当を渡すこともできます。
 
しかし、そのハウスメーカーが、夏が暑くて冬は寒い、寿命の短い家を売っていたとしたらどうでしょうか?確かに家はたくさん売れるかもしれませんが、熱中症やヒートショックで健康を損なうばかりでなく亡くなる方が出てくるかもしれません。寒さや暑さしのぎでエアコンをがんがんかけたらならば、エネルギーを大量消費します。それが巡り巡って地球環境に負荷を与え続けることになります。地球温暖化の影響で近年は異常気象ともいえることが多発していますが、少なからずそうしたことが影響しているかもしれません。
 
企業活動一つとっても、狭い視野ではお客様にモノ・サービスを売って設けるという形ですが、俯瞰してみるならばあらゆる要素が複雑に絡まって一つのシステムが成り立っているのです。住宅の例で見るように、短期で見れば企業にとっては利益をもたらすことでも、それをもっと長い目で見るとお客様の健康だけでなくひいては地球環境にまで影響を与えているのです。
 
企業としては売上を上げて従業員に給与を払い、さらなる成長のために投資するという良い循環を回しているかと思いますが、それによって新たな問題を作り出しているのです。しかしシステム全体への波及効果を理解しようとしていればアプローチは別物になります。
 
システム思考の本質は、物事を一連のつながりとして捉え、その相互作用に着眼点をおき、全体を俯瞰して観て、企業の本質的な課題にアプローチすることと言っても良いでしょう。

【組織が抱える学習障害】現場でこんな声を聞いたことありませんか?

世の中の多くの企業が、トップダウン型・階層型の経営によって学習障害を引き起こしています。
 
どのような方向に進めばよいのか、いま直面している課題にどう対処すればよいのか?企業としての重要な意思決定を、経営層だけが抱え込んでいる状態であり、現場で働く社員が思考停止に陥っています。
 
皆さまの会社でも、現場からこんな声を聞いたことがないでしょうか?
 
「私は悪くない。悪いのはあなた。」
「◯◯部がちゃんと動いてくれないから上手くいかない。」
「その仕事は私には関係ない」

 
「お役所的」とも揶揄される大企業のあるあるではないでしょうか?
 
先にシステム思考の話をしましたが、上記のことは、生産性や不良率、営業のノルマといった目先のことにとらわれていて、企業としてどうあるべきか、自分はどうありたいかについて全く考えられていない証拠です
 
そうこうしている間にもシステム全体(経済環境、社会環境、自然環境など)は緩やかに変化しています。その変化は緩やかなので、気付いたらいつの間にか変化しているという感じです。皆さんがお持ちのスマホも、気づいたら使うのが当たり前になっていますよね(こうした現象をゆでがえるとも言います)。
 
けれども、気づいてからでは遅いのです。こうした緩やかな変化も感じ取り、しなやかに自社を変えていける企業こそが、本当の意味で競争力のある企業となるのです。
 

要約:学習する組織を支える5つの要素【ディシプリン】

学習する組織とは、ロボットとは違い、生命体のようにしなやかに変化できる組織のことです。生命体は一つ一つの細胞から構成されますが、生命体を組織に置き換えるならば細胞は従業員に置き換えることもできます
 
一つ一つの細胞(従業員)が変化に対して敏感であることが、学習する組織の前提条件となります。一つでもガン細胞があるならば、生命体として機能しませんよね。個人の学習とその相乗効果によって学習する組織が成り立ちますが、センゲ氏はそれを5つのディシプリンという形で表現しています。
 
・自己マスタリー(個人の卓越)
・メンタルモデル(思い込み)
・共有ビジョン
・チーム学習
・システム思考
 
5つのディシプリンについて、もう少し詳しく見ていきましょう。

自己マスタリー(個人の卓越)

自己マスタリーとは、組織の中で働く個人が、己のビジョンを明確にし、内から湧き出るエネルギーで満ち溢れた状態です。
 
自己マスタリーは、学習する組織を形成するためのもっともベースとなる要素です。自己マスタリーが欠けている状態は、先ほどご説明したように生命の中にガン細胞があるのと等しい状態です。
 
そのためには組織で働く個々が、「自分がどうありたいのか」「どうなっていきたいのか?」について明確な未来像を持ちながら、自分自身で内発的な動機付けをする必要があるのです。その未来像や在り方や夢を社員同士で共有することも大事です。
 
皆さまは、部下や社員たちの夢やビジョンを語れますか?自己マスタリーを満たすことは、そういったことから始まります。
 
私が良く知る会社では、5つのWill(志)としてメンバー同士のシェアを行っています。
 
5つのWillとは、自分がどのような人生を生きていきたいかを健康・経済・仕事・やりがい・人間関係の5つの軸で考えることです。5つのWillを考える意義は、自分の内側から湧き出るエネルギーの源泉に気づくことにあります。

5つのWillのシェア

言うなれば、学習する組織がどれだけ機能するかは、個人個人のエネルギー量の掛け算によって成り立つといってもよいかもしれません。(つまり、一人でもゼロの人がいるならば、組織としてのエネルギー量もゼロということです)
 
私が約10年所属していた劇団四季では、この自己マスタリーを「ゼロ幕」という言葉の定義で深く深く落とし込んでいます。「私はなぜこの舞台に立っているのか?」「私に求められる役割は何か?」「お客様が何を求めているか?」こうしたことを、舞台に立つ人間が舞台に立つ前に(1幕2幕ではなくゼロ幕)自ら考え腹落ちさせているのです。

メンタルモデル

メンタルモデルとは、深く染み付いた前提、思い込みのことです。
 
たとえば、カンペキ(perfect)を漢字で書いてみてください。
 

 

 

  
完壁と書きませんでしたか?
 
 
正しい回答は、完璧です。(ではなく
 
このように「これはこういうものだ」「こうなっている」「正しいのはこれ」と深く染み付いた前提や思い込みで物事を勝手に進めると後々問題が大きく生じることがあります。
 
メンタルモデルによって私たちの行動が制限されるのです
 
私たちはこのメンタルモデルにより、何か問題が起きた時にその問題の原因を他に求めようとしてしまいます。大切なのは自分のメンタルモデルに注意を払い、いろんな視点や価値観を受容し、自分の観念を取り払って問題を解決していく・物事を進めていくことです。
 
自分がどのようなメンタルモデルをもっているのかは、なかなか一人では気付きにくいものです。だからこそ、後述のダイアログ(対話)を通じて今のメンタルモデルに気付き、理想のメンタルモデルに変えていく必要があるのです。
 
そういう意味で、5つのディシプリンは独立して存在するものではなく、それぞれが影響を及ぼし合っているものなのです。

共有ビジョン

共有ビジョンとは、組織を構成するメンバー全員で共有している企業のビジョンのことです。一人のカリスマリーダーが打ち立てたビジョンによって、その他のメンバーを牽引していくというやり方には限界があるのです。そもそもそのリーダーが亡くなってしまったら、その組織はどうなるのでしょうか。
 
組織を構成するメンバー一人ひとりのエネルギー量の掛け算が、組織全体のビジョンや社会に与える影響力が変わってきます。
 
私の所属していた劇団四季も創業者である浅利慶太氏のカリスマ経営のみに依存していたわけではありません。舞台をつくる一人ひとりが高いエネルギー値をもって臨むことによって、お客様に対して最高の感動を届けることができるのです。

チーム学習

チーム学習とは、メンバー同士が「ダイアログ(対話)」を通じて組織のパフォーマンスの最大化を図ることです。個々人のメンバーのもっている才能を発揮し、チームで相乗効果を出せるかどうかは、チーム学習のプロセスにかかっているのです。
 
この時大事なのがメンバー同士のメンタルモデルをダイアログにより理解し合うことです。
 
お茶の飲料ペットボトルを見て「お茶(飲み物)」「モスグリーン(色)」「サントリー(メーカー)」「190円(価格)」と捉え方は人それぞれ多様なのです。喉が乾いている人、色の勉強をしている人、飲料メーカーで働いている人、マーケティングのプロ、などそれぞれの人生の背景によってお茶のペットボトルはいろいろな捉え方がされます。
 
チーム学習のためには、まずは対話を通してメンバーがもっている多様なメンタルモデルを理解し深めることから始まります。
 
このメンタルモデルを理解しようとする対話(ダイヤログ)によりチーム学習が実現します。ダイアログはチーム学習においてとても重要なのがお分かりでしょう。
 
筆者も劇団四季時代に、対話の重要性を痛いくらいに実感しています。対話によってチームで作り出す舞台は進化し続け、お客様に感動を届け続けますし、逆に対話不足になるとチームの意識はバラバラになり人間関係も崩壊し、舞台は腐敗してしまうです。

学習する組織はすぐには作れない!では今から何をはじめたら良い?

ここまで学習する組織についてお話ししてきましたがいかがでしたでしょうか?今までの組織の枠組みを破壊し、一足飛びに学習する組織を目指すというのはなかなかハードルの高いことと思います。
 
今の組織を変えていきたい。でも何から変えていけば良いのか分からない。
  
学習する組織になるための組織開発はプログラムとしても非常に複雑でこのコラムを読めばすぐに変われる、というわけには行きませんが、組織開発のベースとなる誰にでもできて簡単な、それでいてなかなかできていない以下の基礎的なコミュニケーションから実践してみてはいかがでしょうか。

①挨拶する

まず、職場に着いたら「おはようございます」と一人ひとりに元気に挨拶をしてみてください。たかが挨拶と侮らないでください。知人の組織開発コンサルタントの話によると、良い挨拶と良い業績の間には相関関係があることが、数百社の上場企業を見ていてわかったそうです。
 
皆さまにも経験がないでしょうか?コンビニやスーパー、飲食店に入ったとき、「いらっしゃいませ」と店員が元気な挨拶をしてくれると気持ちよく感じませんか?
 
良い挨拶は、社員のエネルギー値を簡単に上げる特効薬のようなものです。簡単だからこそ、皆さんもないがしろにしていないでしょうか?
 
挨拶については、「挨拶の重要性」これで組織はまとまり士気も高まるで詳しく書かせていただきました。

②質問力を高める

ここでいう質問とは、詰問とは違います。自分の持つ答えを言わせるような誘導尋問でもありません。
 
良い質問は、相手の中に答えを生み出します。
 
例えば、遅刻が多い部下に対して「なんで遅刻してくるんだ」と正すのか、それとも「どうしたら遅刻しなくなる?」という関わり方では育成の観点でもコミュニケーションの観点でも信頼関係の観点でも大きな差が生まれます。
 
「なんで遅刻してくるんだ」と正された部下は「申し訳ありません」と言って思考停止し、自ら改善策を考えようとしませんが、上司から質問が来た部下は「寝る前のスマホはやめよう」や「早く寝るための時間管理を徹底しよう」と、答えを自ら出すために脳をフル回転させるでしょう。
 
上司が「わかったか」と言って部下が「わかりました」と言ったらそこで思考停止です。中には40%程度の理解度なのに「わかりました」と言い逃れる人もいます。逆に「どこまで理解できた?」と質問すれば相手の理解度も上司は把握することもできます。
 
仕事の失敗に対して叱責して詰めるのか、それとも「もう一度やるとしたらどうする?」と質問するのでは学習効果のうえでも大きな違いをうみます。
 
私が所属していた劇団四季でもプロフェッショナルの俳優育成の際に、答えを教えずに”質問して考えさせる”という関わり方をとても大事にしていました。特に子役育成の場面では子役マネジャーの質問力が育成力と直結していました。
 
良い質問は相手の思考力を鍛え上げるのです。思考が変われば意識が代わり行動が変わる。それが組織全体に広がれば組織全体の思考力が上がるのです。
  
特にマネジメント層の質問力は組織変革に大きな影響をもたらすでしょう。

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③相手の話を徹底的に聴く

質問するためには相手の話しを徹底的に聴く能力が必要です。聴く力は習慣形成によって培われます。
 
傾聴力という言葉があるように、耳だけで聞くのではなく、全身全霊を傾けて相手の話に耳を傾けてください。
 
「自分の話を真剣に聞いてもらっているな」という感覚は”私はあなたを受け入れてますよ”という明確な合図となり、人との距離を縮める大切な要素です。
 
真面目なマネジャーの方がよくやりがちなのは、相手の相談事に対して「こうした方がいい」とか「こんなアイデアはどうかな」とアドバイスしてしまうことです。これでは部下にとって全く学びになりません。部下が自ら考えて自分で解決策を見出す機会を、上司が奪ってしまうことになります。上司の役割は、ただひたすら部下の話を聴いて受け止めるだけです。どうやって問題を解決するのかは、部下が自らやっていくことです。
 
近年は、ヤフーのようなIT企業が1on1という形で上司と部下のコミュニケーションの場をとるようになりました。
 
働き方改革で日本の先端をいくグループウェア会社のサイボウズも、離職率が28%まで上がり立て直しを図ろうとしたタイミングで、「ザツダン」という形で社員の声を徹底的に聴くという取り組みをやったそうです。
 
傾聴力を高めるコツについては、コミュニケーション能力を上げるには傾聴力を高めようの記事を参考にしていただければ幸いです。

事例:劇団四季は今から振り返れば「学習する組織」を古くから体現していた

学習する組織の概念は何となく理解できる。けれども、センゲ氏の本に掲載されているのはあくまでアメリカの事例なので、自分ごとに落とし込むのが難しいかもしれません。
 
日本では、Change Agent(チェンジ・エージェント)さまが、日本の企業さま向けに学習する組織の研修プログラムを提供されているようです。もし気になる方は、こちらに問い合わせてみてください。
 
ここからは、あくまで筆者である佐藤政樹が解釈した学習する組織についてお話しさせていただきます。
 
筆者は10年にわたり劇団四季というプロの演劇集団のなかで俳優を演じてまいりました。劇団四季といえば、創業してから60年以上の世界に名だたる演劇集団であり、カリスマ経営者だった浅利慶太さんが牽引してきた組織というイメージが浸透しています。
 
ここだけで捉えると、劇団四季は浅利慶太さんによるトップダウン経営に見えてしまいます。しかし、今から振り返れば、劇団四季ほど学習する組織にぴったりと当てはまっている組織はなかったかもしれません
 
劇団四季は、演劇を通して人々に対して「生きる喜び」を伝えています。一度でも劇団四季に足を運んだ方ならば、それを肌で実感されたことと思います。しかし、こうした理念は決して浅利慶太さんの掲げたものを出演俳優たちが単純に鵜呑みにしているわけではありません。出演者一人一人がこの「私は観客に生きる喜びを届けている」という理念を自らの誇りにしているのです。
  
作品の1つであるライオンキング。演劇を観ていただくと、どうしても主役(シンバ)が目立っているように感じます。しかし、その周りを観ていただくと、主役たちを取り囲む草や動物も、見事にライオンキングの舞台を彩っています。
 
同じ舞台に立つ以上、出演者にとってはベテランも新人も関係ありません。主役も主役以外の役割も、舞台を観にきてくださったお客様に対して「生きる喜び」を届けるという想いは一緒なのです
 
 
一つの台詞に対しても人それぞれ感じ方捉え方は様々です。「私はその台詞のニュアンスはこうだと思う」メンバーの多様な捉え方を共有し、表現を自分視点ではなくお客様視点で磨き続けます。チームはダイヤログ(対話)を通して舞台を進化させ続けます。
 
またライオンキングの舞台は、主役ひとりで成り立っているわけではなく、自己で内発的な動機付けをした自分の役割に対する意義をもって舞台に立っている一人ひとりの相乗効果によって成り立っているのです。ですから、もし草を演じる一人が「誰も私のことは見ていないだろうから・・・」とダレて舞台に立とうものならば、舞台全体がダレて見えてしまい感動を打ち消してしまいます。
 
ライオンキングが20年以上のロングラン(同じコンテンツを上演し続けること)を実現して、常に進化しお客様に感動を届け続けている所以はここにあると思うのです。
 
筆者は、構成員一人ひとりの自律性や意識の高さを長年かけて染み込んでいるからこそ、学習する組織に対しても親近感が湧いたのだろうと感じております。
 
劇団四季の組織文化も、センゲ氏の提唱する学習する組織も、実践して自分ごとに落とし込むのは非常に難しいです。しかし、まずは皆さまへの気づきや学びを提供することで、少しでも現場で実践していただければと思います。

研修をする筆者

学習する組織とは?要約から解説まとめ

5つのディシプリンで自己マスタリーがあるように、既存の組織が学習する組織に進化する上で、個人の成長は欠かせません。
 
私も多くの企業さまで研修をやらせていただいておりますが、現場で働く社員さんがエネルギーに満ち溢れ、主体性を発揮されている企業さまは、総じて業績も良好です
 
学習する組織を実践していく第一歩は、社員さま一人ひとりを尊重することです。皆さまは、社員の方々がどのような価値観をもっているかご存知ですか?もし知らないようでしたら、まずは質問して聴くことから始めてみてはいかがでしょうか
 
皆さまの会社では、個々人がそのような働き方をしていますでしょうか?是非とも社員の方々との対話(ダイアログ)を実践していただければと思います。

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