コラム|佐藤政樹 劇団四季元主演 オフィシャルHP

夢と感動を届ける人材育成トレーナー 佐藤政樹
HOME > コラム > 生産性向上とは?業務効率化との違い。取り組み事例や補助金も含めて解説

生産性向上とは?業務効率化との違い。取り組み事例や補助金も含めて解説

目次

LINEで送る
Pocket

 
生産性の式⑵
 
日本の労働人口の減少
働き方改革による労働時間の規制
日本の競争力の低下
 
いま日本のほとんどの会社で生産性向上が課題になっています。しかし、生産性向上の本来の意味を理解しないまま、IT導入設備投資人材の教育を進めてしまっていないでしょうか?
 
こうした施策を行うのが悪いわけでは決してありません。しかし、こうした施策はあくまで手段に過ぎません。
 
そもそも生産性向上と業務効率化を同じように捉えてしまっている組織もあります。
 
本コラムでは、生産性向上をテーマにして業務効率化を促進し企業の生産性を向上させるための具体的な方法についてお伝えしていきます。
 
・ITや設備に投資したものの効果が出ていない
・自社もこれから生産性向上に取り組みたいが何から手を付ければ良いの?
 
生産性向上にすでに取り組まれている方も、これから取り組まれる方もぜひ本コラムを通して学んでいただければ幸いです。

生産性向上とは何か?

さて、皆さまは「生産性向上とは何か?」と聞かれてはっきりと回答できますか?
 
ITや設備への投資?
業務のマニュアル化?
人材の教育?
 
どれも間違いではないのですが、上記はあくまで生産性向上のための手段に過ぎません。これをしっかり理解するために、まずは「生産性」の意味から説明していきましょう。
 
生産性とは、投入する資源(人・モノ・お金・情報)に対して得られた成果の割合のことを指します。計算式としては以下のような形です。
 
 
生産性の式
 

あるカバンを職人が手作業でつくっていたとします。これまで1日に10個つくるのが限界でした。
 
機械で自動化して1日に100個カバンをつくれるようになれば、生産性は10倍です(ここでは労働生産性を指します)。
 
(ここでは労働生産性を指します)より少ない労力(インプット)でより沢山のアウトプットを得られるようになったわけです。
 
生産性=アウトプット/インプットと言い換えたらもっとシンプルかも知れませんね。
 
 
生産性の式⑵
 

一方で、これまでにない斬新なデザインで若者うけの良いカバンを開発したら、利益が2倍なりました。しかも、このカバンは既存の生産設備でつくることができます。
 
これも生産性向上と言えないでしょうか。
 
なぜならば、これまで通りの分母(インプット)で2倍のアウトプットを得られたのですから。
 
つまり生産性向上とは、「経営資源を有効活用してより高い付加価値(アウトプット)を提供できるようにすること」とも言えます。
 
戦後の日本の経済成長を主に支えてきたのが製造業であることから、生産性向上は工場で行われるものと勘違いされている方も多いかも知れません。
 
しかし、新商品・サービス開発、マーケティング、研究開発なども立派な生産性向上のための活動と言えるのではないでしょうか。

生産性向上と業務効率化の違い

多くの方は「生産性向上」と「業務効率化」をごちゃ混ぜにしているように感じます。
 
「設備投資やIT導入で生産性向上を!」とスローガンを掲げる方もいらっしゃいますが、これはどう考えても生産性向上ではなく業務効率化です。
 
業務効率化とは、今まで手間暇かけてやっていた業務をより少ない労力でできるようにすることです。
 
つまり、より少ないインプットで「今までと同じアウトプット」を得ることです。
 
最近ではRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用して事務作業を自動化する動きもありますが、これも人事や総務、経理などのバックオフィスの「業務効率化」であって、生産性向上ではありません。
 
 
生産性向上と業務効率化の違い
 
スマートフォンを例に挙げてみましょう。
 
2019年のスマートフォンの世界シェア上位3社は、Samsung、Huawei、Appleの3社です。日本のメーカーが生産しているスマホはトップ10にすら入らないくらいです。
 
極端な例ですが、業務効率化により売れないスマホをたくさんつくれるようにするとしましょう。しかし、売れないスマホをたくさんつくっても在庫になるだけなので、生産性向上にはなりません。
 
iPhoneに勝る革新的な製品を生み出して初めて生産性向上になるのです。
 
後述しますが、日本では生産性向上特別措置法という法律の中で生産性向上の目的を「国際競争力の維持・強化」とはっきりと謳っています。国際競争力の維持・強化のために「革新的な事業」を生み出すのが生産性向上特別措置法の趣旨です。
 
誤解しないでほしいのですが、業務効率化が悪いわけではありません。いま抱えている仕事で手いっぱいならば、新製品や新サービスを開発する余力など生まれません。
 
業務効率化によってできた余力をいかに生産性向上を図るか。いま日本の多くの企業で求められているのはそこです。
 
そこで次の章では生産性向上につながる業務効率化のアイデアについてお話しします。

業務効率化の13のアイデア【生産性向上の余力をつくる】

生産性向上を図るならば、そのための余力をつくる必要があります。そのための業務効率化のアイデアをいくつかご紹介します。

【その1】テレワーク/リモートワークの導入

テレワークによって通勤の手間をなくすことができます。メリットは通勤時間を短縮できるだけではありません。夫婦共同で子育てする環境づくりにもなるので、家庭と仕事の両立にもつながります。私自身もテレワークを駆使して仕事をしております。

【その2】会議のオンライン化

zoomやSkypeを使えば会議室にわざわざ集まる必要もありません。テレワークにもつながることですが、社員一人ひとりが働きやすい環境で仕事をすることが業務効率化にもつながるのではないかと思います。

【その3】会議のゴールを決める

「何がゴールなのか分からない。」

御社の中でそうしたグダグダな会議はないでしょうか?

会議のゴールを決め、そこに至るまでのプロセスや時間配分を決めれば、議論が分散することもなく、参加者の意識合わせもできます。

【その4】立って会議を行う

30分〜1時間くらいの会議ならば、立ってやるのもよいのではないでしょうか。ずっと立ちっぱなしは疲れますからね。参加者全員が会議を早く終わらせようという意識になりやすいです。

【その5】そもそも必要のない会議を廃止する

情報伝達をしているだけ。
昔からあるから何となくやっているだけ。

そうした会議があるならば、スパッと廃止をしてしまうのも手かと思います。

【その6】Slackやチャットワーク、SNS活用

友達とやり取りするときにメールを使うことって少なくなってきましたよね。LINEやMessengerでやり取りすることの方が多いのではないでしょうか。私もメンバーとのコミュニケーションにSlackを活用させてもらっていますが個人のチャンネル発信や通知設定やテーマのピン留めなど非常に便利です。

SNSのほかにSlackやチャットワークなどのコミュニケーションツールを活用する企業も増えてきました。

【その7】GoogleドライブやDropboxによるファイル共有

サーバー上でデータを管理されている企業様も多いかと思いますが、いまはGoogleドライブやDropboxのようなクラウドサービスを利用すれば、自宅からでもファイルの閲覧ができます。ただ、危機管理の意識が重要です。

【その8】業務のマニュアル化

ルーチンな業務をベテラン社員がやっていたりするのは非効率です。そうした業務はマニュアル化して若手社員でもできるようにするとよいですね。

【その9】業務のアウトソーシング

社内の人手不足ならば、ルーチンでやっている業務を外部にアウトソーシングしてもよいでしょう。

【その10】RPAによる業務の自動化

業務を自動化するのもよいでしょう。手順通りに遂行できる事務作業ならば、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入すれば自動化が可能です。

【その11】決裁権の移譲

上司を通さずに社員一人ひとりに決裁権を移譲します。これもできるものとできないものがあるので慎重に行うべきですが。

莫大なお金が必要ならばまだしも、小額のものに対していちいち上司の確認を取ること自体が非効率なケースもあります。

【その12】タスクの見える化

どのタスクを・誰がいつまでに行うのか?
どこまで進捗しているのか?

こうしたことを上司が管理するのではなく、タスクを見える化し社員一人ひとりが管理すると同時に、社員同士で確認し合えるのが理想ではないでしょうか。

【その13】QCサークルによる継続的な改善活動

生産性が低いのはわかっている
けれども、何が問題なのか分からない

そうした場合には、QCサークルのような形でチームを組んで改善活動に取り組んでみてはどうでしょうか。

QCサークルは製造業で生まれた概念ですが、製造業に限らず医療機関でも業務改善のために取り入れられています。

生産性向上が日本で求められている背景

前々章で簡単に説明したことですが、生産性向上が求められている背景を改めて詳しくお話していきます。
 
これがまた関係省庁、関連法案が複雑に絡み合っていて非常にわかりにくいのです。
 
厚生労働省と経済産業省がそれぞれ独自の施策を打っているし、関連法案だけでも「働き方改革関連法案」「生産性向上特別措置法」があります。
 
もうこれだけ活字を並べられたら訳が分かりません。
 
そこで、上記の関連法案、関係省庁の関係性をチャートで簡単にまとめてみました。
 

生産性向上が必要な理由は、「国際競争力の強化」の一言に尽きます。これは前章でもお話しした通りです。このまま放置しておくと日本は確実にまずいのです。
 
日本人の労働人口は減少傾向。いまいる働き手の人たちは既存の業務で手一杯。
 
日本が起点となった革新的な事業・サービスが生まれない。そうなると、モノやサービスも売れなくなるので、新たな雇用も生み出せないし給料も上げることができない。
 
こうした状況では、夫婦共働きが当たり前になるので子育てをするだけの時間的・経済的な余裕が生み出せません。すると、出生率がますます低下し次世代を担う人材がいなくなる。負のスパイラル状態です。
 
筆者が以前、働き方改革のコラムを書かせていただきましたが、働き方改革の目的の一つは余力を生み出すことにもあると考えています。
 
革新的な事業やサービスを生み出すための余力、子育てを行うための余力です。
 
業務を早く終わらせることができれば時間的な余力が生まれます。お子様がいらっしゃるならばその余力を子育てに回すことができます。そうでないならば研究開発・マーケティングなど革新的な事業展開のための活動に回すことができます。
 
しかし、こうした働き方改革の本来の意味を理解している方が少ないのが残念です。
 
以前、あるテレビ番組である企業の従業員がこんなことを言っているのが残念で仕方がありませんでした。
 
「働き方改革のせいで残業代が減って住宅ローンが払えなくなりそう」
 
生産性向上のために予算を投じているにもかかわらず、国と企業と従業員の歯車がまったく噛み合っていないように感じます。生産性向上に関心のある方は、こうした背景もぜひ理解してください。このままでは日本の国際競争力が低下していくばかりです。

生産性向上に関連する国の支援策

いま日本が直面している国際競争力の強化という課題
それを後押しするための国の施策
 
日本で生産性向上が求められている背景についてご理解いただけたかと思います。
 
この章では、国の支援策についてもう少し掘り下げて説明してまいります。こちらはあくまで中小企業、小規模事業者向けの制度ですので、大企業は対象にはなりません。
 
簡単にいえば「企業の設備投資などの負担を国が肩代わりしますよ」というものです。
 
設備投資やIT投資は手段であって目的ではない。本コラムで一貫して申し上げたいことですが、生産性向上策を実現するのにこうした投資が必要になるのは紛れもない事実です。
 
ましてや中小企業にとって数千万円〜数億円の設備投資は非常に勇気のいる意思決定です。施策を実行に移す際には、こうした制度をうまく活用してもらえると良いですね。

①先端設備等導入計画【経済産業省】

先端設備等導入計画は、設備投資によって生産性向上を図る中小企業、小規模事業者の税負担を軽くするための制度です。先ほど説明した生産性向上特別措置法に基づいた制度になります。

設備を設置する市町村で先端設備等導入計画が認定されることで、設備購入に伴う固定資産が3年間にわたって軽減されるのです。(市町村によっては3年間固定資産がゼロになります)

②中小企業生産性革命推進事業【経済産業省】

中小企業生産性革命推進事業
中小企業生産性革命推進事業は、経済産業省が毎年予算をとって推進している事業となります。中小企業が設備投資やIT導入を行う場合、投資額の一部を補助金として負担してくれます。
 
上記は令和元年度の補正予算概要(経済産業省)から抜粋させていただいたものですが、こうした取り組みに3,600億円もの予算を投じているのです。
 
たとえば、ものづくり補助金の採択を受けることによって、設備投資に対して最大1,000万円(補助率1/2)の支援を受けることができます。
 
中小企業が1,500万円の設備投資に対してものづくり補助金を活用すれば、750万円(1,500万円×1/2)の補助金を受け取ることができます。
 
ものづくり補助金の他、小規模事業者による販路開拓のための小規模事業者持続化補助金、IT導入を支援するIT導入補助金がございます。

③業務改善助成金【厚生労働省】

業務改善助成金は、設備投資などによって生産性向上を図り社員さんのお給料を上げる中小企業、小規模事業者に助成金を支給するという制度です。

上記2つが経済産業省による施策に対し、こちらは厚生労働省による施策となります。

労働生産性とは何か?

この章では生産性の中でもっとも重要な労働生産性について説明してまいります。
 
このコラム最初に、生産性とは投下した経営資源(ヒト・モノ・お金・情報)に対する付加価値(アウトプット)の割合であると説明しました。
 
 
生産性の式⑴
 
 
経営資源の中でとりわけ重要なのが「ヒト」です。なぜならば、すべての経営資源はヒトに依存するからです。
 
・どんな設備を買うか?
・調達したお金を何に投資するか?
・買った設備をどう効率的に動かすか?
・誰に対して・どんな商品・サービスを提供するか?
 
経営資源をどのように活用し・どんな意思決定を行うか。こうした知的な活動を行うことができるのは人間しかできません。
 
機械が勝手に斬新な製品を生み出してくれることはないし、お金が勝手に動いて収益率の高い投資をしてくれたりしません。
 
あらゆる経営資源を活かすも殺すもヒト次第なのです。
 
人に紐づく生産性が労働生産性です。労働生産性は、従業員一人あたりが生み出す付加価値または従業員が時間あたり生み出す付加価値があります。
 
 
労働生産性の式

しかし、上記の計算式は「肉体労働生産性」であり、労働生産性の一部に過ぎません。
 
経営学を学んだ方ならば一度は耳にしたことがあるだろうピーター・F・ドラッカー。ドラッカーによれば、「肉体労働」生産性「知識労働」生産性の2つがあるとのこと。
 
そして、21世紀の競争に生き残るカギは知識労働生産性を高めることにあると説いているのです。
 
肉体労働は身体を動こす作業だけに限りません。決まった手順で行うことができる事務仕事も肉体労働に該当します。ですから、これまでホワイトカラーと言われた仕事の中にも肉体労働はあるのです。
 
経営資源をどう有効活用するか?
どんな意思決定が必要か?
 
知識労働とは、標準化・マニュアル化できない・ロボットやAIに置き換えることもできない活動のことです。
 
「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」
 
英オックスフォード大学のオズボーン准教授が公表した論文が話題になりましたが、これはまさに肉体労働がAIなどに置き換わると言い換えても良いのではないでしょうか。

生産性向上のカギは人材の主体性・創造力を引き出すことにあり

生産性向上とは、従来の仕事を機械設備やIT導入でラクにすることではない。本コラムをここまで読んできた皆さまならばご理解いただけたと思います。
 
生産性向上のカギを一言で申し上げるならば、人材の創造力を引き出すことです。ドラッカー的にいえば知識労働生産性を高めることにあります。
 
・どうすれば肉体労働を効率的に行えるのか?
・どうすれば革新的なサービスを生み出せるのか?
 
こうしたことは、人間の知的活動からしか生み出すことができません。肉体労働で手いっぱいならば、その時間を削減して知識労働にあてる余力を生み出さなければなりません。
 
こうした意思決定をこれまではトップが主導してきた企業さまが多かったかもしれません。しかし、複雑かつ変化の激しい今の環境下では、いかに従業員の主体性・創造力を引き出し知識労働に参画してもらうかが重要です。
 
こうした課題に向き合う過程で、ティール組織学習する組織のような新たな組織に生まれ変わるのかもしれません。
 
次の章から、生産性向上を成功させるためのステップを詳しく説明していきます。

生産性向上を成功させる4ステップ

・肉体労働の生産性を高めて知識労働のための余力をつくる
・人材の創造力(=知識労働力)を高め革新的な事業・サービスにつなげる

こうした観点で生産性向上を成功させるためプロセスを4ステップに分けて説明していきたいと思います。

①生産性向上の目的の明確化

そもそも御社にとって生産性向上の目的は何でしょうか?
 
企業が100社あれば生産性向上策も100通りあるのです。
 
・自社はいまどんな経営環境に置かれているか?
・どんな顧客に対して・どんな価値を提供していきたいか?
・従業員とどのような関係性をこれから築いていきたいか?
 
生産性向上の目的とは、御社が何のために存在するのか(ティール組織でいうところの「存在目的」)を考えることに等しいのです。
 
従業員にいきなりこれを求めるのは難しいので、まずはトップ自らが向き合う必要のある課題です。

②トップが現場を巻き込んでやる気にさせる

生産性向上の実現は、現場の社員の協力なしには成り立ちません。なぜならば、企業の生産性を阻害する要因は、社長室でも会議室でもなく現場に眠っているからです。
 
社員に一方的に指示するのではダメです。リーダー層が圧倒的な熱狂ぶりを発揮して社員をやる気にさせていくのです。
 
「また上から厄介ごとが降ってきたよ」と社員にやらされ感をもたせた時点でアウトです。
 
巻き込み力と同時に大切になるのが傾聴・共感することです。社員たちの声に耳を傾ける。社員たちがどんなことに不満をもっているのか、何に困っているのかを聴き、そこに理解を示す。
 
社員たちの言いなりになるのではなく、自分たちの目指すものと社員たちの悩みの解決を一致させていくのです。
 
トップ自身が熱狂する
そこに社員を巻き込む
社員の悩みや不満に耳を傾ける
 
このバランス関係が非常に難しいところです。
 
トップダウン型のリーダーシップでも、部下の言いなりでもダメなのです。
 
このようなリーダーシップを発揮するならば、筆者のコラムでご紹介したサーバントリーダーシップ(支援型リーダーシップ)が非常に役立つことは間違いありません。ぜひ一度、学んでみてください。

③生産性を阻害する要因を現場の社員と一緒に考える

現場がやる気になってからが本当のスタートです。
 
自社の生産性を阻害する要因を探っていきましょう。注意すべきはあくまで現場の社員がメインとなって進めていくことです。
 
内発的動機付けという言葉がありますが、人間誰しも人から指示されたり押しつけられた仕事ではやる気になりません。
 
自ら主体的に動く方が高いモチベーションで続けられるものです。
 
とはいうものの、初めから現場主体でやれと言われても無理があります。
 
その都度トップの人間がファシリテーションを行いながら社員同士の対話を促してください。ミーティングに足しげく参加するのは必須です。

④解決の手段を決める

生産性を阻害する要因は見つかりましたでしょうか?あとはその要因をつぶすための解決策を決めるだけです。
 
業務のマニュアル化、生産設備の導入、ロボットやRPAによる作業の自動化、AIの活用など・・・。
 
ここに来てようやく手段の登場です。
 
多くの企業が陥りがちな生産性向上活動は、いきなりこのステップから入ってしまうことです。
 
業務マニュアルをつくるだけならばまだしも、設備やIT投資には莫大なコストがかかります。目的意識も明確でない、現場の協力も得られていない。そのような状況でこうした投資に踏み切ってしまうと、「お金をかけたのに期待していた効果が得られない」と後悔することになります。

生産性向上の成功事例

生産性向上の4ステップを見てきましたがいかがでしたでしょうか。

そんなの所詮は綺麗事じゃないの?
うちの会社でできるわけがない

そのようにお思いでしょうか。

しかし、筆者はこれまでの経験を通して実現できると断言します。

現実にそうして生産性向上を実現している企業様も存在するのです。
(もちろん簡単にできるものではないですが)

この章では、筆者が厳選した生産性向上の成功事例についてお話ししてまいります。

①ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ


ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ(以下、ケンブリッジ社)は、ファシリテーションを通して企業を変革に導くコンサルティング会社です。企業の生産性向上を支援する会社です。
 
プロジェクト成功率が業界平均で31%という中、ケンブリッジ社の手がけるプロジェクトの成功率は95.6%という圧倒的に高い成功率を誇ります。
 
その秘訣がファシリテーションにあります。
 
ノウハウは自社で保有する。外部に渡すべきものではない。
生産性を阻害する要因を分析し、改善策を提案する。
コンサルタントの提案に沿って改善策を実行する。
 
多くのコンサルティング会社がやっているのは上記のようなことです。しかし、ケンブリッジ社のやり方はこれと全く逆です。
 
ノウハウは惜しみなく渡す
ファシリテーションを通してクライアント企業の社員をやる気にさせる
原因分析も改善策もクライアント企業が主体で提案する
 
従来の常識ではあり得ないことを行い、ここまで高いプロジェクト成功率を実現しているのです。
 
クライアント企業が変革を主体的に進めていけるようにファシリテートし、ケンブリッジ社が離れた後も生産性向上を自分たちで行うことができる。
 
まるで魔法の杖のように聞こえてしまいますがそのようなことはありません。ファシリテーションは訓練すれば誰でもできるようになるものです。
 
「ノウハウは出し惜しみしない」という言葉通り、ケンブリッジ社ではファシリテーションの公開講座を定期的に開催しています。
 
※筆者である私自身もファシリテーションをケンブリッジ社で勉強させて頂いています。

②株式会社ジェイテクト

ジェイテクトという会社名に聞き覚えのない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 
ジェイテクトは、自動車部品や工作機械(工場でものをつくるための機械のこと)をつくるグローバル製造業です。自動車部品である電動パワーステアリングで世界No.1のシェアを誇る実力を持っています。
 
筆者がすごいなと感じたのは、ジェイテクトが人材の教育研究開発に対して絶やすことなく投資を続けていることです。
 
生産性向上の目指すのは革新的な事業・サービスの開発による国際競争力の強化であるとお話ししました。ジェイテクトはまさにこれを愚直に実践していたのです。
 
工場の自動化はそう簡単にできることではありません。これまで熟練の職人が勘と経験でやっていた作業を紐解いていき、コンピューターが理解できる言語に置き換えなければなりません。
 
ジェイテクトが工場の自動化をスムーズに進めることができるのは、職人を教育するためのシステムを整備しているからです。「ジェイテクト育成学園」という技能学習のための場をつくり、高卒上がりの社員が技能を体系的に学べるようにしています。
 
現場に配属されれば、熟練の職人から若手の職人に対して技能の伝承を行っていきます。技能を「勘と経験」の一言で済ませることなく形式知化しているからこそ、自動化が上手くいっているのではないでしょうか。
 
自動化によって仕事が奪われるわけではなく、職人には別の役割を担ってもらい、そのために必要な新しい教育の機会も提供しているとのこと。
 
(ジェイテクトのこうした取り組みは「ジェイテクトレポート2019」より引用したものです)

まとめ:生産性向上のカギは社員の主体性を引き出すことにあり

生産性向上をテーマにお話ししてきた本コラムですがいかがでしたでしょうか?皆さまの会社の活動に少しでも役立てていただけたら幸いです。
 
ドラッカーが提言するように、生産性向上のカギはいかに肉体労働の負荷を減らし知識労働の質を高めるかにかかっています。
 
これまではトップが主体となって担ってきたことかもしれませんが、これからは現場で働く社員一人ひとりが知識労働者となり、生産性向上を図る必要があります。
 
非常に難しいことのように感じますが、こうした生産性向上は日本人だからこそ実現できるものだと思っています。
 
戦後の高度経済成長期を支えてきたのは、本田宗一郎氏や松下幸之助氏をはじめとした製造業でした。質の高い製品をいかに安く・早くつくれるようにするか。QCサークルという活動は現場が主体となって生まれた活動です。当時の自動車といえばフォードやGMでしたが、そこをトヨタやホンダが巻き返しアメリカ市場を席巻するまで成長しました。
 
フレデリック・テイラーの科学的管理法に基づいた生産システムが当たり前だったアメリカにとって、日本の製造業によるボトムアップの活動は革新的なものだったのではないでしょうか。
 
生産性向上のカギは、昔は当たり前のように存在していた日本人としての誇りを取り戻すことにあるのではないかと考えています。
 
戦後の焼け野原となった日本からの這い上がり。それでも夢と目標をもって立ち向かう。社員一人ひとりが会社の生産性向上を自分ごととして捉え、価値ある革新的な製品・サービスを生み出す。
 
筆者は人材育成トレーナーとして多くの企業の研修に立ち会っていますが、研修の現場に立ち会った受講生一人ひとりが主体性をもって仕事に取り組み、知識労働者として活躍していただきたいと日々願っております。
 
筆者プロフィールはこちら

LINEで送る
Pocket

「人前で話す直前に見る究極のバイブル」
 
・なぜ、人は感動するのか?その表現の本質
・人前で話す人は必見の伝達力を高める5つの原則
・うまく話せなくても伝わるのはなぜか?

など人前で話すビジネスパーソンに役立つ情報満載です。
無料ですので、ぜひダウンロードしてください!!

SNSでも発信してます
 
テーマ: 組織の文化づくり タグ: , , , , , , , , , ,

関連する記事

カテゴリー「組織の文化づくり」の記事